第14話 駄目犬







「まこちゃん!おはよぉおおお」


「ぎゃッ!」



智紀と話していると、突然の後ろからのタックル。

俺は勢いよく机に突っ伏した。



痛い痛い痛い!

しかも声でけぇ!


耳元で叫ぶからうるせえよ。

こんなことする奴なんて、1人しかいない。



「裕也どけ!重いっ…」


「おはようまこちゃん」


「裕也やめなって。真琴が潰れる」



智紀に言われて、裕也は俺から離れた。


は…天使だ。

やっぱり智紀は天使だ。


助けてくれるのは、すごく有難い。

だって裕也は、俺の言うことなんか聞きやしない。







裕也の言動はアレだ、駄目犬を連想させる。






あぁ…くそっ。


俺は犬が苦手だ。

急にスイッチが入った様にこちらに向かってくるその姿は、割と恐怖だったりする。



元々のエネルギーが、俺とは違うんだろう。


最初から犬と距離を置きたがっていた俺は、道端でよく犬に追いかけ回されるようになり、その苦手意識に拍車がかかってしまった。


だからと言うか何と言うか、裕也が本当に苦手だ。



「ていうか、まこちゃん呼びやめろ」


「え?」


「何その顔。何それ知りません、みたいな顔するな。」


「俺、まこちゃんなんて呼んでないよ?」


「嘘つけ。数分前の自分を思い出せ」


「何のこと?」


「…智紀、さっきの話さ」


「まこちゃん無視しないで!」


「やっぱり呼んでるじゃんか!」



ギャーギャー騒いで抱きついてくる裕也。

智紀は、今度は止めにこない。


え、嘘。助けてください。

俺、結構嫌がってます。



何で裕也は、俺に絡んでくるんだろう。


面倒くさい。

そう思いつつ、口には出さない。


たまに出すけど。


いつもの如く、俺は裕也の気が済むのを待った。





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