第32話 待ち合わせてるのはお前じゃない






[今日俺んち来いよ]


[また?]


[会いたいんだってば]


[嫌だよ。だるい]


[街の近くに公園あるじゃん。そこで待っとくから]



「人の話を聞けよ…」



俺はため息をついて、携帯をポケットへと仕舞った。


今日は、そのまま帰る予定だったのに。

まさかの弘樹からのお誘い。


シカトしようかと思ったけど、待たれるとなると、行かない訳にはいかない。



多分、そう言えば俺が行くって、わかってるんだろうな…。


三ヶ月ほどのセフレ関係で、少なからず俺の性格は知られてしまったようだ。



それにしても、待ち合わせ場所が公園か…。

頭をよぎるのは、何故か拓夢のこと。


…もし、また会ったら?



そう思ったところで、俺は考えるのを止めた。


馬鹿馬鹿しい。

何にも起こらねーよ。

もう、あいつが俺に絡むことは、無いだろう。



そう思ってた。


なのに。





「…よう」





俺が公園のベンチに座ってた俺に話しかけてきたのは、拓夢だった。



「こんなとこで何してんの」


「………」


「何でだんまりなわけ?」


「………」


「また男引っ掛けんの?」



そう言った拓夢は、無表情な顔を少し歪めた。

悲しさを滲ませた目で見られ、息が詰まる。



――弘樹の馬鹿野郎…!


待っとくとか、言ったくせに。

何でまだ来ないんだよ。


目の前にいる人物との気まずさに耐えきれない。

俺は、今すぐにも帰りたい気持ちでいっぱいになった。






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