第22話 気付かない振り
「…やり直す?」
「そう」
真剣な顔して頷く弘樹。
なんてタイミング。
俺も今さっき、そうしたいと考えてたよ。
「セフレ関係を?」
「んー…」
「え。違うのかよ」
思わずがっかりとする。
何だ、違うのか。
…じゃあ、何を?
やり直す関係は、他にあったっけ。
「俺さ…まことと付き合いたい」
「…え?」
付き合う…?
そんなこと俺には
「無理」
「――え」
「俺、体が気持ちよくなれればいいだけだし。」
俺の言葉に目を見開く弘樹。
そんな彼に構わず俺は、きっぱりと告げる。
「付き合うとか、面倒くさい」
「――はっ…お前、やっぱりビッチだな」
「否定はしない」
「じゃあセフレでいいよ。それでいいから…お前を抱くのは俺だけにして」
そう言って弘樹は、俺を抱きしめた。
小さく歪んだ顔も小さく震える声も、俺は気づかない振りをした。
俺は狡い。狡いけど。
男に飢えた俺の体は、今すぐにでも弘樹が欲しくて。
その背中に腕を回した。
抱きしめ返すとわかった、弘樹の体の震え。
俺は、それにも気づかない振りをした。
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