第30話 隣とアレルギー






裕也はまだ、智紀と話している。

その間に俺は、自分の席へと避難した。



「真琴くん、おはよう」


「――おはよう」



突然隣の席の女子に声をかけられ、少し驚いてしまった。


…情けない。


普段、全くと言っていいほど女子と話さない俺。

童貞くんと同じような反応。



あ、でも俺も童貞か。

喪失してるのは処女だけだし。あは。



「真琴と話したがっている女子、結構いるんだよ。もうちょっと話しかけやすくしてあげなよ」


智紀から何度か言われた言葉。



…そんなこと言われても、困る。






女子と話すメリットは?


申し訳ないが、俺には全く見当たらない。





いくら綺麗だと感じれるようになったと言っても、苦手なことには変わりない。


最低だと言われても、仕方が無い。



「――クシュ」



隣りの席の女子こと田中さんが、小さくくしゃみをした。



「…寒い?」


「あ、ううん。そうじゃないんだけど――クシュ」


「大丈夫?」


「うん、あ…真琴くん猫触って来たの?」



田中さんが俺の制服を見て、呟く。

どうしてわかったんだろう。


不思議に思って、俺も自分の制服を見る。



…しまった。

今日は猫がよじ登ってきたんだった。


俺の制服には、猫の毛がたくさん付いている。



「私猫アレルギーで――クシュ」


「まじで?うわ…ごめんね。ちょっと叩いてくる」


「ごめんね、ありがとう」



もうすぐHRが始まる。

俺は急いで教室を出た。


トイレに行って、手も洗って来よう。



まさかの猫アレルギー。

それは、申し訳ないことをしたな…。



俺はこれからは猫と戯れるのも、ほどほどにしようと心に刻んだ。




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