謎の魔石(銀)




「マクライ議員、その話は娘から聞いている。

それがいったい何だと言うのかね?」


アテクトリスはマクライの話と異常なエネルギー消費について、関係がある話なのか分からずに質問をする。

そしてアテクトリスは娘のマイアリルが自分の家からもいくつかの品を持っていき、有意義な研究が出来ていると、嬉しそうに家族での食事の時に話していたのを思い出していた。


「……議長、確かに最初の1ヶ月はよかったのです。

最初の1ヶ月は……」


そう言いながらマクライは1ヶ月前の事を思い出すのだった。




「……ふーむ、私の協力がなくてもこれに気がついたか。

おお!マイアリル君のレポートも素晴らしい!」


「マクライ様、今後が楽しみな者ばかりで嬉しいですね?」


「まったくだ!」


マクライと弟子の1人が今回の成果、新弟子や募集した学生に他の研究室の者達のレポートを見ていて嬉しそうに話すしていると、ドアをノックする音がする。

マクライが入室の許可を出すと話に出ていたマイアリルと研修の学生が部屋に入ってきた。


「おお、マイアリル君、ちょうど君のレポートを読んでいたところだ。

魔石と魔晶石の違いについて、斬新な考えを持っているようだね?なかなか目を引いたよ!……どうかしたのかね?」


そう言って迎え入れたマクライだったが、マイアリルと学生が浮かない顔をしているのに気がつき何かあったのかと質問をする。


「先生、実は困ったことが有りまして……保管室の方に来ていただけませんか?」


「ふむ?急ぐのかね?」


「緊急ではありませんが、出来れば直ぐにでも見てもらいたいです。」


研究室に居るために先生と呼んできたマイアリルにうなずくと、皆を連れて保管室に向かうのだった。




そして保管室に着いたマクライは驚く、保管室にはマクライと執務室に居た愛弟子以外の全員がいたからだ。


「皆まで居るのか?いったい何があったというのだ?」


「先生、こちらを見て下さい。」


マクライの言葉にマイアリルが机の上に置かれた箱の1つを指し示す。

その箱の中身はほとんど出されており、中には1つの魔石が入っているだけだった。


「銀色の魔石……私もこんな色のは初めて見たな!

しかしそのために私を呼んだのかね?」


銀色の魔石と言う、見たことがない魔石を見たマクライは少し興奮したが、その魔石は色以外は平凡そのもので他に目を引くところはなかった。

そしてその事は高弟やマイアリルなら分かると思ったマクライは、そう言って聞いてみる。


「先生、実はこの魔石なんですが……記録がないんです。」


「記録がない?」


「はい、この箱は私の家から持ち出した物が入っていたんですが、研究所の借り受け記録も家の貸し出し記録にも、この魔石の記録がないんです。」


そう言うマイアリルに続いて、研究室に先ほども来ていた学生が発言をする。


「先生、それにその箱の中を最後に見たのは私なんですが、その時にはそんな魔石は入ってなかったのです。」


「……本当かね?」


その学生の言葉にマクライは思わず聞き返す。

すると他の高弟が説明し出す。


「先生、実は先生に報告する前に監視カメラ等を調べたのです。

そして彼の言う通り魔石は入ってなかったと思うのです。」


「なぜそう思うのかね?」


「それなのですが―――」


高弟の話によると、学生が保管室で空の箱を片付ける作業をしているところに、別の弟子がやって来て声をかけるといくつかの荷物を持って外に出ていく様子が写っていたそうなのだ。

そしてその後に10分ほどしてマイアリルがやって来ると、机の上に出したままの空の箱を片付け始めた。

そしていくつか片付けたところで箱の1つに銀色の魔石が入っているのに気がつき、ちょうど帰ってきた学生と弟子にちゃんと確認するように注意しているところも、写っていたというのだ。


「しかし先生、監視カメラの映像を確認した限り、彼はその箱を開けて確認しているのです、しかも雑巾で拭いてまでいるのですよ?」


「……信じられんな?彼が出てから、マイアリル君が来るまで他に誰も入っていないのかね?」


「はい、誰も入っておりません。」


高弟はハッキリとそう言う、だが魔石は箱にしっかりと有る。

しかもそれはマイアリルの家から持ってきたものが入っていた箱で、自宅からは持ってきた記憶も記録もないそうなのだ。


そしてマクライが考え始めるとすぐに弟子達や学生達が議論をし始める。


「やはり誰かのイタズラじゃないのか!?」


「バカを言わないで!彼や他の誰かが私達を騙して楽しんでいるとでも言うの?」


「さっきから言っているが、ここで魔石が発生した可能性もあるだろう!」


「それこそ冗談じゃない、ここは中央研究所だぞ!?魔力だけじゃなく、あらゆる力場に魔素まで安定するようになっているのだ、絶対にあり得ん!」


「静かにしたまえ!」


議論が意味をなさなくなると、マクライは怒鳴り付けて皆を叱り指示を出し始める。


「マイアリル君、君はもう一度家に連絡してこれがアテクトリス家のものか調べてくれ。」


「は、はい!」


「マウヘル君、確か第1実験室が空いていたな?押さえておきなさい。」


「は、はい!……先生、いったい何を?」


マウヘルと呼ばれた高弟は、いったい何を始めるのかと質問をする。


「私達は研究者だよ?分からなければ調べればいいのではないかね?

では、はじめましょう!」


マクライの号令に、弟子達と学生達は慌てて動き始めるのだった。




「ま、まちたまえ、まさかこのばく大なエネルギー消費はその魔石が?」


そこまで話を聞いてアテクトリスはまさかと思いながら質問をする。

そしてマクライはうなづきなから何かのパネルを操作し始める。


「そうです、そしてその後に秘匿したのは……私のエゴです。

その魔石を調べたい、研究し尽くしたい!……そう思ってしまったから、秘匿してしまったのです。」


そう言い終わると同時に、空中に立体映像が浮かび上がる。

そこはマクライの第1実験室だった、そして実験室の中には、なにか機械が触手のように部屋の中心に向かって伸びていて、そこには何かしらの力場によって宙に浮く銀色の魔石が有った。


「あれが例の魔石だ、ちなみにザラマゥエン議員、あの魔石の電気と魔力に対する抵抗値はいくつだと思うかね?」


突然の質問だったが、ザラマゥエンは魔石を見つめながら答える。


「……あの大きさなら平均は10から15か?しかし、属性等によっても変化はするだろう。

いや待て、マクライ議員がそんな簡単な問題を私に出すはずがない。

……ま、まさか!?」


「ザラマゥエン議員、あなたの夢は電気や魔力に抵抗値が0の物質を作るか見つけることでしたな?その夢がそこにありますぞ?」


「……!ほ、本当ですか!?こ、これは本当に魔石なのですか!?材質は!?い、いや魔石ならエネルギーの吸収もあるはず!吸収率は!?」


「な、なんと!それならば秘匿したのもうなずける!」


エネルギー関係が研究対象だったザラマゥエン議員は興奮して質問を浴びせる。

そしてアテクトリスもその価値に気がつき目を見開き驚く、いや、議事堂に集まっていた元老議員達全員が、驚き騒ぎ始めたのだった。




そして映し出されている実験室でも、マクライの弟子達が騒ぎはじめていた。

それに気がついたマクライは実験室に通話をつなぐと、何事か訪ねる。


「どうしたのだ?何かあったのか?」


それに答えたのはマイアリルだった。




「せ、先生!魔力が、電気が吸われてます、止められません!」




マイアリルの叫びにこれからの研究について話し合いを始めていた元老院の議員達にマクライは、驚愕に身を固めるのだった。



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