崇めるべき相手。




「ぎ、偽名ですか?」


「はい、偽名です。

本名は銀龍ドライトと言いまして、旅の知恵の神をしております!」


「ぎゃー!!あ、姉御ー!ドライト様が出たー!」


「いや、なんで悲鳴をあげて逃げるんですか?

それに姉御って、あなたは知識の神を名乗ってるんですからね?

少しはそれらしくですね?」


『ドライト様、変ですよ?』


『ん?リュージュさん、どうかしましたか?』


『サジェス様が姉と呼ぶのはアルレニス様のはずです、しかしアルレニス様はドライト様がツィオーラでしでかしたことの後始末が忙しくって、ここになんか来てるはずがありません。』


『そう言えばそうですね?

じゃあ、誰が出てくるんですかね?』


「私だよ!ダーリン、大人しく投降しな!」


「リ、リア!なぜここに!?」


いつの間にか現れた赤髪の少女が、ドライトの首根っこをつかんで猫の用に持ち上げる。

ドライトは捕まってしまったことに驚きながら、赤髪の少女をリアと呼んで見つめるのだった。


「まったく!サジェスとお茶をしながら知的な話をしていたら、偽者が出たってサジェスが出ていったんでどんな奴かと見てたら、ダーリンじゃないか!驚いたんだからな!」


「よーするに私の捜索に参加しないで、サジェスさんとサボってお茶してたら偶然に私が来たってことですか?」


「そうとも言う!」


胸を張って言うカーネリアに呆れた視線をドライトが向けていると、サジェスが恐る恐るやって来た。




「リアの姉御、ドライト様を放さないよね?」


「ん?放すわけないだろ?久しぶり独り占め出来るしな!」


逃げ出したサジェスは恐る恐る近づきながら、カーネリアに放さないてと言う。

言われたカーネリアも、ドライトをヌイグルミのように抱きしめて放さないと言う。

すると安心したのかサジェスはドライトの前にまで来ると、怒りながら質問をする。


「ふぅー……ドライト様!なんで人の名前を騙るんですか!」


「その方が面白そうだったからです。」


「納得しました。」


「納得しちゃったんですか!?」


サジェスは思った以上にアホの子だった。

その現実に、ドライトがおののいて……はいないが思った以上に楽しめそうだ!っとニヤニヤしていると、放置していた人達が動きだす。


「サ、サジェス様!私達はいったいどちらのサジェス様を崇め、信仰すれば良いのですか!?」


知識の神サジェスにそう言ってすがりついたのは、マイアリルだった。

周りに居た者達は慌てて引き剥がそうとするが、サジェスはそれを手で制して語り出す。


「私がこの世界の主神、知識の神サジェスである。

ですけど、神としての格はリアの姉御の方が上だし、色々と尊敬しているからリアの姉御を崇めれば良いと思う。」


「格の話をするならこの中ならダーリンが1番だな、私の旦那でもあるし力もダントツだから、やっぱりダーリンを崇めてりゃ良いんじゃね?」


「でもこの世界の主神はサジェスさんですよ?

色々と心配なところもありますが、やっぱりこの世界の管理神なんですから、サジェスさんを崇めるべきでわ?」


[ひゅ~……]


外部の空気など遮断されていて、エアコンなどで完璧に調整されているはずの実験室に一陣の風が吹き抜ける……


「いや、やっぱりリアの姉御が!」


「だからそれならダーリンが!」


「うっひょー!サジェスさんにひざまずきなさい!」


とうとう言い争い始める3人、明らかに1人はかき混ぜて遊んでいるが、他の2人は気がつかずに居る。




「はぁ!?いくら姉御とは言え許しませんよ!?」


「ああ!?良い度胸してるじゃねえか!」


「あっそれ!赤勝て、白勝て!」


とうとうサジェスとカーネリアは、お互いの胸ぐらをつかみ合うまでになってしまう。

その横でドライトは煽りに煽っていた。


「み、皆様お止めください!私がバカな質問をしたからいけないのです!」


マイアリルがそう叫んで止めに入ると、サジェスとカーネリアは、ハッとして争うのをやめる。


「あれ?何を争ってんだろ?リアの姉御とケンカする必要なんてないのに……」


「そーいやそうだよな?サジェスは私を崇めろって言ってんだから、胸ぐらをつかむ必要なんて……あ。」


「何をちゅうちょしてるんですか!サジェスさんは腹に1発入れて頭が下がったところでアゴに入れるのです!

リアは……腹筋をしめてたらなんともなさそう……いや、力に差が有りすぎて不意をついてもサジェスさんじゃ、ダメージを与えられなさそうです!」


カーネリアが横を見て気がつく、カーネリアがサジェスと争っているスキに腕から抜け出したドライトが、2人を煽りに煽っていた。


精神に干渉して……


「……ダーリンさあ?嫁の私にまで精神干渉して、何がしたいわけ?」


「そりゃ、腕からも抜け出したんで、このままこっそり逃げるために揉めさせようとしたんですよ!」


「さ、さすがろくな事をしませんね……リアの姉御の言う通りだわ……」


サジェスは呆れていたが、カーネリアは目を細めて言う。


「ダーリンさあ、私達嫁を最近なめすぎだよね?」


「そんなことはありません!私は何時も貴女方を尊重して「……ゲット」へ?ア、アンジェ!?」


ドライトがジタバタしながら反論していると、いつの間にかアンジュラがドライトの背後に現れていて、抱き抱えるように捕まえる。


「よっし!ダーリンゲットだ!」


「……逃がさない。」


「な、なんで?いつの間に!?」


どうやらドライトも気がついていなかったようで、かなり慌てている。

するとアンジュラの背後に転移陣が現れて、2人の少女が現れる。




「お!捕まえてる!」


「アンジェ様、やりましたね!」


現れたのはカーネリアの筆頭眷族神のアレナムと、アンジュラの筆頭眷族神のセイネだった。



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