楽しい実験 リターンズ1

よしよし、よぉし!


【上手い事、話が別の方向に向かってますね】


このままなんとか誤魔化すのだ、油断するなよ!


【了解しました、別のエサも近づきづつありますし、なんとかなるでしょう】


ふふふ……上手くいけば俺の株も上がって例の計画を別の形で進める事が出来るかも知れんな!


【そうですね、細心の注意をはらって進めていきましょう】


クリスティーナが話し出すな、俺も説明してうまい事誘導しちゃる!




「あれはあなた方が魔導飛行船で学園都市に到着した日の夜でした。

学園長室にドライト様が降臨なされたのです!」


「その日私は夜景の陰影を利用して張られていた結界を見て、おかしい所が有るのに気がついたのです。

だから母様に頼み込んで深夜にもかからわず、学園に偵察に出させてもらったのです、そして学園長室にも侵入したんですよ」


ドライトとクリスティーナが語りだす、そして出会いまではこんな感じだった。


ドライトが感じた結界の違和感は敵を中に入れない様に張って有る結界陣に巧妙に隠された隠蔽と遮断だった。

しかも隠蔽と遮断は特定の人物達を隠す様に張られており、それが転移者、クリスティーナやヒロ達だと一目瞭然だったそうだ。

そしてそれを確認したドライトは帰ろうとしたのだが、そこでクリスティーナとマサミと弱い転移者の波動を感じ取り、どんな人物達なのか確認するために気づかれる事なく結界をスリ抜けて学園長室忍び込んだそうだ。


「あの結界を気づかれないでスリ抜けるってどうやるんだ?」


「そりゃ解析して調べれば出来ない事は無いけど、私達だって2日はかかるわよ?」


「私もあの結界陣には結構自信があったんですが……ドライト様には無意味だったようで、全く気がつきませんでした。

歴代の協力者の方々の知識も借りたかなりの物だったんですが……」


「ドライトさん、結界陣のスリ抜けってどうやるのですか?」


「こうですね?スルっと抜けるんですよ」


「「「……」」」


「「「流石はドライト様です!」」」


シリカ達やメルクルナ達はまたか……っと思っていたが学園長達やキャロとセイネは凄いと褒めていた。




「その日、私はマサミと一緒になんとか夫達の復活、それか延命が出来ないか研究していたのです」


「ビクターさんや子供さん達は、長い期間封印の宝珠に封じられていたために魂が大分弱ってしまっていたんですよ」


「特に末の子は……もう持たないかと思っていました」


「ヒロ達に教えなかったのは私が止めたから、せっかく新婚なのにまた邪神達に目をつけられたらってね……」


「「マサミ……」」


「そして私達が意思疎通が出来るビクターの宝珠を使って、色々調べたり実験をして今日はこれ位にしようって、1度学園長室に戻ってきたら……見なれない像が有って……」


「像ってまさか……」


「あの踊り狂う龍の像です」


「あれかよ!」


殴って痛い目をみたカーネリアが叫ぶとドライトが


「盗聴盗撮用の像です、壊れにくく色々仕込んでありますので単純な力技ではそうそう壊れませんよ!」


「それは良いけど、いや良くねえけど!なんであの形はなんなんだよ!イラッとして殴っちゃっただろ、結構痛かったんだからな!」


「それを狙ってあの形にしたのと趣味です!」


「てめぇ![ゴン!]痛てーえぇぇ!」


「リア様!?」


ドライトの返事を聞いてカーネリアが頭を殴ろうとしたが、ドライトが素早く踊り狂う龍の像を盾にしたので、またカーネリアは手を抱えてうずくまっている、そしてアレナムは慌てて回復魔法をまたかけまくっている。


「リア、とりあえず続きを聞きましょう、話が合わらないわ」


「ちくしょー、分かったよシリカ姉……ドラ公後で覚えてれろよ!」


「はいはい分かったから……ドライト、クリスティーナさん続きをお願い」


「まぁ、普通に不審に思ったんですが宝珠を落としたりして割れたら偉い事なんで、私が警戒しつつマサミが秘密の金庫に仕舞おうとしたのですよ」


「私も像の方を警戒して見ながら金庫を開けて仕舞ったんですけど、金庫を閉めようとして誰かが受け取った気がして変だと思い、あれ?っと金庫を見たらドライト様が中に入って居て宝珠を受け取っていたんですよ」


2人はそう言って、その時の事を思い出しながら話し始めた。




「な!?なに!?」


「き、貴様!子龍か!いや、子竜?」


「が、学園長、ジェード王国の一行が到着したと聞きました、第2王女には守護として子竜がつねに側に居ると聞いています、そいつじゃないですか?」


「学園の様子を見に来たのか……いや、こんな時間に変ね?なんにしろそこのデブ子竜、宝珠を返しなさい!」


「今なら、見逃してあげるわよ?さっさと宝珠を返して学園から出て行きなさい!」


だが、ドライトは宝珠を手の中でコロコロと転がして色んな角度から見ていて返事すらしないでいる。


「言葉が通じないのかしら?魔法でクビリ殺して取り返しますか……」


「学園長、万が一があります、取り返してからの方が良いですよ。

しかし子竜でも守護を命じられるほどなら言葉がわかるはずですが……あ!」


マサミが驚いたのは金庫の結界の奥に入れておいた子供達が封じられている宝珠をアッサリと結界を解除してドライトが取り出したからだ、次々と取り出して合計6個を抱える様に持ち見回している。


「こ、この豚竜が!……え!?」


学園長がもう我慢ならないと無詠唱で魔法を発動させようとしたが、発動どころか魔力や魔素の流れが一切無くなっている事に気がつき驚愕している。


「学園長!何時の間にか結界が張られています!」


「ウ、ウソでしょ!?そんな気配無かったのに!」


そう言って、結界を張ったであろう子竜を見直すと金庫からゴソゴソと出て来て突然話し始めた為にさらに驚く。


「この宝珠にはそれぞれ魂が封じられていますね、いえ、封じていると言うより魂を保護しているみたいですが、この魂は邪神の魂で汚染されてますね」


「「え!?」」


「どうやら邪神と戦った時にその邪神に寄生されたのでしょう、寄生した邪神は滅んでもこの魂が有れば復活できると言う事ですかね?」


「そ、そんな事が分かるの!?」


「そ、そうか、だから何をしても魂が回復しなかったのね!」


「そうですね、エリクサー等の魂も癒せる薬を使っても回復しないのは邪神に回復した力などを吸われているからですね」


「それが分かれば……どうすれば良いのよ!?」


「この一番幼い魂は持って3日……いや、2日ほどですかね?」


「そ、そんな、ナタリー!死なないで!」


学園長が宝珠に手を出すがそれをドライトはかわして言う。


「うーんこの状態から復活させるには邪神を取り除かないとですね、あなた達だと普通に100年位かかりますね」


ドライトにそう言われて学園長は座り込んでしまい、マサミはドライトを憎々しい目で睨みながら学園長に寄り添う。




「寄生ですか?そんな事が邪神や魔神に出来るんですか?」


キャロリン達が龍や神々を見ながら言うとユノガンドが答えて来た。


「わし等や龍でも出来るぞ?ただな、龍や我等のような高位の神はそんな事しなくても復活できるからしないがの」


「混沌と秩序の海に逃げ込んじゃえば幾らでも周りに力の元になる混沌と秩序の塊が有りますからね、でもそれならなんでその子供がここに居るんですか?」


補足してくれたエルナルナが不思議そうにフードを被った者達を見ながら言ってくる。


「エルナルナ様、どうい事ですか?」


「実はね?魔神や邪神に寄生されたり汚染された魂の分離って、すっごく難しいのよ……」


「わらわがそれだけに集中しても1週間はかかるぞ?

ガンジス達だと、力のコントロールが上手いレムリア以外はもっとかかるじゃろうな?」


「ユノガンド様だから1週間なのよ?私達4神だと1年はかかるわ」


「私とユノガンド様に4神全員が集中して作業しても2日か3日はかかるわよね?」


「うん、メルクルナも合わせてもそん位かかるよね、でも私達はドライトさんにそんな事頼まれてないのよ」


そう言って、ユノガンドにメルクルナ、4神達も不思議がっているとクリスティーナとマサミがまた話し出した。


「あの時に私は無念に思いながら、私以上に悲しいはずの学園長を見ててね?」


「私は呆然として何も考えられなくっなってて……」




「そ、そんな、ナタリー……ナタリー!ああああああああ!」


「が、学園長、無念です!」


「よっこらしょっと……水平は保たれてますね、それじゃあ宝珠と水を入れてっと。

時間は……30分で良いですかね?私特製のこれとこれも入れてっと!

後はオートで待つだけで良いですね、フンフンフ~ン……いのち温めて 酔いながら 酒をまわし飲む 明日の稼ぎを 夢に見て 腹に晒し巻く 海の男にゃヨ 凍る波しぶき 北の漁場はヨ 男の仕事場サ」


ドライトが何か始めて終わるまで待つつもりか歌い始めた、それに気がついたマサミが怒鳴りつける。


「お、お前何している!」


「なんですか、人が気持ちよく歌っている時に?」


「お前……宝珠はどうした!?」


「……宝珠?……あなた?ナタリー!」


「ご心配なく、この中に入ってますよ」


「……洗濯機?」


マサミが見たのはモロに洗濯機だった、しかもドラム式ではなくいたって普通の洗濯機だった。


「歌に熱中するあまりスイッチを入れ忘れてました!

ポチっとな!これで30分待つだけですよ!」


ドライトが乗っている洗濯機のスイッチを押すと[ゴウンゴウン]っと音を立てながら洗濯機が動き始めると洗濯脱水槽が回転し始める、中から[カチャン!パリン!]っとガラス製品同士が当たり割れるような音がする。

それを聞いて学園長とマサミは……


「いやぁ……いやぁぁぁ!」


「き、貴様ぁ~![ガン!]け、結界!?ちくしょお、ちくしょおぉぉぉ!」


「何を騒いでるんですか?もしかしてもっと私の歌を聞きたいのですか?

良いでしょう、洗濯が終るまでお聞きください!

それでは、まつり!」


そう言うとドライトは熱唱し始める。


マサミはなんとか結界を破れないか頑張っているが傷すらつかないでいる。

学園長は虚ろな目で泣きながら虚空を見つめているのだった……




30分後ーー


ドライトは未だに歌い続けており、マサミは膝をついて泣いていた。

学園長は虚空を見つめてブツブツと何かをつぶやいている。


[ピーピー、ピーピー]


「ふぅ……続けて歌います。

愛燦燦と!」


ドライトは洗濯機が止まったのに更に歌い続けていると、洗濯機から鉄パイプが出てきて殴りかかる。


「愛、さんさん[ドガ!]とおぉぉ!?

な、なんですか?……ああ、洗濯が終わりましたか。

やっぱりタイマーは鉄パイプバージョンに限りますね!」


ドライトは鉄パイプで殴られてやっと30分経ったことに気がつき洗濯機のフタを開ける。


「何が出るかな!何が出るかな!」


ドライトがそう言いながら開けた洗濯機からは、ドス黒い魂が6個出てくる、ドライトはそれを見て明らかに落胆してため息をついた。


『オノレェェ……ユルサヌ、ユルサヌゾォ!』


『コリュウゴトキガァ……ホロボシテクレルワァ!』


それは明らかに邪神の魂だった、マサミはそれを見て絶望し、学園長は虚ろな目で笑い始める。


そして肝心のドライトは近づいてくる黒い魂を煩わしそうに手をパタパタ振る、すると黒い魂は霧散して消えてしまった。


「洗剤と漂白剤を入れすぎましたかね?

魂が疲弊して弱くなっちゃいました。

こんど、テストしてみますか……」


マサミと学園長は泣きながらドライトを睨み付けるていると、ドライトが鼻歌を歌いながら何かの液体が入った透明な筒を設置していた。


学園長はそれを見て奇声を発して殴りかかろうとした瞬間!




「……ママ?お姉ちゃんママだ、ママだよ!」


「……ナタリー?」


「ママ、分かる?私が分かる?」


「ア、アーニャ……?」


「僕も居るよ!」


「母さん、母さん!」


「……スコット?アレン?」


「ママ、心配かけてゴメンね?」


「イ、イーナ!夢?私は夢を見てるの?子供達が、子供達が!」


「クリス、そこの子竜のおかげだよ。

どうやったのかまでは分からないが、私達を蝕んでいた邪神の魂を取り除いてくれたんだ」


一際輝き、大きな魂がそう言いとクリスティーナの近くによってくる。

クリスティーナはその6個の魂を抱き抱えようとしては止めている、むき出しの魂に触れるとダメージを与えてしまうからだ。


「クリス、最後に家族全員で会えて良かった」


「……え?」


「私達の魂は疲弊して弱っている、邪神の魂が無くなっても数日しか持たないだろう」


「ウソ……ウソでしょ?」


「クリス、子供達はあのまま消滅してしまうところだったんだ。

だがこうして話すことが出来た……それで十分じゃないか」


「あ、あなたは?あなたはどうなるの!?」


「俺も長くはないだろう、だから子供達と一緒に逝くよ」


「なら、私も一緒に!」


「クリス、君だけでも生きてくれ」


「嫌よ!もう十分生きた!あなた達と一緒に逝かせて!」


泣き叫ぶ学園長をビクターや子供達の魂が慰めるように周りを飛んでいる。

そしてマサミはその光景を呆然として見つめていると、後ろの方からガタガタと音がする。


振り返って見てみると液体で満たされた透明な筒の数が増えていた。

合計6個の筒の周りにはやはり増えた子竜が、白衣を着て眼鏡をかけて何かの作業をしていた。


何を勘違いしたのか鼻メガネや蝶々メガネをかけているのもいるが……それをマサミは驚き見つめていると、1頭の子竜が学園長達の方を見た。


「あれ?勝手に出ちゃダメじゃないですか、こっちに来るですよ」


そう言って手招きすると、魂は引き寄せられ筒の中に入っていく。

クリスティーナは慌てて追うが又も結界に阻まれて近づけない。




「あなた!イーナ、アレン、スコット、アーニャ、ナタリー!」


クリスティーナは必死に結界を叩くが微動だにしない、マサミも何かの呪文を必死に唱えているが結界にはなんの影響も無いようだ。


そして魂がそれぞれの筒、ポットに入ったのを見たドライトはーー


「術式を開始します。

この手術……ではないですね、この作業で肉体を再生させ、魂の修復を試みます。

終了予定は夜中の3時を予定……3時!?」


ドライトは何かに驚き作業の手を止めてしまった。


「ちょ、ちょっと!それで学園長の家族が助かるんでしょ!?

早くやりなさいよ!」


「助かる?夫に子供達が……?

お願いします!代償が必要なら私の命でも何でも渡します!

どうか……どうか家族をお助けください!」


「い、いえ、私は急いで帰らないとなのです!

明日!明日の昼頃に来ますからその時にやります!」


「何故なのですか!」


「夜中の3時に帰ったら母様に怒られるじゃないですか!

お尻ペンペンは嫌ですよ!?」


「「そんな理由!?」」


あまりにもな理由なのでマサミと学園長は呆然として「ちょっと、待つのじゃ!」話を聞いていたユノガンドが突然割り込んできた。


「なんですかいきなり、話はクライマックスなのですから大人しく聞いててくださいよ」


「……映像で見せるのじゃ」


「はぁ?」


「失った肉体を再生させて魂の修復も同時にする、邪神や魔神の寄生した魂を短時間で除去する技術も気になるがこちらも気になる!映像で見せるのじゃ!」


「映像記録なんか無いですよ?」


「ウソじゃ!これは実験も兼ねておるのじゃろう?ならお主が記録していない方が不自然なんじゃ!」


「色々あって記録し忘れたのです!うっかりなのですよ!」


そう言って記録していないと言うドライトだったがカーネリアが像を持って割り込んで来ると目をそらす。


「おい、これはなんだ?」


「踊り狂う龍の像です……」


「これ盗聴と盗撮できるって言ってただろ、見せろ」


「いやですよ!なんで新しい技術を開発するたんびに公開しなきゃいけないんですか!

絶対に嫌です!」


そう言ってドライトは絶対に見せないと言うが、シリカ達やユノガンド達は見せろと言う。

するとメルクルナやキャロリンにセレナがドライトに語りかけて来た。


「ドライトさん、他の世界にも魂に寄生された人達や亜神に神まで居るんです、お願いします見せてください!」


「お願いしますドライト様、私達にお見せください」


「ドライト、人助けの技術ならお見せなさいな」


メルクルナとキャロリンにセレナにまで懇願されたドライトは、シブシブ映像を起動させたのだった。

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