激闘!邪神の王(予定)!




驚きの表情で空を覆う邪神の王を見るドライト、邪神の王はすべての目でドライトをにらむように見ている。

そしてドライトは震えながらそれを見ていた、周りの皆もジュリーナも、さすがに恐れ戦いていると思い声をかけようとした瞬間、ドライトが叫んだ。


「な、何て事ですか!たくさんの目が私をにらんでます、神々&龍の統一にらめっこ王者の私にたいしていい度胸です!

そーれ、にらめっ子しましょあっぷっぷ!」


[パパパン!]


「「「な!?」」」


なんとドライトがあっぷっぷ!っと言った瞬間に邪神の王の目がすべて破裂した!


そしてドライトが叫ぶ。


「みましたか!この技で私はにらめっこ統一王者になったのです!」


全員がそれはにらめっこじゃないし、それにそんな恐ろしい技を作るな!と、唖然としてドライトを見る。

だが邪神の王はそれどころじゃないようだ、当たり前だが、なんにしろ邪神の王は触手を伸ばしてきてドライトを絡め取ろうとする。


それを見てドライトは―――


「むむ?今度は引っ張りっこですか?

私も龍として純粋な力比べは大好きです、負けませんよ!小細工をしますから!」


小細工をしたら純粋な勝負と言わんだろ?っとまたもや皆が思ったが、戦いの最中なのでまたもやスルーをする。

そしてそんなドライトに触手が迫り絡め取られそうになるが、ドライトは触手の1本を両手でつかむと。


「オーエス!オーエス!……私の嫁は皆S!言ってて泣けてきました!」


最後のは珍妙な掛け声だが、最後の掛け声で一気に邪神の王は地上に引き寄せられる。

それを見て慌てたのはジュリーナだった。


「龍様!巨大で凶悪な邪神を地上に下ろさないでください!」


ジュリーナの言葉にドライトはジュリーナに向き直り言う。


「巨大で凶悪?確かにバスケットボールほどもありますが、そんなに大きくはないかと……?」


そう言ってドライトはいつの間にか両手に持った、バスケットボール程の大きさの球をジュリーナに差し出してくる。

ジュリーナはそれを見てからハッとして空を見る、そこには先ほどまで有った黒い雲どころか、邪神の王すら居なかった。

ジュリーナは慌ててドライトが持つバスケットボールを見る、それはバスケットボールなどではなく、いくつもの触手を持つ奇っ怪な肉の塊だった。




ジュリーナは何度もドライトの手元に有る肉の塊と空を見比べる、そしてそれが邪神の王だと気がつき、ドライトに倒してもらうかこちらにそのまま渡してもらおうと思いつき、頼もうと思った瞬間だった。


「おのれ!我等の神を返せ!」


いつの間にか近くに来ていた魔王が、ドライトに向かってそう絶叫したのだ!

魔王の叫びに、ドライトは無視するか邪神の王を返すはずがないと思っていた周囲の人達だったが、ドライトは意外な行動に出る。


「パスですか?良いですよ、パース!」


ドライトはそう言って手元の邪神の王を、魔王向けて投げたのだ。


ワンバウンドで!


[グチャ!]


「……ちょっと弾力性が足りませんでしたか?」


ドライトはNBAの選手の様に高速パスを繰り出したが、地面に当たると邪神の王は潰れてただの肉塊になってしまった。

呆然とそれを見つめる魔王にジュリーナ達、そして何が起きたのか真っ先にこの場で気がついたのは魔王だった。


「お、おのれえぇいぃ[グサ!]な、なに!?」


怒りに狂った魔王がドライトに向かおうとした瞬間、胸から輝く剣が生えた。

そして背後から叫ぶような女性の声が聞こえる。


「ヒデト!今よ!」


「任せろ、マユ!」


[ザシュ!]


その声に男性が答えたかと思うと共に、魔王の首が宙を舞った。


そして、首を切り落とされた魔王の体が倒れると、その背後からヒデトとマユが現れる。


「な、なんで……?」


先ほどまで魔闘将戦っていたはずのヒデトとマユが目の前に居るのが信じられずに、ジュリーナがそうこぼす。


「俺達の目標は魔王だろ?」


「魔闘将は他の人達が押さえてくれてるわ?」


言われて見ると、魔闘将は高ランクの冒険者や騎士達と激闘を繰り広げていた。

それを見て慌てて援護に向かおうとしたヒデトとマユだったが、ジュリーナがそれを止める。


「待ってくださいお兄ちゃんお姉ちゃん!2人ともそれなりに消耗してるはずです、これを……」


そう言って差し出したのはミートアップルパイだった、小さく切り分けられたそれは何かの薬草も入っているようで、魔力がこもっているのが見る人が見れば一目で分かるものだった。


「お!アユムのパイか!」


「このバカ、ジュリーナでしょ!

ありがとう、ありがたく……」


そう言って2人が取ろうと手を出し、ジュリーナも渡そうとパイを差し出したがその手が止まる。

何故ならいつの間にかドライトがその間に立ち、口を大きく開けていたからだった。




「あーーーん」


ドライトはあーんと言って口を大きく開けて、ミートアップルパイを今か今かと待っている。

それを見て対応に困ったのはジュリーナとヒデトだった、今までを見ていれば分かるが、このベビードラゴンにしか見えない相手はただ者ではない相手だ、対応を間違えればこのツィオーラはどうなるのか……だからこそヒデトとジュリーナはミートアップルパイをドライトの口の中に放り込もうとしたが、それを止めた者が居た。


「……ねえ?ドライトって言ったっけ?」


「そうですよ?私がドライトです!

それであなたは何で、私がミートアップルパイをいただくのを邪魔するのですか?」


ドライトの口の中にミートアップルパイを投げ入れるのを邪魔したのはマユだった、マユはドライトの名前を確認すると投げ入れられるはずだったミートアップルパイをドライトに見せつける。

それにたいしてドライトはマユをにらみつけて非難するように言う、殺気を込めて……


正直、マユはにらまれただけで限界だった、殺気を向けられると一瞬意識を失ったがジュリーナやヒデトの事を思い出してなんとか耐え、手に持ったミートアップルパイを両手に包むように持ちドライトに言う。


「欲しかったら、私の願いを叶えてくれない?そうしたら……このパイをあげるわ?」


マユはこのベビードラゴンがパイに何故か固執してると一瞬で見破り、交渉しようとしたのだ。

だが向けられた恐ろしい殺気と威圧に、心が折られそうになる。

それでもなんとか持ち直して私の願いを叶えてと言ってみる、するとドライトはよだれを滴ながらウンウンうなずいてくる。


「あなたの望みを叶えればいいのですね?なんですか、この世界を破壊すればいいのですか!?」


「違うわよ!」


とんでもないことを言うドライトにマユが違うと言われて、ドライトはさらに何がしてもらいたいのか聞いてくる。


「なら望みは何ですか?ヒデトさん、いえ、星井秀人さんと福谷万結さん、あなた達を地球に送り返せば良いのですか?」


ドライトの言葉にマユだけでなくヒデトにジュリーナ達もギョッとしてドライトをみる。

自分達の本名は名のっていないし、地球からこの世界に呼び出された事も言ってないのだ、なのに目の前の存在はそれを見抜き帰せると言ってくるのだ、しかもドライトは続けて爆弾を放つ。




「それともジュリーナさん、いえ、星井歩夢さんも地球に戻せば良いのですか?」




ジュリーナの転生前の名前を、アッサリと言ったのだった。



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