第21話 もう一度
「…久しぶり」
「……」
とりあえずヘラヘラ笑って挨拶する俺。
なのに弘樹は、無言で俺を見つめて手を離さない。
なに。何なんだ。
…居心地が悪い。
「…俺、もう帰るから。手、離して」
「……」
えぇ…。シカトかよ。
手、痛いし。
弘樹の顔、なんか怖いし。
帰りたい。
「あれから何人とヤった?」
「え?」
「俺以外の男と何人ヤった?」
「え、ちょ…なに」
「――答えろよ!」
弘樹の大声が道端に響いた。
周りの人がチラチラとこっちを見るのがわかる。
けど、俺は何も出来なかった。
俺の体はビクリと揺れて、喉がヒュっと鳴る。
怖いと思った。
弘樹が怒るのを、初めて見た。
こんな大声で怒鳴られたことなんて、初めてだった。
「…悪い。怖がらせたな」
そんな俺を見て、弘樹は小さく顔を歪ませた。
手から離れたその手で、俺の頭を撫でてくれる。
いつもの弘樹の行動に、俺はゆっくりと呼吸した。
温かい手。大丈夫、大丈夫。
もう弘樹は、怒っていない。
「いや…大丈夫」
「ん」
俺がヘラリと笑うと、弘樹も小さく笑った。
そしてゆっくりと、口を開く。
「まこと…俺達やり直さないか?」
「…え?」
じっと見つめてくる弘樹の目から、俺は目を離せなかった。
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