31日目・神々
目の前に現れたお釈迦様に驚く俺達だったが、熱心な仏教徒の朝日と桐澤さんに江藤さんの3人は、慌ててひざまずく。
周りを見てみると、うちの校長や教師に生徒達が頭を下げていて、なかには感動のあまり泣き出しているのも居る。
そんななかで賢者の学園の面々は「誰?」っといった感じで見ていたが、賢者の学園の学園長のクリスティーナさんと副学園長のマサミさんに、
「このアホ共、高位の神だと気配で分かるでしょうに!頭を下げなさい!」
「地球の原始の神の一柱よ!地獄に落ちたくなければ五体投地してなさい!」
っと怒鳴られて慌てて頭を下げてている。
そんなユノガンドの世界の面々や俺達に、お釈迦様は優しく声をかけてくる。
「そんなにかしこまらなく良いですよ?
私なぞ、そんなにたいした存在ではありませんので……」
その謙虚な態度と優しさに、地球の面々はますます感動しかけたが、
「おお!ゴータマよ!止めてくれ、なぜか止まらなくなったのじゃ!」
クルクルと回転をし続けるユノガンド様の一言で、台無しになったのだった。
「……ユノガンド殿、久しいな?
止まらなくなったと言うが、自分で回してもらってるのではないのか?」
「何を言うか!わらわにアホみたいに回る趣味でもあるとでも言うのか!?」
「……しかし回してるのはユノガンド殿の眷族神ではないか?」
「は?おぬしは何を言って……」
怒って反論したユノガンド様に、お釈迦様は冷静に縛られている柱を指差して言う。
ユノガンド様は何を言っているのかっと不思議そうに自分の足元、縛られた柱を見ると、そこには柱をグルグルと回す自分の眷族神達、エルナルナ達5人が居たのだった!
「な、何をしとるんじゃ!?」
「バレたわ!」
「撤収!」
「散り散りに逃げるのよ!」
「あと少しでバターになったかもしれないのに!?」
「オマケでハゲ薬を射っても良いですか?」
一斉に逃げ出すエルナルナ達、チエナルナだけは7色に神々しく光る液体の入った注射器をユノガンド様に向けて近づく。
「待て、おぬしら!……チエナルナは本当に待つのじゃ!?」
逃げ出したエルナルナ達にユノガンド様は待つように言う、そしてチエナルナには懇願している。
それを見守りながらお釈迦様は言う。
「これも試練です、耐えるのです……!」
「こんな試練があってたまるものか!ただの反乱じゃろ、これわ!?」
お釈迦様の言葉にユノガンド様の叫びが響くのだった。
注射器を持ったチエナルナとユノガンド様の戦いは一進一退となっていた。
気合いで足の拘束を解いたユノガンド様は、注射器を足で真剣白刃取りのように受け止めていて、押し合いは拮抗していたからだ。
だが俺達には関係ない戦いなので、無視してドライトの方を向く。
ユノガンド様が半泣きでこちらを見ていたが、それも無視して!
「さて、あっちはどうでも良いとして、ドライト、あなたの問題を話し合わないとなの……」
セレナ様が悲しそうに目を伏せて言うと、続けてお釈迦様がドライトを見つめながら言う。
「ガンジス殿達と今回の邪神の襲撃を調べていてな……その結果、ドライト殿、あなたが邪神達を地球に招き入れたのを確認したのだ!」
お釈迦様の言葉に俺達は驚き声も出せない、ドライトはアホでとんでもないことをするが、無体なことはしないと思っていたからだ。
特にドライトの嫁達に妹達はショックだったようで、ドライトの足元にすがりついて泣きながら叫んでいた。
「あなた、ウソでしょう!」
「旦那様、なにか理由があったのでしょう!?」
「ダーリン、早く謝って赦してもらおうよ!」
「……夫……一緒に高飛びする!」
「「にーちゃ!夕飯はまだ?」」
……妹達は泣いてないな?
なんにしろ今回の件では死人まで出てしまっている、魂は無事なので蘇生してくれるらしいのだが、やはり問題があると言うことでドライトには厳しい罰が下されるとのことだ。
そのためセレナ様は悲しそうにドライトを見ていて、シリカ達は早く謝って罰を少しでも軽くしてもらうように説得しているのだった。
だが、肝心のドライトはと言うと、クイズ番組で使われる赤いバッテンの書かれたマスクをして何も言う気がないようだった。
そしてその態度にセレナ様が本気で怒り始める。
「ドライト!今回の一件は本当に問題よ?下手をしたら1000年間の幽閉もあり得るわ?反省をなさい!」
そう言って怒るセレナ様、だがドライトはこたえた様子もなく、いつの間にか手足の拘束を解いてジタバタしていた。
それを見たドライトの祖母、レムリア様とヌーマ様が怒ってドライトに詰め寄る。
「ドライト!私達はもちろん、セレナやディアン達、家族とも1000年間会えなくなるのよ!?
邪神達を地球に引き入れるなんて、何てことをするの!」
「ステラとルチルはどうするの!今もあなたを慕って抱きついてるじゃない!
邪神を高位の世界に招き入れるなんて、何でこんなことを考えたの!」
レムリア様とヌーマ様がドライトを責めるが、ドライトは相変わらずマスクをしたまま手足をバタつかせているだけだった。
その姿にさすがに本気で怒ったのか、セレナ様がマスクに手をかける。
「そのマスクを取りなさいな!……あ、あら?」
セレナ様がドライトのマスクを取ったが、その下からまったく同じマスクが出てきた。
「「「………………」」」
それを見たセレナ様、レムリア様、ヌーマ様は真顔になると次々と手を伸ばしてマスクをはぎ取る。
だがはぎ取ってもはぎ取っても、ドライトはマスクをしているのだった、玉ねぎか?
だがそれを俺達の隣で見ていたディアン様が、不思議そうにドライトを見ながら止めにはいる。
ちなみにガンジス様とモリオン様はオロオロしてるだけだった。
「ババア共待て、セレナもちょっと待ってくれ」
「あなた!ドライトと1000年も離ればなれになるか「セレナ、ちょっとで良いから俺に話させてくれ」あなた?」
ディアン様はセレナ様にレムリア様達を押し退けてドライトの前に出ると、ドライトを真っ正面から見ながら語りかける。
「ドライト、邪神を高位の世界に招き入れるなんて、悪いことをしたのは誰だ?……ではそんな悪いことを考えたのは、誰なんだろうな?」
ドライト最初の言葉に手足をバタつかせたが、次の言葉にはピタリと手足を止める。
それを見たセレナ様もおや?っと、首をかしげながら質問をする。
ちなみにレムリア様とヌーマ様は興奮しすぎたのか、「グルルル……」っと唸っていた。
「ドライト、邪神を引き込み、そのせいで灰谷さん達が死んでしまったのはあなたがやったことよね?
……ならドライト、邪神を招き入れるのを考えたのは、あなたなのよね?」
するとドライトは、最初の質問には両手を上げて、次の質問では両手を下ろした。
『ドライトは邪神を引き込んだけど、今回の計画は建ててはいない?』
ドライトを見ていて俺はそう思っていると、何時の間にか龍の姿に戻ってドライトの頭を舐めていたアンジュラがポツリと言う。
「……夫……ギアスかけられてる」
その言葉に反応したのはお釈迦様だった。
ドライトが着けていたマスクをジット見つめていたお釈迦様は、アンジュラの言葉にハッとしていまだにマスクを着けたままのドライトと手元のマスクを見比べて言う。
「……この制約は私が来たから発動した!?
ドライト殿は喋らないのではなく、喋れないのか!?」
お釈迦様の言葉に全員がハッとしてドライトを見る、ドライトは[正解!]っと書かれたプラカードを掲げていた。
ドライトがギアスをかけられていると知ってシリカ達は真っ青になり、セレナ様やディアン様に祖父母は誰がこんなことをっと怒り始める。
そんな時だった、ステラとルチルが突然に叫んだのだ!
「にーちゃ、夕飯は濃厚コッテリ豚骨醤油ラーメン大盛と餃子が良いです」
「にーちゃ、炒飯の特盛と唐揚げもセットでお願いします」
「「……返事が無いので決定ですね!」」
ステラとルチルが叫んだのは夕飯のメニューだった。
『……どっちか一方ならともかく、両方は体に悪いし食いきれるのか?』
などと考えていると、ドライトもギョッとして妹達を見て、マスクを自分で外して叫んだのだった!
「そんな体に悪いメニューはダメですよ!
どっちかだけです!」
「あなた、自力で解除出来るんじゃないの!」
「ほ、本気で心配したんですからね!?」
「ダーリンがギアスかけられるなんて、変だと思ったけど、わざとかけられてたのかよ……」
「……私もギアスを……かけてあげるね?」
どうやらドライトはギアスをかけられていたが、何時でも自力で解除出来るようだった。
今は磔にされていた木から降ろされて、正座をしてシリカ達に囲まれている。
「ううむ、何にしろドライト殿に制約がかけられていたのは事実、一体何があったのだろうか?……うん?」
お釈迦様が悩んでいると、転移陣が現れて6人の人物が現れる。
その6人の人物とは、アマテラス様にアテネ様、ブリュンヒルデ様にアルレニス様と美しい男女2人だった。
「うん?灰谷か?ドライト・オブ・ザ・デッドに巻き込まれたのは、灰谷の一党じゃったのか?」
「アマテラス、聞いてなかったの?
アルレニスが灰谷さん達が居たって言ってたじゃない」
「そーそー、まあ何にしろ少年少女達よ、御愁傷様!」
3柱の女神が口々にそう言ってくる。
ってかブリュンヒルデ様、御愁傷様って使い方が違うけど、しっくりくるからやめてくれ!
「ちょっとちょっと!今はそんなことを話してる場合じゃないですか!
早く報告しないと……あ!レムリア様!たいへんなんです!」
最後に現れたアルレニス様が、他の面々を押し退けてレムリア様の前にやって来る。
それを見た朝日が「礼節を重んじるアルレニス様が自分より格の高い神を押し退けるなんて、一体何が……?」っとつぶやく。
朝日の言葉に、俺達は緊張しながらアルレニス様の言葉を待つのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます