29日目・落ちる物




ドライト・オブ・ザ・デッドは終わった。


今はドライト軍団により後片付けと救助作業が行われている……


俺達はそれをショッピングセンターの屋上から、力なく見守り続けるのだった……


「-100億?そんなバカな!?」


「わらわもじゃと!?

不正じゃ!不当な何かが有ったとしか思えんぞ!」


そして横で騒ぐ1匹と1柱の声を聞きながら、俺達は昨日に起きた事を俺は思い出すのだった。




「な、なんだあの飛行機の大群は!?」


「どっから沸いたのよ、凄い数よ!」


俺の叫びに円も驚き叫んで反応をする。

他の皆はあまりの数に声も出せずに驚き、目を見開いているだけだった。


そして大量の航空機の中でも、先頭を飛ぶひときわ巨大な飛行機の中ではと言うと―――


『……1番よし、2番よし!……投下準備完了!』


『僚機に後続の編隊も~投下準備完了です~

さらに全機~、投下ラインにのりました~』


「了解!キャロさん、ナタリーさん、僚機に後続も投下準備が完了したそうです!」


無線機から聞こえたハマリエルとフルの声にエイミリアは返事をすると、機長席と副機長席に座るキャロリンとナタリーに伝える。


「エイミリアちゃん、了解しました。

フゥ……作戦通りいきそうですね……」


「私とキャロ様は、特別任務で別行動と言われてたときには驚きましたが、さすがはドライト様ですね?

こうなると予想して準備なされたのでしょう……」


「それにしてもキャロさん、ナタリーさん。

この航空機?ですか?こんなに巨大な物が魔法も使わずに空を飛ぶとは、驚きですよね?」


キャロリンとナタリーが作戦の事を話していると、エイミリアが自分達が乗っている乗り物の話をしだす。


「エイミリア様、なんでもこの乗り物のオリジナルは、巨神兵とか言う巨大な生き物を運んだとか聞きましたよ?」


「ええ、でも重さに耐えられずに墜ちたらしいんですけどね?」


「「墜ちたのですか!?」」


エイミリアにナタリーがそう返すと、キャロリンがなんでもないように墜ちたと言う。

その言葉にエイミリアとナタリーは驚き目を見開き、キャロリンを見る。


「ええ、まぁこの機体はドライト様が改造してあるようなので、生半可な事では墜ちなくしてあるとの事です」


「な、なるほど……」


「物凄い量の荷物を積んだので心配でしたが、それなら墜ちる心配はありませんね!」


キャロリンの説明にナタリーとエイミリアがホッとすると共に、無線機から間延びしているが慌てた声が響いた。


『キャロ様~、キャロ様~!』


「あれ?フルちゃんじゃない?」


「ずいぶんと慌ててますね?」


「どうかしましたか?」


キャロリンが返事をすると、フルが慌てながら報告してくる。


「キャロ様~10時の方向に~ドライト様印を発見です~!」


「! 機首を10時の方向に、投下地点を変更します!」


「「了解です!」」


こうして航空機の大群は、ドライト達の居る方向に向きを変えたのだった。




「……風速よし、風向きよし!投下5秒前、5、4、3……投下投下投下!」


「どんどん落とすよ~!僚機と後続も~投下開始~!」


ハマリエルの合図にフルが答えて、コンテナ等に入った物資が投下されていく。


「順調に物質の投下中、7割が地上に、残りは海に落ちそうです」


「3割が海に……」


エイミリアの言葉に、ナタリーがもったいないと海の方に落ちていく物資を見つめる。


「仕方がありませんね、急きょ投下地点を変えたので、風などで流されたんでしょう」


キャロリンがそう言っていると、後ろのハッチからハマリエルとフルが顔を見せる。


「ふぃ~、全物資の投下終わりました!」


「僚機も後続も~終わったようです~」


貨物室で物資等の投下をしていた2人が報告に来たようだ。

そんな2人にキャロリン達がお疲れ様~っと、声をかけていく。


すると、フルがゴソゴソと何かを取り出しながら、質問してきた。


「キャロ様~これは本当に外して良かったんですか~?」


「それですか?それを着けてると、ドライト様に物資が届くのが遅くなりますからね、無い方が良いですよ」


「キャロ様、それって何て言いましたっけ?」


キャロリンとフルが持つそれを、ナタリーも不思議そうに見つめて聞く。

それに答えたのはエイミリアだった。


「えっと、パラシュートとか言う物でしたよね?」


こうして、パラシュート無しで重いものでは10トン以上有る物資の数々は、地上に向けて自由落下していったのだった。




「来ました!支援物資ですよ!

あれを確保して、みんなに配れば高得点です!」


「おお!それは良い案じゃ!

わらわが確保するから、お主はサポートするのじゃ!」


「アホですか!あれは全部私の物ですよ!?そりゃー!」


「む!?抜けがけは許さんぞ!?」


ドライトはそう言うと、アンジュラの腕からスルリと抜け出して落ちてくる物資に向かう。

そしてユノガンドがそれを追って走り出す。


俺達はそれを横目に、ジリジリと建物の方に下がりながら言い合う。


「おい、あれそのまま落ちてきてないか?」


「はは……そんな、まさか……」


「ああいうのって、普通はパラシュートが着いてるのよね?」


「ああ、普通は飛行機から降ろした瞬間に、パラシュートが開くはずだな」


弘志がそう言った瞬間に、俺達はショッピングセンターに向かって走っていた。


エルケやネイサン達も、何かを感じ取ったのか横で並ぶように走っている。

そしてそのすぐそばには、天使達に竜人達も必死になって走っていた。


「あ、あんたらも逃げるのか!?」


星司が叫ぶようにそう言うと、竜人のオクがやはり叫ぶように答えてくる。


「当たり前でしょうに!弱体化されてないならともかく、今の状態であんなのの直撃を受けたら重傷間違いなしよ!」


「今の弱体化された状態で、あれを普通に受け取れるのはドライト様達位のものよ!

ってか、誰があんなものを放り出したのよ!?」


さらに、その隣を走っているアスモデルも必死に走りながら叫ぶ。


「キャロちゃんでしょ!?」


「ナタリーも居ないから気になってたけど、これの準備してたんでしょ!」


「途中からエイミリアさんと、ハマリエルちゃんとフルちゃんも居なくなったから気になってましたけど、最悪の結果になりましたね!?」


「まずいですわ!どんどんこっちに来ます!早く建物の下に逃げませんと!」


オクとアスモデルが居る方と逆から声がしたので見ると、龍の踊り手のセイネ、アレナム、レイナ、リティアの四人娘も必死に走っていた。




四人も必死になって走り、建物に避難しようとしていた。

その姿を横目で見ながら問いかける。


「キャロって、眷族筆頭とかって言うあの子か?

こんなことをする子に見えなかったけど?」


「キャロもナタリーもドライト様のことになると、視野が狭くなるって言うか、それ以外は見えなくなる[ドスン!]あぶな!?」


アレナムが答えてきたが、すぐそばにコンテナが縦に落ちてきて慌てて逃げる速度をあげる。


「アレナム!今は逃げるのに集中しなきゃ!……って、あれ?アンジェ様は?」


「サルファさまも居ませんわね?……あ!あんなところに!」


リティアがそう言って俺達の後ろ、先程まで皆が居たところを指差す。


なんとか建物の中に入り込み、リティアが指差す方を見ると、幾つかの物資を抱えたシリカ達とエルナルナ達がいた。


「ハァハァハァ……さ、さすがはシリカ様達ですね……」


「この状況でどうやって物資を……あ、危ない!うお!?コンテナを弾き飛ばしたぞ!?」


レイナがそう言ってながめる先では、シリカ達とエルナルナ達が物資を漁っていた。


辺りにコンテナがふりそそぐなかでどうやって?っとながめていると、そのうちの1つがアンジュラに向かって落ちてくる。

だがアンジュラはそれを殴って弾き飛ばしてしまう。


「おおお!?さ、さすがだ……!」


「ってかさ、その後に落ちてきたのは大事そうにキャッチしてたけど、なんで?」


アンジュラは最初に落ちてきたコンテナは殴って吹き飛ばしたが、次に落ちてきたのはキャッチしてシリカ達が居るところに大事そうに持っていったのだ。


「なんで……って中身はポテトチップスか……」


「ポテトチップスだからキャッチしたのね……」


どうやら中身がポテトチップスだったようで、コンテナの扉を引きちぎり、ポテトチップスと書かれた段ボールの箱を箱ごと自分達のアイテムボックスにしまいこんでいた。




「うーん、混沌としてきたな……」


「ってかさ、ドライトの分身体達は何してんのよ?」


現在ドライトとユノガンドは外に出てて居らず、シリカ達とエルナルナ達はポテトチップスの奪い合いで戦闘になっていた。


そしてドライトの分身体達、ドライトポリスとドライトゾンビ達は装備や体に着いたケチャップを拭いとり、防災頭巾をかぶって逃げ回っている。


「なにが楽しいのか分からんが、嬉しそうに逃げまどってるな?」


「逃げるなら建物の中に逃げ込めば良いのに、落ちてくるコンテナのギリギリのところをキャーキャー言いながら走り回ってるわね?」


「うーん……ん?あ、あれなに!?」


それを見ていた俺達だったが、梨花が驚き指差した方を見て唖然としてしまう。


そこには30以上のコンテナを持って走り来る、ドライトとユノガンドが居たのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る