21日目・VSドライト3


「投げ飛ばしてあげます、そおい!?」


ドライトは凄まじい技の切れで、一本背負いを仕掛ける。

誰もがアレナムが投げ飛ばされたと思ったが、アレナムは微動だにしなかった。


「………………そおい!」


「……ドライト様?」


ドライトは再度、一本背負いを仕掛けるが、やはりアレナムは微塵も動かない、アレナムは自分を投げないドライトを不審そうに見て問いかける、するとドライトはアレナムの腕を放して一言いうのだった。


「……重」


「………………は?」




現在ドライトは逃げ回っていた。


「ドライト様!どういう意味ですか!?

重って、どういう意味なんですか!?」


「聞き間違いですよ!私はデブだなんて言ってません!」


「言った!言いました!今デブって言いました!」


アレナムは激昂してドライトを追いかけ回している、ドライトは素早く物影から物影へと移動して、アレナムをおちょくっているようだ。


「アレナム落ち着けって!お前は太ってなんかないから!

ってかデブなのはダーリンだから!」


カーネリアがアレナムを落ち着かせるためにそう言うと、ドライトがプンプン怒って物影から出てくる。


「誰がデブですか、誰が!?」


「ダーリン、他人に言っといて、自分が言われたら怒るなよ……ってかアレナム今だ!ぶちのめせ!」


「はい!」


「へ?」


「乙女心をもてあそんだ恨み、思いしれ!痛恨の一撃!」


[ゴゴン!]


油断しきっていたドライトはアレナムの接近に気がつかず、攻撃を頭にモロに食らう。

しかも一撃と叫んだのに、アレナムは見事なワンツーで2発殴った。


だが―――


「いっっったぁい!?手があぁぁ!」


ダメージを受けたのはアレナムだった。


「アレナム!ダーリンの石頭なんか殴るから!

狙うなら腹だろう!」


どうやらアレナムは判断ミスをして、頭を殴ってしまったようだ。

石頭のドライトにはダメージが無く、あまりの固さに殴ったアレナムにダメージがいったようだった。


「アレナム!後ろ後ろ!」


「へ?……嫌な予感が……」


カーネリアに言われ、嫌な予感がすると言いながらアレナムは背後を見る、すると後ろにはハリセンを掲げ持つドライトが居た、そして―――




[スパーン!]




「わ、私は……太ってない……!」


「そうですね、人よりちょっぴりふくよかなだけですよね!?」


「だから、太って……ガク……」


「ア、アレナム!?私のアレナムがあぁぁぁ!」


こうしてアレナムも倒されてしまったのだった。

アレナムが倒されてカーネリアはオロオロとしている。


「主力が2人もやられちゃいましたよ?どうするんですか?」


アレナムを倒したドライトは、ニヤニヤ笑いながらレイナとリティアを見る。


「くぅ……仕方がないですわ!突撃です!星司さん達が!」


「お、俺達が!?」


「玉砕して時間を稼ぎなさいな!」


「その手があった!時間が経てばドライト様が飽きるかもしれないんです、頼みましたよ!?」


リティアのとんでもない作戦に、レイナが賛成して俺達に圧を加えてくる。


「ぜ、前門の虎、後門の狼ってのはこういう事を言うのか!」


「アホか!?確かに今の状況にピッタリだがそんな事を言ってる場合か!?」


「シッシッ!こっち来ないで!」


ドライトはジリジリと星司達に接近していく、星司達の後ろにはリティア達が立ちふさがり「突っ込め!」っと言っている。


「……時に星司さん、今リティアさん達を裏切れば、その後は手加減してあげますよ?」


「「「のった!」」」


俺達はドライトの提案に即決でのると向き直りリティア達と対峙する。


「う、裏切りましたわ!?」


「恥も外聞もないの?あなた達は!?」


リティアとレイナはそう言ってくるが、俺達も言い返す。


「突っ込んで玉砕しろとか言われたら、こうなるわな?」


「ドライト様とあんた等、どっちかと戦えと言われたらこうなるに決まってるだろ!」


「精一杯やらせてもらいます!」


俺、弘志、百合ちゃんの順でそう言いながら、ジリジリとリティアとレイナを包囲していく。




「ってか、灰谷さん達をぶちのめしてから、ドライト様と戦えばいいんじゃないですか!」


レイナはハッとして刀を抜くと星司達に向き直る、リティアもその言葉を聞き杖を構えて呪文の詠唱を始めた。


だがリティアが詠唱を始めた途端、背後からドライトの声がしたのだった!


「本当にリティアはアホですね?

こんなんではサブリーダとして認められませんよ!」


「な!?わ、私はアホではありま[バチーン!]………………!?」


「リ、リティア!?あ、あなた、私のリティアになんて事を!他の子よりも強く叩いたわね!?」


リティアは反論しようとしたが、ハリセンで叩かれ何も言えなくなってしまう。

しかもどうやらセイネやアレナムよりも強く叩いたようだった、1番装甲が薄いのに!


「何を言いますか!リティアはサブリーダとして、本来はセイネやアレナムは勿論の事、星司さん達の指揮も取るべきだったのです!

おかげでセイネの逃亡を見抜けずにセイネは尻をハリセンで叩かれ。

セイネを助けに突出してしまったアレナムを止められずにアレナムは尻を叩かれ。

レイナのアホな作戦で星司さん達が裏切るのを傍観して、あまつさえ一緒になって星司さん達を殲滅しようとした。

この罪は重いのですよ!?だからこそギリギリ死なない程度に手加減して、ハリセンでお尻を叩いたのです!」


「な、ならどんな作戦を取れば良かったと言うのですか!?

リーダーのキャロちゃんだったらどんな作戦を取ったと言うのですか!?」


「上手いこと星司さん達を私にけしかけて、私に皆で連動技とか合体技を仕掛けたんじゃないですかね?

星司さん達の被害を無視して!」


サルファとドライトが言い争っていると、真っ青な顔色になったリティアがドライトに言う。


「そ、それでも……私は1番勉強が出来ます!」


「……本当にリティアはアホですね?

知識と知恵は違うものですよ?」


そう言うと、ドライトは再度リティアの背後に回り込み、お尻にフゥーっと息を吹き掛けた。


「ピギャァァァ!?」


リティア限界を迎えたようで、悲鳴を上げて倒れてしまった……


「ううう……私はアホではないです、わ……ガク……」




こうしてリティアも倒されてしまい、ドライトはジリジリとレイナに迫るのだった。


ん?俺達はどうしたのか?リティアがドライトにやられている間に、俺達もレイナに粉砕されたさ!


「撤退!」


俺達を吹き飛ばしたレイナはダッシュで逃げ出すが、ドライトが凄まじい勢いで追いかけて、あっという間に追い付かれてしまう。


「こらこら、何処に行くんですか?

あなたにもこの無駄に対魔法耐性をてんこ盛りに着けた、対魔ハリセンを味わってもらうつもりなのですから、覚悟して下さい?」


「こ、来ないで下さい![パキン!]ああぁぁぁ!?シリカ様の刀があぁぁぁ!」


レイナは迫り来るドライトを本気で切りつけたが、ハリセンで刀を叩き折られてしまう。

そしてどうやらシリカに貰った物だったようで、折れた刀を見て真っ青になっている。


「レ、レイナ!止まっちゃダメ!」


「え?[パシパシーン!]あだぁ!?」


シリカが慌ててレイナに注意をするがドライトは素早くレイナの背後に回り込み、右と左の尻に一発づつハリセンを叩き込んだ。


「な、なんで私だけ……に、2回も……」


「さっきはあなただけ叩かなかったので、サービスです!」


「……そ、そんなサービスは……要らなかったです!……ガク」


「そ、そんなレイナまで!?」


こうしてレイナも倒されてしまい、ドライトとの模擬戦は終わったのだった。




「まだまだ修行が足りませんね、精進有るのみです!」


「ちょっとあなた、なんでお尻ばっかり狙ったのよ?」


ドライトが倒れたレイナ達を見回しながら話していると、シリカがレイナを介抱しながら聞く。


「何時もは私がお尻を叩かれてますからね、その反動です!」


「そんな理由で乙女のお尻を叩かないの!」


ドライトは勝負には勝ったが、至極真っ当な理由でシリカに怒られたのだった。

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