忍び寄る影(ドライトに)




「さあ!勝負勝負!」


ドライト光と闇の神剣、つまりただの鉄の剣を大上段にかまえるとそう叫ぶ、そして相対するハザはというと遥か先に逃げていた。


「………………え?」


「おのれ!逃げるとは卑怯なり!

ドライト様、ハザ様は私が追います!」


ツィオスは逃げるハザを呆然と見ている。

アルレニスは私が追うと言って真逆の方向に突進して行った。


「……時にツィオスさん。」


「……なんですか?」


「この世界の管理権限はあなたが持ってるんですよね?」


ツィオスはドライトの質問の意味がわからないが、嫌な予感がしながら答える。


「……ええ、そうですよ?分かりきったことをなんで聞くんですか?」


「いえ、そのツィオスさんを放置したままハザ様はどこに逃げるのかと思ったのですよ?」


ドライトの言葉にツィオスはヤバイと思ったが、ドライトにじっと見られて逃げられずにいた。

そして少しするとハザが戻ってきた。


「もう、逃げるのは良いんですか?」


「ツィオスの持つこの世界の管理権限の所有を争っとるのに、そのツィオスを忘れとったからな……」


「ハ、ハザ様……ところで姉上は?」


ツィオスはハザしか戻ってこないのが不思議で質問してみる。


「? わしゃ知らんぞ?」


「アルレニスさんなら第3宇宙速度でこの惑星から離れていってますね。

呼び出しましょう!」


[ドゴォォォン!]


ドライトが呼び出すと言うと直ぐに近くに有った山が吹き飛んだ、ハザとツィオスは平然としていたが、ジュリーナ達は迫り来る爆風と岩や砂ぼこりに真っ青になり逃げ出そうとする。


「ジュリーナさんが危ない!ドライトマジックシーズン2!」


だがドライトがジュリーナを守るためにまた変な術を使ったようで、岩や砂ぼこりはまるで映画の巻き戻しのように戻って元の山となる。


「いったい何が……」


「逃げたアルレニスさんを呼び戻したんですが、場所と方向がまずかったんですかね?

第3宇宙速度を維持したまま山に突っ込んじゃったんですよ?」


平然としてそう言うドライトに、引きつった笑みを向けるしかないジュリーナ。

だが笑ってられない者が2人いた。


「ドライト……いくら貴様とて、我が筆頭眷族神にそのような事をすればどうなるかわかっておろうな!?」


「姉上に対して良い度胸だよ……絶対に許さない!」


そしてハザとツィオスの猛攻が始まった!




3時間後。




「ハァハァハァ……」


「くぅ!身じろぎもしないとわ!」


「ズズズー……ふぅ、最近は粉茶にこってるんですが、これはヒットですよ!

流石は天皇杯を受賞したお店のです、宮崎のお茶もあなどれませんね!?」


ハザとツィオスは剣やら槍にハンマーを使って直接殴ったり、様々な魔法を放ってドライトを攻撃したがドライトは座布団とちゃぶ台を出して茶を飲んでいた、そして全ての攻撃はドライトになんのダメージも与えなかったのだ!


「さて、私からも攻撃させていただきますよ?」


そう言うとドライトは、ハザに向かって手にしていた湯呑を投げつけた!


[ドン!]


「ぬおぉぉぉ!?」


すさまじい速度で飛んできた湯呑を、なんとか受け止めたハザだったが、そのまま吹き飛ばされてアルレニスの埋まっている山に吹き飛んでいった。


「ハ、ハザ様!」


吹き飛んでいくハザを呆然と見るツィオス、その背後にドライトが迫ると慌てて剣をかまえてドライトに向き直る。


「フフフ……ハァーハッハッハ!ウヒョーーーゲフ!?ゲホゲホ……わ、笑いすぎて息が詰まりかけました……

なんにしろツィオスさん、降伏して管理権限を渡すのですよ!」


「こ、ここまでか……!」


頼みのハザも倒されてしまったツィオスは、迫り来るドライトにもはやここまでと、諦めかけた時だった。

ドライトの前にジュリーナが立ちふさがり必死に訴え出たのだ!


「ドライト様!ドライト様のお力はよく分かりました!どうか、どうかツィオス様を赦してください!」


「……いや、赦すもなにも私は怒ってるわけでも責めてるわけでもないのですよ?

ただ単に、あなたのためにこの世界の管理権限を奪い取ろうとしているだけなのです!」


「いえ、私はその様なもの欲しく有りません!」


「な、なんですと!?」


ジュリーナの叫びにドライトは目をむきジュリーナに迫る!

慌ててヒデトとマユが間に割り込もうとするが、素早くドライトはジュリーナの目の前に行くと言い放つのだった!


「なら他になにか願いはないですかね?」




「ひ、ひどい目にあいました……」


「ここまで力に差があるとは、な……」


「なんにしろドライト様、反省してくださいよ!」


ドライトの言葉に、ジュリーナが願ったのはハザ達との戦いを止めて、話を聞くというのものだった。

そしてその願いを聞いたドライトは、あっさりと聞き受けて戦闘を止めたのだ。


そして現在はハザ達は山から呼び戻され、ツィオスと共にドライトを非難し始めたのだった。


「む?なんですかなんですか!私はジュリーナさんの頼みを聞き入れて戦いを中断したのですよ!?

なんなら、再開しますか!?」


だがドライトは反省なぞせずに、逆にそう言ってハザ達をにらみつける。

つい先程まで力の差を見せつけられていた3人は、そう言われては口を閉じるしかなく、口を閉じて悔しそうにするのだった。

そんな3人を見てドライトはニヤニヤ笑いながら言う。


「まぁ、私も鬼でも悪魔でもありません、もし私に少しでも痛みを感じさせたら、謝っても良いですよ?」


ドライトの言葉に3人はこれ以上にバカにされてたまるかと、武器を手に取り戦闘体制を再び取ると再度殴りかかる。

だが、ドライトは涼しい顔でドジョウすくいの練習を始めてしまう。


「この腰の動きが大事なのです!……ところで早くダメージを与えてくださいよ?私も暇では[ゴス!]頭に結構なダメージが!?」


ドライトは突然に後ろから殴られて頭にダメージを受ける、するとドライトは慌ててドジョウすくいを止めて逃げ出した。

そして少し離れたところから自分を殴った相手に文句を言おうと、振り向き固まってしまうのだった。


「……夫……人様に迷惑を……かけない!」


なんとドライトを後ろからどついたのは、ドライトの嫁の1人のアンジュラだった!




「ア、アンジェ!何故こんなところに!?」


「それは……こっちのセリフ……夫、皆が探してる……帰る!」


「な、何を言ってるのですか!今からヒデトさんとマユさんの間に、兄妹間の愛情しかない妹のジュリーナさん、歩夢さんを間に入れて遊んでみたり、空き地の多いツィオーラに勝手に国を造ったりして遊ぶのです!帰りませんよ!」


「……夫……疲れた、かもーん!」


アンジュラはしゃべり疲れたのか、座り込むと誰かを呼び出す。


「はいはーい!アンジェ様、お呼びですか!」


呼ばれて現れたのは、アンジュラの筆頭眷族神であるセイネだった。

現れたセイネはドライトどころかハザが居るのに少し驚きながら、アンジュラに駆け寄る。


「アンジェ様、ドライト様を見つけたんですね!ってかなんでハザ様まで居るんですか?」


「……ん、愛の力……あとは知らない。」


「なるほど!愛の力でドライト様見つけるとはさすがです!

それでハザ様、なんでこんなところでドライト様と一緒に居るんですか?」


セイネはハザに向き直ると、今までの経緯を聞く。

するとセイネはドライトに向き直り、ビシッと指差してドライトに怒鳴りつけるのだった!


「ドライト様!ひどいじゃないですか!」


セイネに怒鳴られたドライトはタジタジだった、格や力を比べてもセイネはアルレニスやツィオスに劣るのに、怒られてアワアワしている。


何故かと言うと、自分の筆頭眷族神のキャロリンと次席眷族神のナタリーと仲の良いセイネに、告げ口されたら2人に怒られてしまうと、恐れていたのだ!


「な、なにがひどいんですか!?私は召喚されたのです、だから頼みを聞く代わりにちょっと遊ばせてもう権利があるのですよ!?」


ドライトの言葉に、ハザ達はちょっとじゃないだろう!っと怒鳴りたかったが、セイネがやれやれといった感じて首をふりながらドライトになにか言おうとしたので、聞くことにする。


「ドライト様、私が……アンジェ様が言いたいのはそんな事じゃないんです!……なんで、なんでそんなに面白そうな遊びに……なんでアンジェ様を参加させないんですか!」


止めてくれると思っていた全員はあまりの事に声も出せなくなる、そんな中で最初に動いたのはツィオスだった。


「き、貴様!何て事をい[ドガ!]へぶし!」


「……セイネに……触るな!」


怒ってセイネにつかみかかろうとしたツィオスを殴って気絶させたのは、アンジュラだった。

さっきまではよく私の言いたいことを言ってくれた!っとセイネに向かって手をパチパチと叩いて喜んでいたが、ツィオスがセイネにつかみかかろうとした瞬間にセイネとツィオスの間に立ちふさがり殴って気絶させたのだ!


「弟に何をするの!」


ツィオスが気絶したの見たアルレニスがアンジュラに飛びかかろうとしたが、その瞬間に横から叫ぶように声が上がる!


「ドライト様、今です!」


「え!?ドライトさん違うんです!」


「……がおー?」


「……へ?[ガス!]あべし!?」


叫んだのはセイネだった、アルレニスはその叫びにドライトがなにか仕掛けてくると思いドライト方を慌てて見るが、ドライトは両腕を上げてやる気のない威嚇しているだけだった。

そして驚き動きを止めるとアンジュラにおもいっきりどつかれて、アルレニスも気絶してしまうのだった!


「……さすが……私のセイネ!」


「みごとな策です!」


「アンジェ様、ドライト様、おほめいただいて光栄です!」


あまりの卑怯さに周囲はドン引きだったがアンジェとドライトはセイネを褒め称え、セイネは嬉しそうに照れている。


「なんにしろドライト様!なにか面白そうな事をしている予感がビンビンします!

ちゃんとアンジェ様も参加させてあげてください!」


「……夫、一緒に……召喚される!」


「や、止めてください!なんで召喚されたのか私にも分からないのです!それに私はまだまだこの世界で遊ぶ、ああ!?」


セイネとアンジュラが私達も混ぜろとドライトに絡みつく、だがドライトは知らないと言いなんとか抵抗していたが、突然にドライトは光輝くと消えてしまった!




「……逃げられた……しょぼーん。」


「アンジェ様!まだチャンスは有ります、追いましょう!」


ドライトが消えてしまうとアンジュラはガックシとしてしまう。

セイネはなんとか元気つけようとしているが、アンジュラは体育座りで黄昏始めてしまう。


「アンジェさん、ドライトさんは強制的に召喚されたんじゃないの?」


「……夫の……力であり得ない。」


いつの間にか復活したアルレニスがアンジュラに質問をする。

それに答えたアンジュラだったが、意味が分からないとアルレニスはセイネを見る。


「ドライト様の力ならあの程度の召喚なら簡単にキャンセル出来ます。

っと言うか単純に力でねじ伏せてキャンセルするなら、アルレニス様や私にも出来るはずですよね?」


セイネの言葉にハザ達はアッと声をあげる、確かに変わった召喚だったが召喚する者がドライトや力のある原始の神や龍神でもない限り、キャンセルや妨害できない方がおかしいのだ。


そんな中でまだしょんぼりしていたアンジュラがポツリとつぶやく。


「……夫が召喚された……時の関係するもの……有れば!」


そう言ったアンジュラのつぶやきを聞きながら、セイネはめざとく地面に転がる銀の珠を見つける。

そしてそれに気がついたジュリーナが、


「あ、ドライト様が呼ばれた時に光った珠だ……」


っと言ったのを聞き漏らさず、珠を素早く拾い上げるとアンジュラに向かって走り叫ぶのだった。




「アンジェ様!見つけました!」



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