第27話 猫と生活指導




次の日の朝。

俺は少し早めに家を出た。


今日こそ学校に行かなければ。

2日連続で休むのは、流石にまずい。



そしてある場所で、俺は足を止めた。

キョロキョロと辺りを見渡す。


…あれ?いない。

まじで?もう居場所を変えたのか?



焦っている俺の足元に、するりと小さい物が寄り添ってきた。



――ニャーン。



「! いた…っ」



俺はしゃがみ込み、足元のそれをわしゃわしゃと撫でる。


毎朝学校に行く前の癒し。

俺が立ち止まったのは、高校の近くのレトロチックな住宅街。


そこにいるのは、いつもの猫だった。



ぐるぐると喉を鳴らし、目を細める猫。


可愛い。かわいい。

温かくて柔らかいその体を、俺はずっと撫で回した。



「…っ!お…」



猫は、しゃがみ込んでいる俺の膝へと、飛び乗ってきた。

そしてもぞもぞと動き、収まりのいい場所を見つけると、丸くなって目を閉じる。



えっ、えっ、えっ。

なにこれ、なにこれ、何コイツ。


自分から俺の膝に乗ってきて、満足そうにしやがって。



――クソ可愛いな!



へらっと笑いながら、俺は猫をただただ撫でた。





「おはようございます」





「――っ!お、おはようございます…」



突然後ろから聞こえた声。

驚きながらも、何とか声を出して挨拶を返す。


後ろを振り向くと、そこに立っていたのは、我が校の教師だった。



歩きで来てるんだ…。

ほとんどの教師が車で来ているのに。


珍しい。大変そう。



教師は、俺が膝に猫を乗せているのをチラリと見て、何とも言えない表情をし、行ってしまった。


…なんか、呆れた顔された?


無言で猫見て、通り過ぎられた。



よりによって、生活指導の先生に見つかるとは。


別に校則を破るような行動じゃないけど、何だか悪いことをしているかの様な気分になった。

だってあの先生、ニコリともせずに見てくるから。


普通にびびった。



…まぁ、男子高校生が猫と戯れてるなんて、目に優しくない光景だろうけど。


何だか、嫌な汗をかいてしまった俺。

…そろそろ行こうかな。



「じゃあな」



俺は猫の頭を一撫でして、膝から下ろす。

猫は、ニャーオと不満げな声をあげた。



俺が通り過ぎると、猫は何処かへと歩き出す。


また明日。

どうかそこに来てくれよ。





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