25日目・出戻り
「おおお……偉いことになってる……」
「ど、どうする[ブーン]のよ?……ブーン?」
「う、うお!?オスプレイか!?」
「って、ロッテンドライヤー女史!」
奇妙な音が聞こえたのでそちらを見ると、どうやってか取り返した鎖を両の袖から出して、頭上で振り回して飛んでいるロッテンドライヤー女史が居た。
そしてその姿は、弘志の言う通りオスプレイの様だった。
「あなた達、これからどうするざますか?」
「ど、どうするって、何がですか?」
梨花が訪ね返すと、ロッテンドライヤーはオスプレイ飛びで近づいてきて言う。
「私達はここを出るざますわ?
それとあの方達……岡田様でしたでざますか?あの方達も逃げ出したようざますが、逃げるときに門を壊していったようで、閉まらなくなってるざますわよ?」
「な!?あ、あいつ等、本当に疫病神だな!」
「門が閉まらないなら、天使や竜人達から守るのも難しいぞ?」
「せ、先生、ここには何人ぐらい残ってるんですか?」
俺とネイサンの話を聞いた円が、慌てて教師達に質問をする。
「100人も残ってないはずだ、結構な数が逃げられたからな……」
「探索が出来る者達は、班や仲間と一緒に校長が逃がしたのよ。
それで、校長が自分が囮になって他の生徒を逃がすって言ったんだけど……暗くなったらドライトゾンビが現れてね……」
「それで慌てて建物の中とかに立て籠ってたんだ、 ドライトゾンビのおかげって言うと変だが、彼等が現れたおかげで天使達や竜人達が混乱して、建物の中に避難できたのは皮肉だけどな」
ヒロさん達、教師達がそう言って微妙な顔をする。
そんな中でクミさんがロッテンドライヤー女史に話しかける。
「女史、もしかして脱出を手助けしてくれるの……ですか?」
クミさんが心配そうにそう聞くと、ロッテンドライヤーはニコリと笑い言う。
「知らない中ではないざますから、助けてあげるざますわ!」
「ほ、本当ですか女史!皆、チャンスよ、立て籠ってる人や隠れてる人達を保護して逃げましょう!」
クミさんがそう言うと、他の教師達やクラス委員が慌てて外に飛び出す。
すると俺達の背後から声がかけられる。
「待て!」
「お前等ただですむと思うなよ!?」
数十人の天使と竜人達を率いた2人の男が立ちふさがった。
その2人を見てクミさんが叫び、ヒロさんがつぶやく。
「マ、マルキダエルにアラトロン!」
「長達か……後ろのも精鋭みたいだな?」
立ちふさがったのは天使族の長のマルキダエルと、竜人族の長であるアラトロンだった。
そして、背後に並ぶのはそれぞれの精鋭達の様だった。
「せめて貴様らだけでも叩きのめさないと、殺られていった者達に顔向けができん!」
「逃げないのか?俺達の実力を見誤ったようだな……
何にしろ苦しまずに逝かせてやる!」
そう言って殺気だつマルキダエルとアラトロンに精鋭達。
そんな連中に俺が代表して声をかける。
「いや、あんた等の実力はヒシヒシと感じてるよ?
龍の踊り手の4人並に殺気やらなんやら感じるし、後ろの人達にも俺達は敵わないだろうけどさ……」
俺がそう言いよどむと、天使達と竜人達は俺の反応に困惑気味に言ってくる。
「なんだ?……まさか俺達に勝てる算段でも有ると言うのか?」
「言っとくが、本気を出せばお前等程度、瞬殺できるんだぞ?」
「うん、まぁ俺達は勝てる気なんかこれっぽっちも無いよ?……でもさ、あんた等の後ろの連中はどうかな?」
「「……後ろ?」」
俺の言葉に一度、顔を見合わせて振り返るマルキダエルとアラトロン。
そして2人が見たのは完全武装でジリジリと包囲をせばめてきているドライトポリス達だった。
「皆!ドライトポリスのタゲがアホ達に向いたわ!」
「あいつ等が叩き殺されている間に逃げるわよ!」
ドライトポリスの向こうでは、アスモデルとオクが指示を出して寮から逃げ出している。
それを呆然と見ていたマルキダエルとアラトロンは、ハッとして叫ぶ。
「ア、アスモデル!どう言うことだ!?」
「オク!俺達をはめたのか!?」
2人の叫びを聞いたアスモデルとオクは立ち止まり、さげすんだ目で俺達の目の前に居る天使達と竜人達を見てから言ってくる。
「撤退って言ってるのに、ここで1番ヤバイのが居るところに突っ込むバカは見棄てるしかないでしょうが!」
「はめてはいないけど、あんた等のバカさ加減は利用させてもらうわ!
じゃあ行くわね!成仏してね!?」
オクが成仏してね!っと叫ぶと同時に、2人に指揮された天使達と竜人達は門から逃げていったのだった。
「ち、ちくしょう!……ってか1番ヤバい奴って誰だ?」
「おい、ドライトポリスは厄介だが、あいつ等をボコって突破すれば逃げられるんじゃないか?」
アラトロンの言葉にマルキダエルや他の天使や竜人達が顔を見合わせると、武器を持ち直して俺達の方にジリジリと近づいてくる。
すると俺達の背後でホバリングをしていたロッテンドライヤー女史が、俺達を飛び越えてマルキダエル達の前に行く。
それを見たマルキダエルは前進を止めると、ジリジリと下がり始める。
「な、なんで女史がここに居るんだ!?」
「ヤバい奴って女史のことか!」
「ど、どうしますか?」
「どうするって、逃げるしかないだろうが!」
「ん?おい、もっと下がれ!……あ」
ジリジリと下がりながら逃げようとしていたが、後列が下がらないのでアラトロンが「下がれ!」と言いながら後ろを見ると、そこにはさらに包囲をせばめたドライトポリス達が迫っていたのだった。
「さあ、行くざますわよ?」
「は、はい女史!」
「おおお、ひでえ……」
「ボッコボコにされてるわね……」
俺達は拠点を放棄し、ロッテンドライヤーの先導で外に出ていく。
横ではドライトポリスに捕まった、マルキダエルにアラトロン達がボコボコにされている。
それを横目に俺達は拠点を出ていくのだった。
そしてロッテンドライヤーについていって着いたのが、俺達が前日に後にしたショッピングセンターだったのだ。
「さあさあ!ご飯も味噌汁も、たんとありますよ!
干物もたくさん焼いてますからね?いっぱい食べてください!」
「目玉焼きも焼けたざますわよ?
くよくよせずにたくさん食べて、元気を出すざます!」
エプロンを着けて、俺達の朝飯を作ってくれるドライトとロッテンドライヤー、俺は「米がうめえな!」っと叫びながら、これからどうなるのか頭を抱えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます