28日目・逆転への翼




「あなた……さすがにここから逆転は無理でしょう?」


「そんなことはありません!

努力と友情、それに清い心があればなんとかなるはずです!」


「うん!ダーリンには無いものばかりだな!」


逆転可能だと言うドライトだったが、カーネリアがあっさりと否定する。


「旦那様、それよりまだ罰が終わってませんわよ?」


「……ぬるぬる……ぬるぬる!」


そしてサルファとアンジュラはドライトを捕まえようとしているようだが、ドライトに飛びついてもツルン!っとスベって捕まえられないようだ。


「はぁ……サルファ、アンジェ、お湯をかけてみなさいな、それでつかめるようになるはずだから」


シリカにそう言われ、サルファとアンジュラはお湯を産み出してドライトにかける。


「ム、ムチンがぁ~!?」


ドライトは鰻のヌメリ成分のムチンをお湯で流されてしまい、アンジュラに捕まってしまったのだった!




「……フムゥ~!」


「なんか熱い吐息を後頭部に感じるんですが、アンジェは変に興奮してませんか?」


ドライトはヌメリが取れてしまい、アンジュラに捕まり抱っこされていた。

そしてなぜかアンジュラは興奮して、鼻息が荒くなっていた!


「……してるわね。

そんなことよりドライト、ドライト・オブ・ザ・デッドが始まってもう何日目?」


「? 28日目ですよ?」


「セレナお義母様が、ドライト・オブ・ザ・デッドは1ヶ月位って、言ってたじゃない?

下手したらあと3日で終わるのよ?どうやって逆転するのよ?」


「まだたったの-17億です!

分身体達と共にポイントを稼いで逆転するのですよ!」


ドライトは自信満々にそう言って逆転可能だと言うが、周りは無理だろうなぁ……っと思っていた。

するとディアン様がポツリと言ったのだった。


「いや、ドライトは今、-30億だから無理、あ!」


つい洩らしてしまったディアン様は、しまった!っと顔をしかめている。

そして現在の得点数を聞いた、まわりの皆は呆然としていた。




「い、1日、-1億以上のペースかよ……」


「ほ、本当にどうやってとってるのよ!?」


俺と円の言葉を聞きながら、まわりに居る人達は信じられないものを見る目で、ドライトを見る。


「そ、そんなバカな!

湖で例えると、鳩の湖なみに心が広い私がそんな点数だなんて……!?」


ドライトはそう言って、アンジュラに抱っこされたまま手足をバタつかせている。


「……鳩の湖?」


「……弘志、聞いたことあるか?」


俺は聞いたことのない湖の名前に首をかしげていると、朝日がとなりに居た弘志に聞いている。


「いや、聞いたことないな?

百合は聞いたことあるか?」


「……百合も聞いたことないよ?」


「……タワシ?」


「円ちゃん、湖って話だから、タワシは関係ないんじゃない?」


「でも梨花さん、私もタワシだと思ったわ?」


「それって、亀の子タワシでしょう?」


円、梨花、桐澤さんがなぜかタワシの話をしていたが、香織姉の言葉で納得する。


だが納得できない人達がドライトに質問をする。


「ちょっとドライト、鳩の湖ってどこにあるのよ?得点とは関係ないのに気になっちゃうじゃない!」


シリカの言葉にサルファ達だけでなく、ユノガンド達もウンウンうなずいてドライトを見つめる。


「鹿児島県の与論島にある50㎝ほどの湖ですよ?知りませんか?」


「5、50㎝!?」


「はい!世界最小の湖です!……自称ですが!」


「フン!」[ゴン!]


「あだ!?」


下らない事を言ったドライトはシリカに殴られて制裁を受ける。


「ってか、自称でも世界最小って、自分の心の狭さも世界最小って言ってるようなものじゃんか……」


「そんなことを言っているから-30億なんですわ!」


「……クンクンクンクンクンクン!」


そしてカーネリアとサルファにも非難され、アンジュラには匂いを嗅がれていた。




すると高笑いをしながらユノガンドがドライトを指差す。


「ふはははは!愚かなり、ドライトよ!

おぬしが断トツのドベは「ユノガンド様は現在、-29億7千万で追いつきつつありますな」うそじゃろ!?」


ユノガンドはドライトをバカにしようとしたようだが、追いつきつつあるとディアンに指摘されて驚いている。


「なんにしろ一発逆転、一発逆転にかけるのです!」


「そうじゃ!ドベは嫌じゃ!」


ドライトは一発逆転にかけると言い、ユノガンドもさすがにまずいと思ったの二人してジタバタしながら騒ぐ、だがそんな二人を見ながらまわりの皆は否定的だった。


「いや、無理でしょう」


「ですよね……良い行いをしていてトップのリア様ですら、1万点を越えるぐらいなんですよね?」


「香織さん、1万点ってかなりの高得点みたいなのよ……これから逆転は不可能だと思うわ?」


「ところでエルナルナ姉、3位ってどーなってるの?」


「ええっと、メルクルナ様が3位ですね、7千5百点です」


「ウソ!?円、ちょっと見せなさいよ!ほ、本当だ!?なんで!?」


「マリルルナ様、何か変なんですか?」


「梨花、メルクルナ姉はワガママと傍若無人とむし歯菌を司る神、ユノガンド様をずっと背負ってたのよ!巻き込まれて-も多いはずなの……

なのにこんな高得点だなんて、信じられないわ!さすがは私のメルクルナ姉よ!」


メルクルナはいがいと高得点だったようだ、それにチエナルナは大喜びしてメルクルナに抱きつく。

エルナルナとメリルルナは、そんなチエナルナと恥ずかしそうにしているメルクルナを微笑ましくみている。


「わしゃ、そんな権能を司っとらんわ!」


ちなみに、いつの間にかメルクルナに背負われたユノガンドが何か文句を言っているが、もちろん誰も聞いていないのだった。




「しっかし、こっから一発逆転って言ってもな……ブ!?」


「星司、どうかしたのか?」


得点表を観ていて吹き出した俺に気がつき、朝日が近くにやってくる。


「いや、見たくない名前が載ってたんだわ……」


そう言いながら朝日に見せたところに載っていた名前とは……


「お、岡田かよ……!ってか、-1万5千って、相当だぞ!?」


「ゲ!その上にデーヴィンも載ってるじゃん!」


岡田の名前の上には、ケイティのストーカーでエルケが毛嫌いしているデーヴィンの名前も載っていたので、エルケが嫌そうに叫んでいる。


「デーヴィンのバカも-1万点超えか……」


「よくよく考えたら、リア様やチエナルナ様でも1万点前後なんでしょ?

それを考えるとこの2人って、どうやってこの点数を取ったのかしら?」


「-とはいえ、ある意味すごいよね……」


ネイサン、ケイティ、エルケが得点表を見ながら嫌そうに言っている。

するとドライトとユノガンドが騒ぎ始めた。


「ええぃ!納得できません、トップは私であるべきなのです!私こそがトップなのですよ!」


「あほが!お主ではなくわらわこそが、とっぷであるべきなのじゃ!」


「むし歯菌の神は黙るのです!

ドライト軍団、いまこそ本気で勝ちにいきます!

おもてなし作戦開始です!」


「誰がむし歯菌の神じゃ!?

なんにしろわらわも善行を積んでぽいんとを……善行?良いこと……人のためになることをすれば良いのじゃよな?……何をすれば良いんじゃ?」


ドライトが「おもてなし作戦開始です!」っと叫ぶとドライトポリスだけでなく、ドライトゾンビ達がワラワラと現れておもてなしをし始める。


だがそれはおもてなしどころか善行ではなく―――


「さあさあ、お茶はどうですか?熱々ですよ?……熱くて飲めない?私が煎れてあげたのに、飲めないとはどういうことですか!?」


「かゆいところはないですか?……ない!?ゾンビ役の私がこんなにかゆいのに、ないとはどういうことですか!?」


ただのイチャモンだった。


ドライト軍団は周りに迷惑を振りまいている。


そして指揮個体であり、現在ここに居る唯一の指揮個体のロッテンドライヤーはと言うと。


「おもてなしざます!

淑女として準備しなければ!」


そう言ってオスプレイ飛びで飛んでいってしまった。

建物や天使に竜人達を粉砕し、蹴散らしながら……


「……あれはどう考えても-じゃないか?」


「星ちゃん、あっちに比べたらましじゃないの?」


あきれてつぶやいた俺に、香織姉がそう言って指差す。


「……他人のためになること?……食べ物を分け与えるじゃと!?そうじゃ!嫌いな、なすやほうれん草を分け与えれば良いのじゃな!?

……だめじゃと!?……自分の食べる分を減らして分けならん!?

ばかを言うではないわ!なんで原始の神たるわらわがそんなことをせねばならんのじゃ!

他に何かないのか!……他人につくす?あほを言うではないわ!わらわはつくされる側じゃぞ!他人につくすぐらいなら原始の神を辞めるわ!」


うん、問題外だわ、あれが人々を導く神々の頂点の一柱とは、思いたくないな。


逆転を狙う1柱と1匹は、すごい勢いで-ポイントを稼いでいるようだった。




それをながめていると、いまだにアンジュラに捕まったままで抱っこされていたドライトが、声をあげてジタバタし始めた。


「逆転の翼が来ました!」


そう言って指差した先には―――空を覆い尽くさんばかりの航空機が飛んでいたのだった。



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