ラスト・デイ




「……神々が消えた?」


「は、はいレムリア様!つい先程急に、地球の原始の神々が消えてしまったんです!」


「……全員消えたのかの?」


「い、いえ、イザナギ様とゼウス様がボコボコされて残されてますが、気絶してしまっててですね!?」


「待って」


アルレニス様が慌てながら話す、だが途中でレムリア様が止めると、ドライトに向き直り諭すように話しかける。


「ドライト、あなたの事だからなぜ神々が逃げたのか知ってるわね?

知ってることを、お祖母ちゃんに教えなさい?」


そう優しく言うレムリア様だが、ドライトはイヤイヤと首をふって言う。


「ダメですダメです!いくら大好きなレムリア祖母ちゃんとはいえ喋りませんよ!

私も1柱の龍として、神々との盟約を守り、守秘義務をまっとうするのです!」


ドライトに大好きなと言われてレムリアはデレッとしたが、喋らないと言われると悲しげな表情になる。


それを見てセレナ様が一歩前に出て叱ろうとした時、ドライトの隣に一人の淑女が現れる。


「ドライト様に呼ばれて飛び出さずに、礼儀を守って歩いて現れたざますよ!」


現れたのはロッテンドライヤーだった。

そしてレムリア様達の前に出ると……


「ドライト様は盟約が有るので話せないざます、なので私がドライト様のご命令により、全部話すざますわ!」


っと言い放ったのだ!


「……おい、それはドライトがしゃべるのと一緒じゃないのか?」


俺が思わずそう言うと、ドライトとロッテンドライヤーは目を見開き口を半開きにして、何言ってるんだこいつ?っと言った感じで見てきた。


……二人だと倍どころか数百倍ムカつくな!?


「それで何が起きたの?早く話なさいな?」


「それではお話をさせていただくざます、まず今回の事を考えたのは……」


そう言って説明をロッテンドライヤーから驚愕の事実が告げられる!




「今回の事を考えたのはヤハウェのやつか……」


「それにゼウスとイザナギにオーディンが乗っかったのね……」


「むぅ?しかしゼウスとイザナギは、ボコボコになって捕獲されておらなかったか?」


「そう言えばそうよね?仲間割れでもしたのかしら?……あら?オーディンはともかく、ヤハウェがゼウスとイザナギをよく倒せたわね?」


次々と出てくる神の名に驚く俺達、すると百合ちゃんがヌーマ様に質問をする。


「あ、あの、ヤハウェ様って、弱いんですか?世界で一番信仰されてる神様じゃ?」


「弱くはないわよ?単純な力だけなら皆がほぼ互角なんだけど、経験の差でヤハウェとイザナギはゼウスとオーディンには一歩及ばないのよ?」


「要するに戦好きのアホがオーディンとゼウスで、物造りが好きなアホがイザナギとヤハウェだな!」


モリオン様の言葉に龍達や神々がウンウンうなずいている。


そんなことを言ってて良いのかと思っていると、美しい12枚の翼を持った美丈夫と、6枚の翼を持った少年が前に出てくる。


っと、ドライトが突然話始める。


「灰谷さん、そっちの方は無乳ですが女性ですから、少年だなんて考えてはいけませんよ!」


へーそうなんだ……うぉ!?恐ろしい波動が少年改め少女から!

ただ者じゃないぞこれ!?


あ、横でスゲー笑ってた12枚の翼を持つ美丈夫が張り倒された、それに輝く剣を抜いてドライトに斬りかかった!……けどセレナ様に捕まったわ。


「セレナ様!一回で良いんです、一回だけ斬らせてください!」


「ミカエル、あなた何しに来たの?それにルシフェルまで来たんだから、何か大事な話があったんじゃないの?」


「そ、そうでした……!ドライトさん、後で話が有りますからね!」


「いててて……ドライト氏、さすがでございますな!

ミカエルがこんなに怒るなんて2度目でござるぞ!?」


おい、しゃべり方!


い、いや、それよりも、ミカエルにルシフェルだって!?

天使長に悪魔王、サタンだよな?

っと考えていると、俺の考えを読んだのかドライトが答えてくる。




「灰谷さん、ルシフェルさんは悪魔ではないですよ?

ルシファーではありますが……」


「? ルシフェルってサタンじゃないの?」


よく分からなかったのか、円が質問をする。

横で綾香姉が「不敬よ!」って言っているが、肝心のルシフェル様は、


「良いでござるよ、美少女に蔑んでもらえるなんてご褒美危ないでござる!?」


何て言っていてミカエル様に斬りかかれている。


「ステイ、ステイでござるよ!

あ、危なく地獄に落ちるところでござった……」


ルシフェル様はミカエル様はにらみ合いに入ってしまった、そこで仕方なさそうにドライトが説明をしだす。


「ルシフェルさんは昔に、ヤハウェ様と争ったことが有るのは本当なんですよ?

原因は自分達ばかり働かせて遊んでいる原始の神にキレて、殴りかかったからです。

そのあと更正させて真面目な神にさせようと争っているふりをして、二人して遊んでるのがミカエルさんにバレて[鞘から抜かれた剣]に斬られて地獄に落ちたのが真相です」


「とんでもない話を聞いちゃった気が……」


梨花が真っ青になりながらそう言うと、ドライトは続けて言う。


「ちなみにヤハウェ様は鞘で殴られて地獄に落ちました!笑える話で……あ、これ地球の人に話しちゃダメな事でした。忘れてくださいね?」


本当にとんでもない話じゃねえか!

ああ、何人かのクリスチャンとかが真っ青になっている……

俺は助けを求めるようにミカエル様を見る、すると。


「?……ああ!この剣は我らの主が造りたもうた、神剣です。

二束三文の物だったんですが、以前開催された眷族神武闘大会で頑張って良い成績をあげたら、ヌーマ様が強化してくれたんですよ!

以来私の宝物なんですが、その後に主とルシフェル様にキレた時に更に強化してくれて、レジストに失敗すると地獄に堕ちる機能まで着けてくれたんです!

今では天界の宝です!!」


そう言うことを聞きたかったじゃないし、さらに聞きたくない情報が!


クリスチャンの人達は完全に落ち込んでるし、どう収集つけるんだよこれ!




「ミカエルさん、そんなことよりも本当になにしに来たんですか?」


ドライトの言葉にウットリと自分の剣を見ていたミカエル様が、ハッとしてヌーマ様やお釈迦様達に向き直り説明をしだす。


「ヌーマ様、実は私達は原始の神々を見張っていたのです」


「あのニート共が真面目に働くのが怪しいと感じたでござるが、突然に気配が消えたと思って部屋を調べたら、居なくなってたでござるよ!」


「それでドライトさんが何か知ってると思って、皆で来たんですが……」


ミカエル様、ルシフェル様、ブリュンヒルデ様がそう言ってドライトを見る。

ドライトは相変わらずそっぽを向いていたが、横に居たロッテンドライヤーがしゃべりだす。


「ゼウス様とイザナギ様をボコったのは、ヘラ様とイザナミ様ざます。

ちなみにオーディン様とヤハウェ様もフリッグ様とキリスト様に狙われたざますが、ゼウス様達を盾にして逃走に成功したざますわ!」


ロッテンドライヤーの言葉にギョッとする俺達、そんな俺達を見ながらセレナ様がドライトを叱りつける。


「ドライト!いい加減に全部しゃべりなさいな!

しゃべらないなら罰として……妹達のお世話を1ヶ月間禁止します」


「な!?ぜ、全部正直に言いますから、それは勘弁してください!」


セレナ様の言葉を聞いてドライトは慌ててすべてを話始めるのだった。




そして語られた今回の騒動の発端は、地球の神々の会合が行われた時に、ヤハウェ様がドライトの造った世界の管理システムを利用して、邪神共を罠にはめて一網打尽にして有給休暇を消化しようとしたことだったと言うのだ。


どう言う事かと言うと高位の世界である地球に、邪神達はなんとか介入して混乱を振り撒こうとしていた。

だが強力な原始の神々に守られた地球には邪神達も中々介入できなかった、そこで邪神達は数千年にわたって波状攻撃をし続けたのだ。


で、撃退してた原始の神々の中で、しつこい波状攻撃に飽き飽きしてしまった4柱がいた。

それが担当のヤハウェ様をはじめとしたイザナギ様とゼウス様とオーディン様だった。


そしてヤハウェ様がシステムにわざと隙を作り、そこに邪神達が集中攻撃をしたところを殲滅しようと考えたそうなのだ。


「それで開発者のあなたが気がついて、文句を言いに行ったのね?」


「そうなのです、システムのブラックボックスのところまでいじろうとしたので……」


「それでどうなったの?」


セレナ様の問いに答えるドライト、さらに先を促されてシブシブドライトは答える。


「さすがにこんな事はまずいと、システムの変更はダメだと断ろうとしたのですが……皆さんが担当している地域の、転生と転移の権能を一時的に私に任せると言われたので、ついつい協力してしまったのです!」


「要するに賄賂に目がくらんで仲間になったんじゃないの!」


「ご、ごめんなさい!許してください!」


うーむ、聞いちゃいけないことを聴きまくってしまった……


ドライトはセレナ様に抱えられて、尻を叩かれそうになっていた。

するとそれをミカエル様が止めに入る。


「セ、セレナ様、それよりも聞きたいことがまだ有るんですよ!」


「……ドライト!ちゃんと答えてあげなさい!」


「は、はい!」


どうやらセレナ様は緊急事態として、お仕置きを中止したようだった。




「ドライトさん、あなたがシステムに介入して今回の事態を起こしたのは分かりました。

でもなんで主達は消えて決まったのですか?

それにそう言うことなら何故、お釈迦様には声をかけなかったんですか?」


「お釈迦様に言ったら、そんなことはダメだと反対されて、お説教されちゃうじゃないですか……

それにシステムに介入したのはヤハウェ様が設定にミスってて、邪神がチリヂリに地球に来ちゃいそうだったからです!」


ドライトの言葉に神々がギョッとする、邪神に侵入されればろくな事になるはずがないからだ。


「それとヤハウェ様達は消えたんではありません、拉致されたのです!」


ドライトが衝撃の言葉を放つ、アマテラス様もさすがにギョッとしてドライトを問いただす。


「ら、拉致じゃと!?我が父やゼウス様を倒し、ヤハウェ様とオーディン様を拉致するとは!

ドライトよ、そのようなことが出来る者とはいったい何者じゃ!」


「イザナミ様にフリッグ様、ゼウス様の奥さん達にキリスト様です!」


ドライトの言葉に神々が固まる、お釈迦様はため息をしながらドライトに質問するのだった。


「ふぅ……なんとなく分かってきましたが、何故にイザナミさん達は今回のことに気がついたんですか?」


「ヤハウェ様達、いよいよになったら私に罪を被せて自分達はバックレるつもりだったのです!

なので先手を打ってチクリました、あとイザナギ様とゼウス様は特別に他の女神に言い寄っている写真つきで、ヤハウェ様とオーディン様は人間なんかいくら死んでもいいから俺達が楽をする。って話している音声データも偶然渡してしまいました!」


ドライトの言葉にユノガンド様は大笑いをしている、あ、笑って力が抜けたのか、チエナルナに注射されてる。


アマテラス様やミカエル様達、眷族の神々は真っ青になり、ガンジス様やお釈迦様は修行が足りないから今回のような事を起こす。

きつい修行をかして鍛え直そうとか言い始めているのだった。




「しかし、今回も何事も無かったな?」


弘志はそう言って笑っている。


「いや、結構色々有っただろう?」


俺がそう言うと、弘志が反論してくる。


「アルレニアに召喚されてもすぐ帰ってこれたし、2回目はキャンプしたりして遊んだだけ、今回はゾンビ物でだったけど最大の敵の岡田達とはニアミスしただけ、それに復活させて元の時間の元の場所に戻してくれるらしいし……大したことなかっじゃないか?」


「……まぁ、そう言われるとそうだな?」


弘志の言葉を聞いて、俺は思わず同意してしまう。

すると向こうで説教をされていたドライトがすっ飛んでくる!


「その言葉を待ってました!っと言うことで今から血沸き肉踊る異世界へと参りましょう!

まぁアルレニアになんですが、善は急げと言いますし、レッツ異世界転「こら!」母様!?」


「まだお説教中でしょ!こっちにいらっしゃいな!」


「か、母様!やっと灰谷さんが、星司さんが刺激が欲しいと言ったのです!

このまま拉致してアルレニアに!」


「刺激が欲しいなんて言ってないし、本人の承諾なく連れ去るなんて言語道断です!」


カンカンになったセレナ様に連れ去られるドライト、俺はそれを見ながら言い放つのだった。




「本当になんにも始まらなかったな……!」


こうしてドライト・オブ・デッドは終わり、特になにか始まることは無かったのだった!


「わらわはえらい目に現在進行形であっとるのじゃ!

そして頭に、髪の毛に何かが起きてしまうのじゃー!」


虚しくも悲しげに、ユノガンド様の叫びが響くのだった……



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