26日目・襲撃のカーネリア


「門の修復用の資材はどこ!?」


「駐車場に置いてないか?」


円の叫びに、ネイサンが答える。

その横では弘志と朝日がふさぐ階段について話し合っている。


「おい、2階に上がる階段は、2ヶ所を残して他はふさぐんだよな?」


「ああ、A―5とC―5だけ残して、他は中央のエスカレーターやエレベーターも全部を封鎖だ。

ああ、あと3階に上がる階段は、B―2とD―2を残すんだぞ?」


ショッピングセンターに戻ってきてから5日。

俺達はショッピングセンターに立てこもり、天使や竜人、ドライトゾンビの襲撃から身を守っていた。




「クッソ!また竜人達だ!」


「今日の朝は天使達、昼すぎからは竜人達か、夜にはドライトゾンビ……さすがにおかしいだろ!?」


「あきらかに天使と竜人は共闘してるよね……ドライトゾンビは違うみたいだけど……」


朝日がイラついたように叫ぶと、弘志も怒りながら同意する。

そして、疲れた顔をしながら百合ちゃんも意見を言う。


それを横で聞きながら、俺はショッピングセンターの駐車場を見る。


そこではロッテンドライヤー女史が、オスプレイのように飛び回っている姿があった。

そしてその女史を追うようにドライトポリスが走り回って、天使達と竜人達を蹴散らしていた。


だが天使も竜人達も、倒された仲間を助けると何処へともなく逃げていく。

ロッテンドライヤー女史やドライトポリス達は少し追いかけるが、ショッピングセンターの敷地から出たら、追いかけずにシブシブ戻ってきている。


このような光景が、俺達がショッピングセンターに来た次の日からずっと続いており、さすがの俺達にも疲れが見え始めていた。


「やっぱりあとは追えないか……」


「昨日の襲撃で、懲りたんじゃないの?」


戻ってくるロッテンドライヤー女史達を見ながらポツリと言うと、梨花が横に来てそういう。


何があったかと言うと、昨日の襲撃の時に、ステラとルチルのお昼寝をたびたび邪魔されていたドライトがブチキレて飛び出し、蹴散らした天使と竜人達を追いかけてショッピングセンターの敷地から離れた瞬間に、ユノガンド達が逆方向から攻撃してきたのだ。


慌ててシリカ達が迎撃に出たのだが、ドライトが居ないために一方的にやられてしまい、支援に出た龍の踊り手達も負傷してしまったのだった。


そして現在は、負傷したレイナ達を看護するためにシリカ達は警備室にこもっており。

ロッテンドライヤーが、ショッピングセンターの周りを飛び回って警戒していた。




「天使達と竜人達が連携してるけど、あの人達って仲が良かったのかな?」


「いや、拠点の門のところでは争ってたしなぁ……」


俺も外を見ながら曖昧に答えると、エルケがやって来て教えてくれる。


「竜人と天使って、基本は仲は悪くないわよ?

ただ竜人は龍に使えてて、天使は神に使えてるの。

その使えてる相手に命令されると、競い会う事があるみたいね?」


「なら、ますます変だろ?

ここには竜人の生みの親とも言える、ドライト達が居るのになんで連携して攻めてくるんだよ?」


「そうなのよねぇ……」


俺達がそんなことを話していると、ショッピングセンターの出入り口で騒ぎがおこる。


「で、であえ!であえ!」


「おのおのがた!討ち入りでござる!敵襲でござるぞ!?」


その騒ぎに、俺達は声のする方を見る。

そこには茜色の髪をショートカットにした、深紅の眼を持つ美少女がたたずんでいた。


なぜかドライトポリス達は一定の距離を保ち、その美少女を包囲して攻撃をしかけていない。

そしてその美少女は、ショッピングセンターの方をキッとにらむと、大声でドライトを呼ぶのだった!




「ダーリン、話がある!出てきやがれ!」




「あれって、カーネリアさんよね?」


「あ、ああ、ドライトの嫁の1人だったよな?」


そう、桐澤さんと朝日の言葉通り、茜色の髪をショートカットにした深紅の眼を持つ美少女は、ドライトの嫁の1人のカーネリアだった!


「……あれ?そー言えばカーネリアさんって、俺等の拠点から脱出するときに見かけたけど、その後は全然見かけなかったような?」


俺がそう言うと、他の皆も不思議そうにカーネリアを見る。

するとこの騒ぎに気がついた、ドライトがパタパタと飛んでやってくる。


「この騒ぎはなんですか!?

うん?くせ者は排除……リア!リアじゃないですか!?」


騒ぎの中心に、カーネリアが居るのを見つけたドライトは慌てて飛んでいく。


「リア!探していたんですよ!?

あなたが居ない間に「うるせえ!」リ、リア!?」


「……ダーリン、流石に今回は頭にきたぜ?

お仕置きしてやるから覚悟しな!

者共、出てこい!」


カーネリアの合図と共に、ゾロゾロと竜人達が姿を表す。

その中にはアラトロンやオクといったリーダーや、他の幹部達もそろっているようだった。


「リ、リア様。

本当に大丈夫なんですか?」


「ドライト様に逆らって……うお!?

ロッテンドライヤー女史がカンカンになって飛んできたぞ!?」


「ドライト様に逆らうアホ共!オスプレイアタックをうけるざます!」


「に、逃げ「お前等、落ち着きやがれ!」リ、リア様……!」


「ロッテンドライヤーがどうしたってんだ!

私は怖くないぞ!」


「「「おお……流石はリア様!」」」


慌てて逃げ出そうとした竜人達を一括したカーネリア。

その言葉に竜人達は一部を除き、カーネリアに尊敬の視線を向けて動きを止める。


そして逃げるのを止めなかった一部、オクとハギトにオフィエルは自分の配下と逃げ出して、ドライトの元にやって来る。




「ドライト様!私達は騙されたんです!おゆるしください!」


「オク!お前リア様を裏切るのか!?」


「仕方がないじゃないの!

ロッテンドライヤー女史だけならともかく、ドライト様も居るんだから勝ち目なんてないじゃない!」


アラトロンの非難にオクがそう返すと、アラトロンは一瞬固まってからカーネリアに向き直り聞く。


「……リア様、もちろん何か良い策が有るから怖くないんですよね?」


「……気合いで頑張れ!」


「「「ドライト様!おゆるしください!」」」


カーネリアの言葉にアラトロン達はドライトに向かって土下座をし始める。


「お前等!あたしを裏切るのか!?」


それを見たカーネリアが、アラトロン達に詰め寄ろうとするが、背後からの声にカーネリアは動きを止める。


「リア、あなた何をしてるの?それに何をしてたの?」


「シ、シリカの姉御!?」


「私も居るわよ?」


「サルファ姉!」


「よろしくニキー……」


「アンジェも!?」


カーネリアを囲むように、シリカ、サルファ、アンジュラが現れる。

そして3人は静かに怒っているようだった。


「みんな!聞いてくれよ、ダーリンったら「先に私の質問に答えなさいな?」シ、シリカの姉御?」


「あなたは今、何をしようとしてて、今までどこで何をしてたの?」




カーネリアはシリカ達が怒っているのに気がつき、オロオロし始める。


「い、いや、シリカの姉御、ダーリンが悪いんだって!

ダーリンに言われてアスモデルのところに行ったら、そのあと何故かここに帰られなくって、オク達を捕まえて案内してもらって、やっと帰ってこれたんだよ!」


「はあ?なんでまたアスモデルのところなんか?」


シリカはあきれて聞くと、カーネリアは怒りに燃えながら言う。


「ダーリンが面白い話が聞けるから、灰谷達の拠点に行ってみろって言うからさ。

行ったらアスモデルのバカが、赤毛ってアホなキャラが多いですよね?

カーネリア様も……なんて言いやがったんだぜ!?」


怒りに震えながら言うカーネリアだったが、


「あら?だいたいあってるじゃない?」


っとシリカに言われて固まってしまう。


「ドライトの口車に乗ってノコノコ出かけて、さらには妨害か何かしらされてまっすぐに帰ってこれなかったんでしょ?

言われて自分でどう思う?」


「あ、姉御……ううう……」


シリカの言葉にカーネリアは半泣きになってしまう。


「なんにしろリア、レイナ達が怪我をしたのに、本当になんですぐに帰ってこなかったのよ?」


「……へ?ア、アレナムはアレナムは無事なのか!?」


驚き叫んだカーネリアに、シリカが答えようとたが、絶妙なタイミングでアンジュラが答えた。


「……お亡くなりに」


「な、なんだとおぉぉぉ!?」


「……は、なってないよ?」


「お、お前なぁ!?」


カーネリアは激怒して、アンジュラに飛びかかる、そんなカーネリアに向かって建物の方から声がかけられる。


「あ!リア様だ!アレナム、リア様だよ!」


「本当だ!リア様!カーネリア様!」


「ん?ああ!アレナム!怪我は大丈夫か!?」


声をかけてきたのはアレナムだった、アレナムは他の3人とショッピングセンターの屋上から、必死に手をふり叫んでいるのだった。

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