第26話 一人の時間を





「てか、そっちも大学は?」


「今日は休講」


「うわ、ずる」


「いいだろ。羨ましいだろ」


「うざい!」



弘樹は俺を抱き込んで、ニヤニヤと笑う。


うわ、暑苦しい。

顔うざい。



俺らはベッドの上で、何してるんだろう。

セックスの後にイチャイチャしてさ。


バカップルかよ。

なんかゾワゾワする…。



弘樹は今、大学2年生。

俺より3つ年上。

ここは弘樹の一人暮らしのアパートの部屋なんだけど…。

普通の大学生の部屋より、でかいと思う。


おそらく、弘樹の家は金持ちだ。



「良いなぁー。俺も早く高校卒業したい」


「もう少しだなー」


「もう少しじゃないよ。あと一年と半年弱ある」


「高校生なんて、あっという間だろ?」


「…長いよ」



そこまで言うと俺は立ち上がり、帰る支度をする。

制服来て、鞄を持って。


…まずいかな、この格好。

この時間にこの格好で彷徨いたら、変な目で見られそう。



「学校行かねーなら俺んちに居ればいいのに」


「…いや、帰るよ」



これ以上は、ここに居られない。

俺、独りの時間が無いと死んじゃう。


そういう感覚、わかる人いないかな…。






独りでいると寂しくて堪らないくせに。


長時間人といると、しんどくなる。






なんかほんと、俺ってどうしようもねーな…。




「…じゃあ、また」


「おう。気をつけろよ」



大学生の割にでかい部屋から、俺は自分の部屋へと帰った。





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