30日目・終わりへ
「あんなに持ってこられても、置く場所が、あ!?」
数十個のコンテナを持って走ってくるドライトとユノガンド。
ぶっちゃけあんなに持ってこられても、迷惑だと考えながら見ているとそれは起こった。
なんとユノガンドが近くに落ちていたコンテナを、ドライトに向けて蹴ったのだ!
絶妙なタイミングで蹴り飛ばされたコンテナは、ドライトの抱えるコンテナの1つにヒットした。
そのために積まれたコンテナはバランスを崩して、崩れ落ちる……
ドライトの上に!
「!? このアホ神は何て卑怯な事を!さすがはナメクジを見つけると、塩をかけたくなる権能を司るだけはあります!ぎゃあー!」
ドライトは何かよく分からないこと言いながら、コンテナの波に飲み込まれていった。
「そんな権能は司っておらんわ!
何にしろ1番の邪魔者は滅んだのじゃ!これでわらわが逆転[コケ!]のじゃ?」
そしてユノガンドもドライト大将とドライト教授に、ロープで足を引っかけれてスッ転ぶ。
結果、ユノガンドもコンテナの波に飲み込まれてしまうのだった。
こうして、ドライトとユノガンドがコンテナに押し潰されたことにより、ドライト・オブ・ザ・デッドは終わりを告げたのだった。
「えー、結果を発表しますね?」
セレナ様が皆の前に立ち、結果発表をすると言ってくる。
あれからドライト軍団により町はあらかた片付けられ、今は最初に召喚された場所、学校の校庭にみんな集められて、お立ち台に立つセレナ様を注目していた。
ちなみに、ショッピングセンターでドライトとユノガンドは、-100億なんて納得できない!っと騒いでいたが、二人共に今は磔台に縛り付けられて、セレナ様の近くで大人しくしている。
「まず1位と2位なんだけど、うちのリアとチエナルナなので省略します」
「「へ?」」
「高位の龍と神が、本気で得点を一般人と争うなんてあり得ないでしょうに……」
「「じゃ、じゃあ景品は!?」」
「ありません」
「「そ、そんな!」」
何をもらうかワクワクしながら周りと話し合っていたカーネリアとチエナルナは、セレナ様の言葉にショックで固まってしまう。
それを横目に見ながら、セレナ様は1人の女子生徒を手招きして呼び寄せる。
「さて、お名前をうかがって良いかしら?」
セレナ様に呼ばれた女子生徒は、拠点となった寮などで戦闘能力の低い生徒達のまとめ役をしていた少女だった。
普段、学校でも後輩等の面倒見が良いと評判の生徒なのだが、同時にまだ幼い弟が重い心臓病を患っていることでも有名だった。
「は、はい、江藤めぐみと言います」
呼ばれた江藤さんは、なぜ自分が呼ばれたのか分からないようだが、セレナ様の前に進み出る。
「間違いないわね……おめでとう、あなたが3位、実質1位よ?」
江藤さんは目を見開き驚いている、周りでもなんで江藤さんが?っと疑問の声が出る。
「江藤さん、あなたは確かに大きくポイントを何度も稼いでいないわ?
多く入ったのは1度だけ、天使族と竜人族が拠点に攻めこんだ時に、後輩を身をていして守ろうとした時ね、100ポイント入ってるわ?
ただ、あなたの素晴らしいところは-が全く無いところなのよ。
細かくポイントを稼いだ子は他にもいたんだけど、-が0なのはあなただなの、そこで他の人とは差が出て、あなたが1位になったのよ?」
セレナ様がそう言うと、周りのみんなも納得の声を出している。
江藤さんは人格者なだけでなく、可愛いと評判の人気者だからな……誰も文句を「ちょっと待て!」お、岡田、空気を読めよ!
「江藤がトップだなんて変だ、不正しただブクブクブクブク……」
おおお!?文句を言っていた岡田が泡吹いて倒れたぞ!?
「ふん!事実上の最下位がなに言うか!……ましてやセレナが下した裁定に文句をつけるとはな!」
どうやら岡田を気絶させたのはディアン様の様だ、ってかお前が最下位なのかよ……予想道理だな!
なんにしろディアン様は岡田を睨み付けながらそう言うと、進めろと手を振るう。
セレナ様はそれにうなずくと、江藤さんに向き直り再度祝福する。
「さて、先程も言いましたがあなたが1位です。
開催する時に言いましたが、叶えられる範囲で願いを叶えてあげます、あなたの願いを言いなさいな?」
その言葉に江藤さんは皆が予想した通りの願いを言う。
「お、弟の心臓が欲しいです!
心臓病の弟に心臓を下さい!」
その願いにセレナ様は―――
「ごめんなさい、その願いは叶えられないわ……」
っと、拒否したのだった。
何故かと聞こうとする前に、セレナ様が
「心臓が欲しいということは、移植手術ということですよね?
まさか、弟さんに適合する心臓を持つ者を殺して、あなたの弟さんに渡るようにしろと言うのですか?」
っと言う。
「あ……う、うう……」
セレナ様の言葉に、江藤さんは顔色をどんどん悪くしていき、へたりこむ。
すると横で大人しく磔にされていたドライトが騒ぎ出した。
「江藤さん!江藤さん!私に任せるのです、代理人として私が母様を説得してますよ!」
「え……」
言われた江藤さんは困って、俺達の方を見る。
見られた俺達も、ドライトを信じて良いのか分からずに困った顔をするしかなかった。
だが後がない江藤さんは決意すると、ドライトに代理人としてセレナを説得してもらうことにしたのだった。
「ドライト様にお任せします……!」
江藤さんの声を聞いたドライトは、縛られた柱ごとセレナ様に向き直る。
となりでユノガンド様が「お、お主どうやっとるんじゃ!?
この柱はガンジス達の力で固定されとるから、わらわにも無理なのに!」等と言っているがそれを無視して話し出す。
「母様!今から私がネゴシエイトさせていただきます!」
「……ドライト?誰かを殺して心臓を奪うなど……あなたを10分は抱っこさせてもらわないと、許さないわよ?」
『セレナ様!そんなことで許さないで下さい!』
俺が心の中でツッコミをいれていると、ドライトは「ネゴシエイト開始!」と叫んでからセレナ様に話しかけた。
「別に心臓なんか要りません!
要は江藤さんの弟さんが健康になれば良いのです!
ここは私に任せてください!」
ドライトが心臓は要らないと言うと江藤さんは顔を真っ青にし、周りの皆は非難の視線を送るが、セレナ様は「なら、やってみなさいな?」っと許可を出してしまった!
「ネゴシエイト成功です!
それでは僭越ながら……なんだかよく分からない得体のしれない不思議な力で、弟さんよ、超健康にな~れ!」
珍妙な呪文?をドライトが唱えると、一瞬ドライトが光る。
そして江藤さんに向き直ると宣言した。
「無事弟さんは超健康体になりました!おめでとうございます!」
ドライトの宣言に、江藤さんは目を見開き驚いている。
だが俺は気になったことがありポツリと言う。
「それはネゴシエイトか?たんに別の案を出しただけじゃないか……?」
俺のつぶやきに、ドライトは目を見開き口を半分を開けて、何言ってるんだこいつ?っと言う感じで見てくる。
うん、相変わらすスゲームカつくぜ!
なんてこと思っていると、磔にされているドライトの尻尾をセレナ様が引っ張った。
「ガァ!?か、母様!尻尾を引っ張らないでください!」
ドライトは抗議するが、セレナ様はそんなドライトを冷めた目で見ながら言う。
「ドライト、あなた何をしたの、今?」
なんだ?何時もドライトに優しくて甘いセレナ様が、けっこう本気で怒ってるみたいだぞ?
不思議に思いドライトを見ていると、その隣で磔にされていたユノガンド様が突然大声で叫び出した。
「やったぞ!これで動けるのじゃ!!ぬはははは!」
うん、動くって言うか、回転してるね?
ユノガンド様は縛りつけられた木の棒ごと、クルクルと回転していた。
まぁ、高笑いして嬉しそうだからいいか……っと、ながめていると、俺の視線を感じ取ったのか回転を止めて俺達の方を向き、
「ん?どうしたのじゃ?何かあったのかのう?」
っと聞いてきたのでちょうど良いと、なぜセレナ様が怒っているのか聞いてみると。
「ああ、例えばじゃな?そこのおなごの弟とやらの病を治すのに必要な力は10も要らないとするじゃろ?
じゃが明らかにさっきのドライトは、1000以上の力を使ったのじゃ、またなにかしでかしたんじゃろ?」
っと教えてくれて、また回転し始めた。
ユノガンド様の言葉に江藤さんは慌ててドライトに何をしたのか聞こうとしたが、ドライトはシリカ達とさきほど昼寝から起きたステラとルチルに囲まれていたために、聞けないようだった。
何をしてるのか見てみると、シリカもセレナ様のようにドライトの尻尾を引っ張ろうとしたようだが、ドライトが巧みに尻尾を動かしてつかませないために、シリカ達は全員でつかもうとしているようだった。
俺達はどうすれば良いのか分からなくなり、セレナ様を見ると視線に気がついたセレナ様がドライトに命令をする。
「ドライト、江藤さんの弟さんに何をしたのか私とみんなに説明なさい。
あとステラとルチルにシリカ達には尻尾を触らせてあげなさい。
これは母として命令です」
「そ、そんな!?」
セレナ様に命じられ、ドライトは妹達と嫁達に尻尾を差し出してから、俺達に何をしたのか説明をする。
「江藤さんのお願い道理に、弟さんを超健康体したんですがなにか問題ありましたか?」
そう言うドライトに江藤さんや周りの皆はホッとするが、俺は一歩前に出て問う。
「健康体になるのは良いと思う。
だが“超”健康体ってのはどういう意味だ?」
そう質問するとドライトは説明し出す。
「病気の子供達の夢、元気になったら何になりたいか……お医者さんや学者さんも人気があります……
しかし!スポーツ選手も根強い人気があります!
そこで!弟さんには一流のアスリートになれるようにしてあげました!」
「具体的には?」
「現在はNFLの選手数人を1人で撲殺できる程度です!」
こうして江藤さんの弟さんは、超健康体から普通の健康優良児レベルに落とされたのだった。
なんにしろ江藤さんの願いは叶えられた。
その後は他の面々もセレナ様に願いを言ったのだが、それはダメと言ったり、順位によってはその順位ではダメですと断る。
だがたまにセレナ様は、最初の江藤さんの時のように曲解して答え、願いを受け付けないように誘導する時が有った。
それに気がつき始めた俺達が不思議に思っていると、回転を続けるユノガンド様のそばに来ていたエルナルナ様達が話始める。
「相変わらずあの家族は教育熱心ね?」
「ステラちゃんとルチルちゃんは素直な良い子ですから、素晴らしい神になると思いますよ?」
「ドライトさんがクズすぎるとも言うけどね!」
「お?ステラちゃんとルチルちゃんが質問を始めたみたいね?」
「私もハゲ薬に関して質問が!」
エルナルナ達の話を聞いていて、さらに不思議に思った俺はエルナルナ達に聞いてみる。
「なぁ、セレナ様の言動になにか意味が有るのか?」
「ああ……あの子達は高位の龍だから、将来に必ず願いを聞くことが有るはずなのよ?」
「その時に叶えちゃダメな願いとかを判断できるように、今のうちからああやって教育してるの?」
「でも今回は特別にドライトさんが叶えてあげれるように、別の案を出したりしてあげてるのよ」
「最初にセレナ様ができる限り願いを聞くって言っちゃったから、ドライトさんが調整して叶えられるようにしてあげてるのね」
「本来ならこんなにホイホイ叶えちゃダメなんだけどね!」
「私の願い、ハゲ薬の話も聞いて欲しい!」
エルナルナ達の話を聞いて納得すると、願いを聞いて叶えているセレナ様とドライトを俺達もながめるのだった。
「ふぅ……これで全員ですね?」
全員の願いを聞いたセレナ様がそう言ってから、ドライトに向き直る。
「母様!終わったなら縄をほどいてください!」
「わらわは止めてくれ!」
ドライトは解放してくれと頼み、ユノガンド様はなぜか回転が止まらなくなったようで、回転を止めてくれと頼んでいる。
セレナ様はそんなドライトを見て、ユノガンド様は無視して言う。
「さて、ここからはドライトの罪を問わねばなりません」
セレナ様の言葉に驚く俺達、そんな俺達はさらに驚く。
なぜかというとドライトを囲むようにガンジス様達と一緒に、ある人物が現れたからだ。
その人物は背後より後光が差しており、その前に立つだけで心が休まりすべてが赦されるように感じるほどの、優しい笑顔をたたえた方だった。
その方の姿を見て、俺や朝日達に他のうちの高校の面々は茫然していた。
そしてポツリと江藤さんがつぶやく。
「ウ、ウソ……仏様?お、お釈迦様!?」
そう、俺達の目の前に、お釈迦様が現れたのだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます