学園長達の過去
ふー、あいつ等は去ったようだな。
【しかし学園内から急に反応が無くなりました、警戒だけはしておいた方が良いかと】
ああ、だけどなんでまた急に来たんだろ?
【原因を調べておいた方が良いでしょう】
よし、リュージュさんは原因の調査をしててくれ、俺は今後の方針について話すわ。
【かしこまりました】
カーネリアが先頭に立ちドア蹴破ると、素早くシリカとアンジュラが部屋の中に入り込み、サルファが後方から支援する。
そして続いてカーネリアが中に入ると驚き固まっていた学園長達が武器を構えて誰何と言ってきた。
「貴様等、何者だ!ここは中立を保たれている学園都市の賢者の学園だぞ!」
大男がそう言い前に出てくるが素早くカーネリアが剣を喉元に突きつける、それを見た学園長が魔法を唱えようとするがシリカに拘束されてしまう、そしてローブを着た者達が「父さん、母さん!」と叫んで武器を構えるがアンジュラが武器を全て叩き落としてサルファの魔法で拘束される。
中に居た全員を拘束したか確認するためにシリカは部屋の中を見回して、
「ハァ!?あなたふざけてるの!?」
シリカが学園長の机のある方に叫んだのでサルファ達に、部屋に入ってきたキャロリン達もそちらを見ると……
学園長の机の上に台座に乗ったドライトが居た、台座には【踊り狂う龍の像】と書かれているがどこからどう見てもドライトだった。
手拭いを被り、フンドシをして半被を着た姿に両手でザルを持ち凄く良い笑顔で今にもドジョウをすくおうとしている姿でピクリとも動かないドライトが居たのだ。
それを見たカーネリアは大男から剣を下げて、ツカツカとドライトに歩いて行き――[ドガ!] かなりの勢いで殴ったのだった!
「……いでえぇぇぇ!」
カーネリアは殴った手を抱えて転げまわる、アレナムが「リア様!」と叫んで慌ててカーネリアに近づくと回復魔法をかけまくっている。
「シリカ様、殴っても壊れなかったって事は本当にタダの像じゃないんですか?」
「レイナ、リアはかなり力を込めて殴ったのよ?それでも壊れないだなんてタダの像の訳ないでしょ、ドライトが偽装してるのよ」
「ドライトさん、それで誤魔化せる気ですか?今なら許してあげますから返事をなさい」
「……プププ!」
アンジュラが笑ったのでシリカ達はそっちを見ると、学園長のクリスティーナが睨みつけてきて言い放った。
「それは夜店で買った珍しいだけの主に似た像です!あなた達は何の権利が有ってこんな事をしているのですか!」
「そう……なら壊してみますか」
シリカがそう言って剣を取り出すと本気モードになり剣を構える、学園長や捕まっている者達が「止めろ!」っと叫んでいるがシリカは剣を上段に構えて斬りつけようとした瞬間にアンジュラが止めに入る。
「シリカ姉様……それ、本当にただの像……ドラちゃん……私達が踏み込んだ時に……それを置いて逃げた……多分壊れない様に……色々仕込んでる……」
「へ?」
「ア、アンジェお前それに何時気がついたんただよ!」
「踏み込んだ時から……」
「分かってたんなら殴る前に言えよ!」
「いきなり殴った……リア姉が悪い……」
「お、お前な!」
カーネリアがアンジュラにつかみ掛るがサルファが止める。
「リアさん!今はそんな事をしている時ではありませんわ!」
「そうね、あなた達ドライトがここに居たのは知っているわ、そしてドライト以外に誰が居たの?答えなさい!」
「邪神や魔神……それに近いのが居たはずだ。
ドラ公がどうしてそいつらに関わってるのか知らねぇがお前等ならある程度は事情を知ってるんだろ?
全部喋れや!」
「皆……あれ……」
学園長達を尋問しようとしていたらアンジュラが突然に自分達が入って来た扉の方を指差した、そこにはソファーセットが有るのだが、そこのテーブルの上に先程まで無かった像が現れていた。
その像は手拭いをねじって頭に巻き、海苔眉毛に半被とフンドシを着けたドライトが何かを見つめる様に立っていて、左右にはステラとルチルが立ち、手に大漁旗と豊漁旗を持っている像だった。
「あれが……ドラちゃんだと思う……」
「……オラァ!」[ドゴォン!]
アンジュラがそう言うと、カーネリアが歩きより思いっ切りドライトを殴ったのだった。
「あんぎゃあぁぁぁ!フンドシが外れましたぁ!」
ドライトは殴り飛ばされてフンドシが外れてしまったが、そのままドアの外に飛び出そうとして外に居たセレナに抱き抱えられる様に捕まった。
ちなみにステラとルチルも像ではなく本物だったようで、ドライトを追って飛んで行きディアンに捕まっていた。
「で、どういう事なのか教えてくれるよね?」
シリカが正座させれらているドライトの前に腕を組んで立ち尋問している、セレナもドライトを睨んでいるがドライトの両脇に座っているステラとルチルがドライトの口を塞いで「「ひみつなの~」」っと言っている。
「ステラ、ルチル、抱っこしてあげるから母の所に来て」
「「かあちゃま~だっこ~」」
ステラとルチルが自分の側から飛んで行ってしまい、ドライトは「ああ~……」っと言って寂しそうにしているが周りからさっさと全部喋れと言われていると学園長達が叫んだ。
「あなた達!ドライト様に失礼ですよ!」
「そうだぞ、ドライト様に無礼を働くのはこの俺が許さん!」
そう学園長と大男が叫んでいる横で、ローブを着てフードを深く被っている者達も「「「そうだそうだ!」」」っと言い、シリカ達を罵り始める。
それを聞いたカーネリアとサルファが、
「なんだよこいつ等、ってか顔を見せやがれ!」
「そうですわね、人と喋る時は目と目を合わせるのが礼儀ですわよ?」
そう言いながらフードに手をかけようとすると、学園長と大男が「「止め(て、ろ)!」」っと叫ぶがその手は止まることなくフードを上げようとした瞬間!
「グルガアァァァア!!」
ドライトが凄まじい咆哮を上げた!
「サルファ姉、リア姉、それは許容範囲外です。
その手を放さないと本気で私と敵対したとして私も本気にならざるを得ません」
凄まじい咆哮を上げると同時に威圧と殺気をドライトが放つとサルファとカーネリアだけでなく、シリカにアンジュラとキャロリン達まで固まってしまっていた。
「ドライト、お止めなさい!あなたのお嫁さん達なのよ!
それにキャロちゃん達まで威圧してどうするのですか!」
セレナにそう言われてやっと放っていた威圧と殺気を止めたのだった。
「ううう……仕方ありません、話しますよ。
皆さん学園都市に到着した日の夜の事を覚えてますか?」
そうドライトが言うと、キャロリンが不思議そうに言ってくる。
「あの夜は確か……賢者の学園の夜景を見たんですよね?」
「その後直ぐに宿に帰って寝たんじゃなかったっけ?」
セイネがそう言うとドライトが頷きながら言う。
「皆と帰ったまでは正しいです、ですがその後私は賢者の学園に偵察に出たんですよ。
もちろん母様の許可をもらってです」
「12時までに帰りなさいと言ったのに、帰ってきたのは3時過ぎだったわね?
その事についても落ち着いたら話すと言ってたけど、今話しなさいな」
そしてドライトは何があったか話すために、メルクルナをスマドで呼び出して勝手についてきたユノガンド達とヒロやマサミに他の教師も来て聞いたのは学園長やヒロ、クミ、マサミ達の恐ろしい過去だった。
学園長、クリスティーナ・アン・シャープは元々地球のイギリスで300年ほど前に生まれ育った女性だった。
そして大男の夫であるビクター・ジェームズ・シャープと結婚して初夜の夜に邪神によって村ごとこの世界、ユノガンドに転移させられた。
夫は最下級ではあったが騎士だったので最低限の武具を持っていたが、一緒に転移させられた領民達は次々と死んでいき生き残ったのはクリスティーナとビクターの2人だけだったそうだ。
その後はなんとかユノガンドの言語を理解して働きながら5人の子供達を授かり、平和に暮らしていたのだが突然邪神の襲撃を受けて夫と子供達が命がけで撃退したとのことだ。
「命がけで撃退ってそこに居るじゃん」
カーネリアがそう言ってビクターとフード達を指差す。
「夫と子供達は死にました……正確には肉体が滅んだのです。
邪神との戦いで肉体が滅び封印の宝珠に魂を封じていたのです」
そして、賢者の学園を創立してなんとか夫と子供達を助けられないか方法を探っていたそうなのだ。
「その後はクリスが賢者や大魔導師と言われる方々に協力してもらい、なんとか私とだけは意思の疎通が出来るまでになりました」
そうビクターは言い、フードを被った者達を見つめる。
その後はメルクルナと出会いメルクルナもなんとかしようとしたそうだが、当時は下級神で弱かったためにクリスティーナは支援を断ったそうだ。
理由は邪神や魔神に居場所を知られるのを恐れてだった。
長年なんとか助けられないか調べていたが、夫も子供達も魂が弱まっている時にある出会いが会ったとクリスティーナは言う。
「最近、私は邪神や魔神がまたこの世界になにかしようとしているのに気がついたのです……
そこに居るヒロ、クミ、マサミと出会う事で」
ヒロ達の名前が出たのでシリカ達はヒロを見ると、代表してヒロが喋ろうとしてマサミ蹴り倒されてマサミが話し始めた。
「このバカだと話がこんがらがるから私が私達の事を話すわ」
そう言って話だした内容を聞いて皆は驚愕する、マサミ、ヒロ、クミの3人も魔神と邪神により日本と言う所から強制的に転移させられた者達だったのだ。
「学校、この世界でも学校で通じるのよね?学校で仲の良かった私達は放課後までおしゃべりしてたの、それで帰ろうとしたら……突然に辺りが真っ暗になってこの世界、ユノガンドに来ていたわ。
私達以外にも学校に残ってた生徒や教師達……100人以上いたと思うわ、そして私達の前に神々しい姿をした全能の神と名乗る物が現れて、この世界の危機が迫っている、その危機とは龍と言う邪悪な存在がこの世界を破壊しようとしているから救ってくれ、って言うのよ」
「そこは私達も同じなんです、特に私達は私達の宗教の中でドラゴンを悪魔と教わって来たので……たまたま見かけたドラゴンを攻撃してしまったのです」
そう言ってクリスティーナは何かを思い出したのか悲しそうにしている。
「正直私やヒロはすぐに信じちゃったわ……それで色々なスキルをくれてこの世界を救って欲しいって言われてね」
「俺も、俺の友達もそれを信じ切っちゃってさ……「ゴブリンだ!サクッとぶっ殺してやる!」なんて言ってレベル1なのにゴブリンの巣に突撃したんだぜ?その結果は……わかるだろ?」
そうヒロに言われてアンディ王太子達は顔をしかめた、ただのゴブリンならレベルが1の者達でも装備を整えていればなんとか勝てるだろう。
だが、巣となればゴブリンチーフやゴブリンソルジャーに他の個体も居たはずだ、そうなるとレベル1の者達ではなぶり殺しにされるしかない。
学園長、クリスティーナ達は100人以上がドラゴンから逃げて生き延び、ヒロ達は50人ほどがゴブリンから逃げられたそうだ。
だが、そこから安全な街か村などに着くまでにさらに半分以下に減り、言葉が通じないなど様々な理由により次々と死んでいき生き残ったのがビクター、クリスティーナにヒロ、クミ、マサミだったそうだ……
「んで、あんたが賢者の学園を創立して、そこにこの3人が転がり込んで来たのか……」
「邪神や魔神がよく使う手じゃの、高位世界から強制的に転移や転生をさせて他の世界に混乱をふりまく、嫌な手じゃ」
そうカーネリアとユノガンド言うと、シーンと静まり返る。
そこでメルクルナが気がついて言った。
「あれ?でも、なんで旦那さんと子供達が居るの?封印の宝玉に封じられてたんでしょ?」
「そこで我等の主であるドライト様のご活躍が有るのです!」
そう言って、クリスティーナが顔を上げて嬉しそうに語りだした。
ドライトとの初めての出会いを――
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