第9話 離れない





また触れられた温かい手。


ドクっと心臓が動く。







あぁー…やべぇ。この手が欲しい。







そう思いながらも、この手に縋ったりはしない。


だってなんか変だから。

縋ったら、どうにかなりそうな気がする。



わからないけど、そう感じるんだ。

だから、早く離してほしい。


欲しくて堪らなくなる前に。



「…何ですか」


「男探しに行くのか…?」


「…いえ。帰ろうかと思って」


「あ、そう」



そこで会話終了。

男はだんまりだ。



なのに手を離してはくれない。


何なんだ。

こいつは何がしたいんだ?



「あの、手…」


「何で敬語?」


「え?」


「多分タメだろ。俺ら」


「…おそらく」


「俺、高2」


「俺も」


「なら何で敬語なんだよ」



今気にするとこじゃないだろ。


と言うか、本来初対面の相手には敬語だろ。

俺は間違っていないはず。



だけどこいつには何言っても無駄だ、多分。

おそらく頑固だ。


ここは相手の要求を飲んで、さっさと終わらせるのが得策だろう。



「…わかった。敬語使わないから、手を離して」


「…やだ」






…何なんだこいつは!!





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