第3話 夜の街





裕也に引き戻され、結局授業を受けることになった俺。

ギャンギャンと騒ぐ裕也を見ていると、早退する事は不可能に思えてきたので、もう諦めて最後まで授業を受けるという選択を俺はした。










そうして、待ちに待った放課後。

いつものように俺は、長時間ふらふらと街を歩くことにした。



夜の街は人工的な光で溢れかえってる。

店の光。街灯。車のライト。

色んな色が、ぼおっと浮かんでいて綺麗だと思う。

そこには確かに人がいるはずなのに、無機質な明かりは、命を感じない。



俺にとって夜は、昼間よりもずっと生きやすい。

街に溶け込んでいるようで、誰も俺なんか気にしてない。

暗いところに行けば、認識だってされない。


一生夜でいいのに。



…なんてな。



クスリと笑みがこぼれる。


自分の頭で考えれば考えるほど、われに返った時に馬鹿らしくなる。

俺は、自分の考え方が好きではない。



切り替えよう。

今日は、新しいセフレを探さなきゃいけないんだ。

ぼーっとしてる暇はない。よし。


軽く意気込んで前を向いた。

けど、そして俺は固まった。




…弘樹だ。



少し遠くにいたのは、今日の朝にセフレ関係を解消した相手だった。


…これは、不味い。

いくらなんでも、会うのが早すぎる。

もう少し経ってからなら、普通に出来るんだけど。

今はただただ気まずい。



なんでここにいるんだよって思ったけど、弘樹とはこの街で会ったんだから当たり前か。


いや、すまん。

ちょっと理不尽だったわ。



幸いにも、向こうは俺に気づいていない。

ならば、このまま立ち去ろう。

俺は弘樹に気づかないふりをして、もと来た道へ戻った。


ああ。ついてない。

今日はもう、新しいセフレを探すのはやめよう。



でも、まだ帰るには少し早い時間。

どこかで時間をつぶそう。

何個かある候補の中、公園に行くことにした。

今日はなんだか静かな所に行きたい。



俺は重い足取りで、公園へと向かった。





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