楽しい実験 リターンズ2

上手い事、話を反らす事が出来たな。


【はい、しかしまた技術をさらす事になってしまいましたね】


うーん、肝心の部分は流してないし、洗濯機と培養ポットを見られてもどうやってるかは解らないハズだから大丈夫だろ?


【そうですね……将来的にはこの技術を売り出して左団扇でウハウハな予定ですから、バレない様にしないとですね】


うひょひょひょ!たんまり儲けるでー!




映像には結界の中のドライトに土下座して頼み込んでいるマサミと学園長が映っていた。


「お願いします、お願いします!どうか、どうか私の家族を助けてください!」


「い、いや、助けないとは言ってませんよ?

明日に延長してと「生け贄が足りないなら私の命と体を捧げます!」い、いやですからね?」


「マサミ、何を言ってるんです!これは私の家族の問題です、あなたが犠牲になる必要は有りません!」


「いや、あのですね?」


「いいえ、学園長!私は学園長に救ってもらいました、今度は私が助ける番です!」


「あ、あの……」


「いいえ!私の命と体で十分ですよね?すぐに自殺しますから待っててください!」


「………………」


「な、なら私も自殺でも何でもしますから少しお待ちください!」


「分かりました、分かりましたよ!今から始めますよ!代償なんて要りませんからそこで大人しくしててください!

ううう……なんと母様に言い訳すればいいのか今から考えないとです!」


ドライトはそう言うと魂の入ったポットに向かい、ポットの中にそれぞれ1づつ中に何かを入れる。


「それでは……ガオオォォォン、ポチっとな!」


ドライトは吼えると共に本気モードになり偽装なども解除してボタンを押した。

学園長達は「「り、龍……!」」と驚き見つめている。


そして、ポットの中ではドライトが入れた何かと魂が結合され一瞬光ったと思った次の瞬間――心臓が浮かんでいた。

心臓は脈打っていると同時に心臓から血管が伸びていく、そして血管の周りに筋肉が骨が次々と造られていき人の形を形成していく、それを見ていたドライトとドライト軍団は計器をチェックしたりジッと見つめて何かを紙に書き込んでいっている。


「ドライト博士、このデータを」


何時の間にか白衣を着てイスに座っているドライトにドライト研究員が書類の束を渡す。


「うむ……少々不味いですね、1番はともかく他のは完全な肉体を受肉させると魂が逆に疲弊してしまいます。

2番から6番までのポットの活性化を弱めてください」


「出力を落とします、現在90%です80、70……47%で安定しました」


話を聞いていたクリスティーナがたまらずに聞いてくる。


「龍様!子供達に何か問題が有るのですか!?」


ドライトはポットを見たまま答えてくる。


「完全に肉体を再生させるには魂が弱くなりすぎてて魂が持ちません。

ですからポットから出れる位で止めるか、ポットの中で数日過ごしてもらう形にするか見ながら決めます、単純に回復に少し時間がかかるだけなのでご安心ください」


「あああ……感謝します、龍様感謝します!」


「それじゃあ、作業が終わるまで私は母様に言う言い訳を考えるので静かにしててくださいね?」


そうドライトは言うと、ウンウン唸りながら何かを考え始めてしまうのだった……




そして――




[ピーピー、ピーピー、ビービー!]


「うーんうーん、この言い訳はこの前に使いましたし……どうすれば、ああ[ガン!バキ!ドガ!]あれ?もう3時ですか!?」


タイマーの鉄パイプがポットから出て来て殴られた事により、ドライトは作業が終わり3時になった事に気がつく。


「ふむ?終ったようですね、学園長さん、私は帰らせてもらいまあああ!?」


ポットを見ていたドライトは突然叫び声をあげて驚き戸惑っている。


「龍様!子供達に何かあったのですか!?」


「あ、あれはなんですか……あれは何なのですか!?」


そう言ってドライトが指差したのは子供達ではなく、夫のビクターのポットだった。


そしてそのポットの中には……2m以上ある大男が膝を抱えるような体制で浮かんでいたのだった。


「あんな大男だとは聞いてませんよ!

あれではポットから出すのに一苦労じゃないですか!」


その言葉にクリスティーナとマサミは「「へ?」」と言ってポットを見直すと……


「は、博士、引っ掛かって出ません!」


「だ、誰か中に入って引っ掛かってる所を外すのですよ!

あなた達も見てないで手伝ってください!」


ドライトに手伝ってくれと言われたクリスティーナとマサミは慌てて駆け寄って手伝うとビクターをポットから引っ張り出す。


そしてクリスティーナは、ハッとして子供達を見た。


「え?な、なに、なんなの?どう言うことなの!?」


クリスティーナが驚き戸惑っているのに気がついたマサミも子供達のポットを見ると――2人が見たのは体毛が全く無い、まるで胎児の様な姿になった子供達だった。


「貴様!子供達に何をした!」


「落ち着いてください、さっきも言いましたがこれ以上に肉体を育てると弱っている魂に余計な負担を与えてしまうのですよ」


「そ、そうなのですか?それでは何時ぐらいに元の姿に戻れるのですか?」


「今月中には戻れると思いますよ」


そんな話をしていると、ビクターがロープ着てやって来た。




「クリス、慌てなくてもこの方は力のある龍様みたいだ、必ず子供達と会わせてくれるよ」


「あなた……でも300年も待ったのよ?早く、早く会って子供達を抱きしめたいの!」


クリスティーナとビクターが言い争っている、早く子供を抱きしめたいクリスティーナと少し待つんだと言うビクターとの意見の対立なのだが、クリスティーナも無理させてはいけないと分かってはいるのだが母親の感情として我慢できないのだろう。


そんな2人を見ていたマサミは涙ぐんでいた、だが後ろから泣き声が聞こえて振り返ると……


「オロローン、オロローン……可哀想です、可哀想ですよ!

私が母様や父様に抱っこされない日が1週間も続いたら気が狂ってこの世界を破壊してしまいますよ!」


そう言って泣いているドライトが居た、それを見てマサミはチャンスだ!っとドライトに向き合い頼んでみる。


「龍様、どうか学園長の子供達をなんとか助けてくれないでしょうか!

もし生け贄が必要なら私を好きにしてもらって構いません!どうか、どうかお願いいたします!」


マサミの突然の発言にクリスティーナとビクターは驚き反応できない、そして――


「分かりました、なんとかしましょう!ガオォォォォン!」


そう言ってドライトが吼えるとポットが光り輝き先ほどよりも大分人の姿に近づいた子供達が浮かんでいた、早速ドライト軍団がポットに取り付いて外に出していく。


「さぁさぁ、抱っこしてあげてください!?抱き締めてあげてください!?

遠慮しなくてもいいのですよ!」


ドライトがそう言うと子供達が起き出した、そこにまたドライト軍団が群がると子供達の手足にリングを着けて頭からロープを着せる。


「今のリングは……」


「私の力である程度は回復させましたが、やはりまだ完全に回復させる事はしない方が良いです。

なので今の状態だと日光や強い魔素や魔力等に直接触れるのは危険ですので、先程のリングやロープで体を保護しているのですよ」


「なるほど……」


マサミとドライトが話しているとクリスティーナとビクターは子供達に駆け寄り、子供達も必死に手を伸ばして父と母に抱きついている。




「あああ……ナタリー、アーニャ、イーナも!」


「ママだ……ママだぁ!」


「ママ、ママぁ!」


「母さん、私達のために頑張ってくれてたの知ってるよ!」


「アレン、スコット、すまなかったな……私がもっと強ければ……!」


「父さん、父さんがかばってくれたから俺達は魂まで滅びなかったんだ」


「そうだよ、かばってくれたから今こうして母さんにも、兄弟にも会えたんだ」


シャープ一家はお互いに抱きあいながら涙を流し再会を喜んでいる、マサミも涙を流し喜んでいると。


「ううう……感動的です、涙が止まりません!

と言うことで私は帰らせてもらいます」


「り、龍様?学園長、龍様がお帰りに!」


ドライトが帰ると言うのでマサミはクリスティーナに声をかけるとクリスティーナが「お待ちください!」と呼び止める。


「なんですか?私は急いで帰らないとなのですよ?

一刻も早く帰って母様の怒りを少しでも少なくするのですよ!?」


「お、お礼は……私が生け贄として参ります!どうか夫や子供達にマサミはつれて行かないで下さい!」


「「「ママ!?」」」


「「母さん!?」」


子供達が驚いているとビクターが前に進み出てドライトに向かい膝まつき懇願してきた。


「龍様、一家の主として家族を守れなかった私に責任があります。

生け贄には私を……どうか、どうかお願いします!」


ビクターがそう言うと、クリスティーナや子供達が「あなた!」「パパ!」「父さん!」と言ってかばうように抱きついている、だがシャープ一家がいくら待ってもドライトから返事が無く声をかけてきたのはマサミだった。


「あ、あの龍様はそこの窓から帰られました……明日また来るそうでして、生け贄は要らないけど珍しい物や美味しいものがあったら欲しいとの事でした」


「え……お帰りになられた?

それに生け贄は要らない?龍は残虐で願いの代わりにかならず生け贄を求めると……」


「学園長、私達は魔神に騙されていたんですよ……龍様は明日も来るけど子供達の健康チェックの為に彼等を置いていくとの事でした」


そう言ってマサミがポットの方を指差すと白衣を着て眼鏡を着けた分身体達が居た。

その中の鼻眼鏡を着けた個体が一歩前に出て自己紹介してきた。


「どうも、ドライト軍団化学特捜隊のドライト助手です。

某特捜隊?あっちは科学です私達は化学ですよ?決して間違えてはいけません!」


「は、はぁ……」


「なんにしろ私達が皆さんの健康管理をしますのでご安心ください、魂が肉体に定着するまで何か起こっても私達が居ればなんの心配も要りませんよ!」


「あの……龍様ではないのですか?」


「私達は分身体です、遠隔操作されているラジコンの様な物ですよ。

なんにしろ今日はもうお休みになった方が良いです、子供達も旦那さんもお疲れでしょう……私達が健康を見守りますので明日ドライト様が来るまでゆっくり寝てましょう」


「ドライト様?あの龍様はドライト様と言われるのですか?」


「はい、神々や龍達からは銀龍ドライトと言われています」


「銀龍ドライト様……決めました!私はドライト様に忠誠を誓います!」


「学園長!?」


突然の学園長の宣言にマサミは驚き声をあげる、ビクターや子供達も驚いているが続いてビクターや子供達も次々と言う。


「私達一家をお助け下さったのだ、当然だな……私も誓うぞ!」


「「「僕達も私達も!」」」


それを見ていたマサミもため息をつきながら言うのだった。


「私も誓いますか……優しい目をした方でしたし、学園長の恩人ですしね」


マサミはそう言って、ドライトが帰るために開けた窓の方を見るのだった……!




「ぬおおぉぉぉ!唸れ我が羽よ!一刻も早くステラとルチルの元に行くのだ!

そして出来れば母様に深夜帰りがバレない様に願【ドライト様、セレナ様には帰ってきてないのが12時過ぎにバレてます】いいぃぃぃ!?」


【ドライト様、速度が落ちてます】


「か、母様の様子は?」


【潜入しているのでセレナ様も不用意な連絡はして来ませんが、かなり怒っていますね】


「か、帰りたくねえぇぇ!……学園に戻るか!」


【後5分で3時過ぎますよ?

3時過ぎたら、カンカンになって迎えに来るかと……】


「オロローン、オロローン……シャープさん達は幸せになったけど俺が不幸になったー!

全力だ!全力疾走で帰る【全力出したら邪神達に感知されますが?】ちくしょー!出来るだけ急いで帰るぞー!」


夜空にドライトの泣き声が響き、ドライトは出来うる限りのスピードを出して真理の探究亭に帰ったのだった。

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