第19話 踏み込みと拒絶







「…あっそ」



拓夢はそっぽを向いた。


絶対納得してない。

不機嫌そうな顔して黙っている。



だからといって素直になれるほど、俺は強くない。



認めてしまったら、辛くなるのは自分だ。

誰も代わってはくれない。

そしてたった1人で苦しむんだ。


…もうそんなの耐えられない。



ぐるぐると考え込んでしまった俺に、拓夢は口を開いた。




「なんか嫌なことでもあったのか?」


「は…?」


「自分を傷つけるようなことして、忘れたいことでもあったのか?」


「な、に…」


「どうして慰めることをしないんだ?」


「…も、黙れよ……」


「何をそんなに許せないんだ?」


「黙れって…」


「何を怖がって――」





――黙れ!


拓夢の言葉も俺の叫びも吸い込まれる。






俺は、拓夢にキスをした。






夜に外にいたから、当然冷たい唇。

少しカサついているけど、柔らかい。


そうか、拓夢はこんな唇なのか。

そんなことを認識する自分が、何だか異様に思えた。




「…これ以上、俺に関わるな。今度またデタラメなことを言ってみろよ。」



固まったまま、動かない拓夢。

俺はこいつの見開かれた目を睨みながら、口を離す。



「犯してやるからな」



どん!と拓夢の体を突き飛ばし、俺は公園から出て行った。


目なんか、見れない。

あれ以上あいつの言葉を、聞いていられなかった。



無理やり黙らせて、無理やり視界から消した。


それをしたのは俺なのに。

泣きたくて堪らなかった。





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