第28話 宇宙人






「まこちゃん!おはよぉおお」


「うわっ」



出た。うざい奴。

教室に入って早々、裕也に飛び付かれる。


俺に前から抱きついてきた裕也は、それでも走るのを止めない。

当然俺もそのまま後ろへと下がることに。



「えっ、ちょ、何して…」



ワタワタと暴れる。


後ろ向きで進むの怖いって!

けれど俺の抵抗も虚しく、されるがまま。

…貧弱な自分の体が、恨めしい。


最終的には、壁に背中を打ち付けられた。



「ぐっ…!ゆ、うや…お前何がしたいの」


「おはよう、まこちゃん」


「あぁ…おはよう」



壁に体を押さえつけられながら、会話をする。

男2人のこんな格好、傍から見たらかなり気持ち悪いんじゃないんだろうか。





何だ?何なんだ?


こいつは、何がしたいんだ?





俺は何とかこの状態から抜け出そうとするが、両手首をそれぞれ裕也に捕まれ、壁へと押さえつけられる。


必死に体を捩ってみても、目の前のこいつは、退いてくれない。



「…はっ、まじで何。退いてってば…」


「うわ、涙目で睨み上げてこないでよ。なんかエロいね」


「…きも」


「軽くパニックになっちゃってる?不安そうなその顔、可愛い」


「まじできもい」



何を言ってるんだ、こいつは。

前から頭おかしい奴だと思ってたけど、こんなにおかしい奴だったとは。


かなり引く。気持ち悪い。



必死に抜け出そうとする俺を、楽しそうに見つめる裕也。


…あぁ、なんかもう、どうでもいいや。

俺は、体の力をふっと抜いた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る