暗躍する者


「大変です、いくら連絡してもドライト様が出ません!」


「後1つで……コンプリート……お宝フォルダに……入れとこう」


「ア、アンジェ様、それよりもドライト様を探さないとです!

コンプリートは探しながらしましょう!」


「キャロちゃん大丈夫……そのうち見つかる……」


「ドライト様……ドライト様に何かあったんじゃないかと私は心配です!」




「それでクミさん、ドライトを何時頃見かけたのですか?」


「はぁ、今日の試験が始まって少ししたら居ましたね、売店に」


「「「売店に!?」」」


「ええ、なんか慌ててたみたいでフライドチキンを買ったら飛んで行ったわ」


「「「は、はぁ……」」」


するとクミの同僚のアイラが言う。


「うちの売店と食堂は美味しいって有名なんですよ!

それで、その子竜なら半月位前からだったかしら?見かけるようになったのわ」


そう言ってアイラは同僚達を見回す、同僚達は「そうだな」「確かその位だったはず」と、言っている。


「だけど不思議だよな?

学園長もマサミも龍は大嫌いだったはずなのに」


ヒロがそう言った瞬間に辺りは凍りつく、シリカ達が凄まじい殺気を放ったのだ!


「どう言う事かしら?詳しく聞きたいわね」


「ヒィ!な、何でも話しますから殺さないでください!」


「あ、姉御!落ち着いてください!」


「ま、待って!詳しくは私達も知らないのよ!」




クミは半泣きで説明し始めた、ヒロ、クミ、マサミにアイラの4人は冒険者として活動していたのだが、アイラを除く3人が拾われる形で学園に就職したそうなのだ。


その後に給料が良いと知ったアイラが学園に来たそうなのだ。

そして4人で冒険者をしてた頃からマサミは龍を毛嫌いしていた、それが学園に就職してさらに悪化したそうなのだ、原因はどう考えても学園長のクリスティーナなのだが2人がどうして龍を毛嫌いしてるのかまでは皆は知らないとの事だった。


「それで龍の眷属である竜やドラゴンも嫌ってたのよ」


「だけどさ、この前見たんだよ。

食堂でマサミが灰色の子竜にフライドチキンを食べさてあげてるところを……」


「ああ、あの時はビックリしたよな?

その後に学園長も来て学園長も参加したのには天変地異の前触れかと思ったわ、俺」


クミ、ヒロ、バイアーがそう話していると、アイラとストスも話し出した。


「そう言えばあの男達が来てからだよね?学園長とマサミの態度が変わったの」


「ああ、そうですね……しかしあの男達は本当に何者なのでしょうか?

学園長は夫と子供達だと言ってますが」


2人の会話を聞いたサルファが聞いてくる。


「あの男達?」


「ええ、灰色の子竜を始めて見た頃から学園長の側に居るようになったのてすが、身長が2m以上はある大男とローブを着てフードで顔を隠した者達が5人居るのですが、大男を夫とローブを着た者達を子供達と私達に紹介したんですよ」


「でも、学園長が結婚してたとか子供がいたなんて聞いたこと無いよね?」


「ああ、俺とストスもソコソコ長く学園に居るが聞いた事がないし、かなり長く居る食堂のおばちゃんも驚いていたからな」


食堂のおばちゃんも驚いていたと言う重要な情報を得たシリカ達は、学園長に会いに行くことを決めたのだった。




そして校舎内に侵入をしたシリカ達は探索を開始した。

案内役はクミとアイラだった、ヒロやストスにバイアーは入試の試験官をしないといけないので、クミとアイラの2人になったのだ。


「とりあえずドライトの目撃例が多い食堂に行きましょう」


「シリカ様、学園長様に会いに行くんじゃないんですか?」


「レイナ、学園長は本丸です、いきなり本丸を攻めるのは愚か者のすることですよ?」


「なるほど、流石はシリカ様です!」


シリカとレイナはそう話ながら歩いていく、他の皆はとりあえずついていくと……


ドライトが居た、ドライトは何かを食べようとしているようだ。


「美味しそうです!美味しそうですよ!」


「おら!」[ゴス!]


「ギィャアァァァ!このカレーライスは甘口ですよ!?」


ドライトを見つけた途端にリアが軽く殴ったがほとんどダメージは無いようだ。


「リア、これは外れよ」


「へ?……こいつドライトヒロシ隊長かよ!?」


「今日は辛口の気分だったのに……まぁ美味しいから良いんですが……」


そう言ってモクモクとカレーをかきこんでいるのは、探検服を着たドライトヒロシ隊長だった。


「ちょっと、本体は何処なの?」


「知りません、私は学園に結界を張るように言われただけなのです」


「ならなんでご飯を食べてるのですか?」


「お昼ご飯です」


そうドライトヒロシ隊長は言うとカレーライスに向かいまた食べ始める、ドライトヒロシ隊長はもう何も答える気がないようだ。


「ここには居ないようね、ドライトヒロシ隊長はこの後どうするの?」


「せっかく張った結界が誰かに壊されたようなのでもう一度張り直しですよ。

まったく、誰のイタズラなのか困ったものです!」


そう言うと、ドライトヒロシ隊長はカレーライスを綺麗に食べて食堂から出ていった。


「あの結界張ったのあいつかよ……」


「だから私達でも壊せたんですわね」


「でも……隊長が居るって事は……ドラちゃんもどっかに居るはず……」


アンジェがそう言うとアレナムが言ってきた。


「リア様、クミ先生とアイラ先生が次に多く見かけるの売店だと言っています、そちらを探してみますか?」


「そうだな……シリカ姉、それで良い?」


「そうしましょう」


こうしてシリカ達も食堂を出て売店の方に向かったのだった。




「しっかしドラ公の奴は学園で何してんだろうな?」


「ご自分でなるべく近づかない様にっておっしゃってたのに」


「サルファ様、なんでドライト様は学園に近づくなとおっしゃったのですか?」


カーネリアとサルファが話していたのを横で聞いていたリティアが不思議に思い問いかけると、2人はしまったと言う顔をしてシリカの方を見る。

するとシリカはため息をつきながら「仕方ないか……」っとつぶやいてキャロリン達に向き直った。


「心配させたくないから言わなかったんだけどね、どうもこの学園都市……いえ、賢者の学園内部にちょっと特殊な人達が居るみたいなのよ」


「特殊な人達、ですか?」


「ええ、ドライトからも口止めされてるから詳しくは教えられないんだけど、どうもそれ以外に邪神や魔神の気配も有ったみたいでね?

ドライトはその探索をしてると思うわ」


「「「じゃ、邪神と魔神!」」」


「かなり反応が薄くてドライトも見つけられないし、正体がつかめないって言ってたけどね……」


「でも変ですわね?」


「サルファ様、何がですか?」


「ドライトさんの事ですから捜索や探索するなら絶対隠れてするはずですわ?

なのに食堂に堂々とドライトヒロシ隊長が居ますし、本体も何度か見られてると言う事は隠れて捜索していないと言う事ですわ」


「それによ、さっき言ってたけど学園に張られてる結界陣はドライトヒロシ隊長が構築したんだろ?

自分でやんないのも不思議だけど学園の関係者もドラ公の行動を黙認してるって事だよな、邪神や魔神がかかわってて学園長は龍嫌い、絶対に変だろ?」


「……あ!ドライト様は騙されてるんでは!?」


「「「!!」」」


「……いやいや、ないわよ。

ドライトが邪神や魔神を騙してるって言うなら分かるけど、ドライトが騙されるなんてないわ」


「「「ですよねー」」」


などと話しながら歩いて行くと売店が見えた、売店の前には学生や教師が居て色々買いこんでいる、だがドライトはどうやらいないようだ。


「居ないわね」


「そうですわね……他を探すかそろそろ本丸の学園長に訪ねてみますか?」


「サルファ様、その前に売店を見てみたいです、学生達や教師の方達が何やら買い込んでますけど良い物が有るみたいですし」


「そうですわね、ちょっと見ていきましょうか」


「やった!キャロ、アレナム行こう!」


「あ!ずるいでわよ!」


「待って!私も一緒に行く!」


セイネを先頭にキャロリン達が走って行くのをシリカ達は微笑ましく見ていたが、キャロリン達が売店を覗き込んで固まってしまったのを見て慌てて自分達も走って売店の中を覗き込んだ……そこには!


「忙しいですよ、忙しいですよ!」


ドライト大将がエプロンを着けて商品を並べていた。


「フン!」


無言でカーネリアが近づくと、ドライト大将のエプロンの結び目を掴んで持ち上げる。


「か、勝手に体が浮きました!ここは重力異常地帯だったんですか!?」


「こっちを見なさい」


「あれ?皆さんどうしたんですか?

装備やアイテムが欲しいんですか?なら直接総統に言った方が良い物が貰えますよ?」


「いや、お前はここで何してるんだよ?」


「ドラちゃん……何処にいるの……?」


カーネリアとアンジュラがそれぞれ質問するとドライト大将不思議そうに言ってきた。


「総統ですか?ドライト総統はセレナ様達と一緒に居るんじゃないんですか?

あと私は売店で学生や教師の方達に色々な物を売っているんですよ、ドライト総統が貯め込んでいる物品があまりにも多くなったので少し処分する事になって、捨てるのももったいないから売っているのです」


そう言うと体をブルブル振るわせてカーネリアの手から逃げ出す、そして商品を出したり並べたりし始めた。


シリカ達は声をかけるが「すいません、忙しいので後にしてもらえないでしょうか?」っと言われてしまい顔を見合わせて別の所に移動する事にしたのだった。




「しかし本当に何処行ったんだろうな?」


「それにしても隊長と大将を配置しているのもおかしいですわ?」


「指揮個体としてある程度独立して動けるのよね?」


「たぶん……たぶん、セイネ達が入学した後の事を……考えてる」


アンジュラの言葉にシリカとサルファにキャロリン、リティアが「あ!」と声をあげる。


「へ?どういう事?」


「キャロちゃんとリティアちゃんは分かったの?」


レイナの言葉にキャロリンが答える。


「私達が入学した後にすごし易いようにと、不埒な者達が学園内に入れない様に結界を張っていてくれているのですね!」


「たぶん……そう……でも、なんでコソコソやってるかが……分からない……」


そう話していると、セイネが曲がり角の先を見て小さく「あ」っともらした。


「セイネ……何かあった……?」


「アンジェ様、学園長室がありました」


「例の学園長が居るのかな?」


「多分居るんじゃないですかね?」


「あ!来た来た!ほら、あいつらがさっき言ったロープ着たやつらよ、5人全員いるわね」


アイラが答えた後に、後ろから覗き込んでいたクミが目で全員に合図を送る、シリカ達もこっそりと覗き込んでみるとフードを目深に被った5人組が学園長室のドアをノックしているところだった。

そして赤髪の大男が出ると全員中がに入って行ったのだった。




「あの人達がそうなんですか?」


「ええ、怪しいわよね……」


「クミ、チラっと見えたけどマサミも中に居るんじゃない?」


「うーん、居たとしても不思議じゃないわ、でも考えれば考える程おかしいわよね?」


「うん、マサミもだけど学園長の態度が急に変わったのあいつ等が現れてからだもんね」


「どういう事なのかしら?」


「もともと学園長って……こう言うと悪いけどもっとヒステリックだったのよ」


「うん、マサミもさ、何かに焦ってる……生き急いでる所があったのよね」


「あ、あのお2人がですか!?」


実際に会ったばかりのキャロリン達が信じられないという表情をしている。


「入試で会ったんだっけ?でも、本当につい半月位前に彼等が現れるまでは全然違ったのよ?」


「うん、私達もあの変化にはビックリしすぎて偽者め!って攻撃しかけたからね」


クミとアイラの言葉にキャロリン達だけでなくリア達も驚いていたが、シリカだけはローブを着た5人と大男を目を凝らして見つめていた。


そして5人が学園長室に入るとシリカは全員の背中を押して学園長室から少し離れたのだった。


「ど、どうしたのですかシリカ様?」


「レイナ、ちょっと黙ってて」


「は、はい!」


「なんだよシリカ姉?マジでどうしたんだ?」


「……サルファ、アンジェ、あなた達は眼で見た?」


「い、いえ、あまり力を使うと気取られるからと……」


「私は……軽く視た……あの人達、おかしい……」


「リア、あなたも視てたでしょ?どう思った?」


「へ?なんかフワフワしてるって言うのかな?アンジェの言う通り違和感って言うか変な感じはしたけど……」


「やっぱりね」


するとオズオズとアイラが聞いてくる。


「あ、あの何かあったんですか?」


「アイラさん、私達はちょっと変わった眼が有るの、それこそ神眼と並ぶような特殊なね……

そして私はその眼で見たのよ、そっちの3人よりも強くね」


「は、はぁ……」


「さっきリアも言ってたけど、フワフワしてて存在がつかめなかったのよ、私達の眼の力を考えるとあり得ない事だわ」


「あれ?でもシリカの姉御結構強く視たって言わなかった?」


「そうよでもそれでも分からなかったの、相手が私よりも強いとかならあり得るけど……彼等は明らかに違うわ、でも正体も何も分からなかったわ」


その言葉を聞いてサルファ達やキャロリン達は周囲を警戒し始める。


「存在が……希薄……普通ならあり得ない……」


「アンジェの言う通りだけど、ああいう事が得意な奴らが居るでしょ?」


「邪神に魔神共か……ぶっ殺してやるぜ」


「でも、奴らが居るとしたらドライトさんが反応しないのはおかしいはずですわ?」


「うん……とっくに殲滅してるか……捕まえてるはず……」


「だから変なのよ、取りあえずみんな気配を殺して学園長室の様子を見ましょう」


「「「分かりました!」」」


シリカ達にキャロリン達は気配を殺して力を抑え学園長室の前まで行くと中の様子を探り始める、クミとアイラはヒロ達を呼んでくる!と、校庭の方に向かって駆けて行った。




そしてシリカ達が中の様子をうかがっていると話し声が聞こえて来た。


「我が主よ、この後はどうするのですか?」


「フフフ……あの娘達が学園に入学すれば我が手の内に入ったも同然、ゆっくりと洗脳してくれるわ……!」


「しかし主よ、他の龍達の妨害が予想されますが?」


「ふん!あの者達はまだ気づいてもおらぬわ!

あ奴等が気がついた頃には娘等は我が手の内よ……フハハハハ!」


シリカ達は気がついた、何者かがキャロリン達を学園にわざと入れて洗脳するつもりなのだと……!

キャロリン達も何故テストがあんなにも簡単で実技試験が免除されているのかに気がつき戦慄している。

この入試は……何者かに仕組まれた罠だったのだ!


そしてシリカ達は頷きあうと完全武装になり、学園長室のドアを蹴破り中に突入したのだった!

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