24日日目・崩壊


「な、何て事だ……」


「私達が外に出てたほんの2、3日で、こんな事になったなんて……」


「こ、校長、それでデーヴィン達は?それに他の皆は!?」


朝日、エルケが呆然としていると、ネイサンが他の皆はどうしたかのかと校長に聞く、すると校長は疲れきった顔で答える。


「その後なんだけどね……何処からともなく天使族が現れて、攻め込まれてね……」


そう言って校長は黙り混む、それを見てヒロさんが続きを教えてくれる。


「多分だけど、あいつ等何処かで見張ってたんだろうな、ロッテンドライヤー女史とドライトポリスが出ていって直ぐに攻め込んで来たからな……」


その後、竜人族まで攻め込んで来て、三つ巴の戦いになったそうだ。

そして学生達は一部の生徒が善戦したが、天使と竜人達の幹部が乗り込んでくると、あっという間に蹴散らされたのだそうだ。


「それで夜になったらドライトゾンビまでワラワラと現れてな……」


「そ、それじゃあ、他の皆は?」


「いや、幸いな事に私達は建物の中に立て籠もっていたから、ドライトゾンビに噛まれてしまった者は居なかったんですよ……」


「岡田とデーヴィン達は早々に逃げたけどね?」


「変な話、最初に蹴散らされたのが功を奏したんだ。

体力の無い者や戦闘力が低いのが、建物の中に立て籠ってて助かったんだよ……」


そう言ってため息をつくヒロさんと、すまなそうにうつむく校長先生。

正直、途中のクミさんの話は聞きたくなかった。


何にしろ俺達は、そんな校長を見て何も言えなくなってしまった、すると弘志がそんな校長に声をかける。


「校長!しょうがねえよ!

校長がどんな生徒でも分け隔てなく大事にしてるのは知ってるし、そんな校長だから俺達も尊敬してるんだしな。

逆にあのアホ共を見捨ててたら、誰も校長に着いていかないって!」


「そうですよ!弘志くんの言う通りです!

それに、校長先生にはこれからも指揮を取ってもらわないとなんですからね?頑張りましょう!」


弘志の言葉に皆はポカンとしていたが、百合ちゃんが校長を労るようにそう声をかけると、ハッとして次々と声をかけ始める。


「そうですよ、校長先生は悪くありません!」


「校長先生、また頑張りましょう!」


「校長先生が元気になってくれないと、私達も頑張れません!」


「皆さん……そうですね、新たな拠点を見つけて、また一から頑張りましょう!」


校長と生徒や先生達の美しい光景を見ていると、突然とドアの方から[パチパチ]っと手を叩く音が聞こえる、慌ててそちらを向くと手を叩く美男美女達が居た。




「素晴らしい師弟愛です!」


「褒めてやろう!」


「師は弟子を思い、弟子は師を思う。

素晴らしいですね?」


「おい、何にしろ叩きのめして追い出すなり捕虜にするなりしようぜ?」


そう言って部屋の中に入ってきた面々の中に見たことがある者が居た。


「アムブリエルさん……生きてたのか」


「勝手に殺さないでください!

……昨日、一時的に占拠した時に助けてもらったんですよ。

それで、私達も無益な殺生は嫌なので、大人しく降伏してくれませんか?」


「アムブリエル、こんなゴミ共が役に立つわけないだろうが!

俺が相手をしてやる、かかってきな!」


小屋の中に入ってきたのは天使族の4人だった。


「ウェルキエルか……この2人が相手じゃ、きつそうだな……」


「だが4人だけだ、一気に倒して仲間を呼ばせるなよ?」


俺のとなりに弘志が出てくる、逆にはネイサンも出てくる。

2人共に金属バットとマチェットで武装しているが、天使達はポカンとしてからウェルキエルが

バカ笑いしながら言ってくる。


「ブハハハ!お前等ごときが俺に、俺達に勝つつもりか?」


「こちらの2人を一般の天使と勘違いしているのですか?

なら、その判断は大間違いですよ?」


アムブリエルがそう言うと、少し後ろに居た2人の男女が前に出て自己紹介をしてくる。


「俺の名はマルキダエル、天使族の長をしている。

短い付き合いになると思うが、よろしく頼む!」


「こんにちは、黙って従ってもらえると手間が減るのでありがたいのですが……ああ、アスモデルと申し上げます、よろしくお願いしますね?」




俺達を倒す前提で話す2人に、普通なら弘志や百合ちゃんが噛みつくのだが、前に出てきた2人、マルキダエルとアスモデルの迫力はウェルキエルよりも上で、龍の踊り手との模擬戦で経験を積んだ俺達に実力の違いを見せつけていた。


「……星司、ここは俺とクミ達とで時間を稼ぐ、お前達は校長や他の皆を連れて逃げろ」


「ヒロさん、俺達も戦います!」


「いや、お前等だけでも逃げろ……俺達が相手だ、そう簡単にはやらせんぞ!?」


「俺達を相手に良い度胸だ……叩きのめしてやる!」


ヒロさんを先頭に、クミさんや学園の先生達、うちの校長や先生達が天使達に突撃しようと瞬間だった!


[ガラ!]


「マルキダエル!パース!」


[ピシャン!]


天使族の幹部の1人で何かと俺達に協力してくれるハナエル様が、突然窓開けて現れてマルキダエルに何かを投げ渡すと、窓を閉めて居なくなったのだ。


「今の、ハナエルでしたよね……?」


「おいアムブリエル、ハナエルはこいつ等にと行動してたんだろ?」


「え、ええ、私が尋問された時も居ましたから、間違いありません」


「それよりマルキダエル、何を渡されたんだ?……げ!?な、なんだそれ!」


ウェルキエルがマルキダエルの手元を覗きこんで、気持ち悪そうにしている。


他の天使達もマルキダエルが渡されたそれ、両極端に分銅がついた10メートル程の鎖を見ながら、気味悪そうにしていて、「きも!」や「禍禍しい物ですね……」等と言っているが、アスモデルと呼ばれた女性の天使がじっと見つめながら呟いた。


「……鳥に蜘蛛柄?……いえ、ヤンバルにモンちゃん!?」


「そうざますわ?可愛らしいざますでしょ?」


「ヒィ!?ロッテンドライヤー女史!?」


突然現れてアスモデルに声をかけたのはロッテンドライヤーだった。

アスモデルは慌てて下がり、ロッテンドライヤーやマルキダエル達と距離を取る、すると再度窓が開き……


[ガラ!]


「ロッテンドライヤー女史!マルキダエル達がその可愛らしいデザインの鎖を見てキモいだの禍禍しいだの言ってました!」


[ピシャン!]


そう言ってまた窓を閉めるのだった。


「じょ、女史「手羽焼き乱炎舞ざます!」ぎゃあぁぁ!アチイィァ!?」


ハナエルの言葉を聞いたロッテンドライヤーは、オリハルコン製の扇子を片手に1つづつ取り出すと、広げて舞うようにクルクルと回った。


クルクルと回るだけなら問題ないのだが、オリハルコン製の扇子のために相当な打撃力が有るようだし、何故か扇子から火が吹き出していた。


そのためにマルキダエル、アムブリエル、ウェルキエルの3人はボコボコにされながら火ダルマになると言う悲惨な目にあってしまっていた。

アスモデルだけはいち早く逃げていたので助かっていたが……




「撤収!」


「ま、待ってくれ!」


「アスモデル、俺達を置いて逃げるな!」


「じょ、女史がまた来るぞ!逃げろ!」


アスモデルは窓から逃げ出す、他の3人も流石は天使族の幹部と言うか、ボコボコにされて火ダルマ状態だが窓から逃げ出す。


「待つざます、その鎖は置いていくざます!!焼き鳥共、待つざますわ!」


そして何故か鎖を抱えたまま逃げだしたマルキダエルを追って、ロッテンドライヤー女史も軽やかに窓から出ていった。


「皆、今がチャンスよ!拠点内は大混乱で天使族も竜人族も逃げ惑ってるわ、一緒に逃げましょう!」


「ハナエル様!」


開けたままの窓から三度ハナエルが顔を見せると、一緒に逃げましょう!っと言ってくる。


「大混乱って、何でまた……ってドライトポリス達!」


窓に近づき外を見ると、完全武装のドライトポリスに追いかけ回されている天使と竜人達が居た。


「忘れた宝物を盗もうとしましたね!?」


「完全なセミの脱け殻が粉々ですよ!?」


「ジャッジ・ドレ○ド並に処刑してあげますよ!裁判はありません!」


どうやらドライトポリス達も何かを忘れたようで取りに戻ったようだった。

そして荒らしていた天使達と、奇襲を仕掛けようとしていた竜人達と鉢合わせて、戦闘、一方的な暴行になったようだった。


天使も竜人も、鉄パイプなどの武器を持っていたが完全装備のドライトポリスには効果がなく、逆にアダマタンイト製の警棒でボッコボコにされていた。


「テッターイ!皆も撤退よ!」


「皆、早く逃げて!ってかオク、何てタイミングで来るのよ!」


アスモデルが話しかけているのは竜人族のリーダー各のオクと言う女性だった。


「そんなの知った事じゃないわよ!

それにあなたも知ってるんでしょ!?」


「何がよ!?」


「私達の拠点の解放とドライトポリスの援軍の条件よ!

あんなの無理に決まってるんだから、既にある拠点を占拠した方が良いに決まってるじゃない!」


「……私達の条件は、カーネリア様に赤毛ってアホなキャラが多いですよね?

カーネリア様も……あ、いえ何でもないです!って言えよ?

オク、あんたの所はどうなのよ?」


「……チエナルナ様に禿げ薬、禿げ薬って騒いでますけど、それって自分が禿げて……あ、いえ何でもないです!って言えって書いてあったわ」


アスモデルとオクは顔を見合わせると叫んだ!


「「そんなの言えるか!!」」


「あら?言えたじゃない?」


「おお、中々の度胸だぜ?」


「「チエナルナ様!カーネリア様!」」


何時の間にかチエナルナとカーネリアがアスモデルとオクの側に居て話を聞いていた。


しかも何故か肝心の所以外は聴こえていないようで、コミカミに青筋を作ってプルプルと震えている。


それを見たアスモデルとオクは、ダッシュで逃げ出す。

カーネリアとチエナルナはそれをカンカンになって追いかけるのだった。

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