集団戦試験も受けちゃえ!

やばい!やばいやばいやばい!


【ドライト様、結界が破られます!】


ううう!ど、どこかに逃げ込める場所は無いか!?


【そう言われましても……

あ!そこを左に曲がったすぐの右の部屋に!】


あそこか!しかし何でこんな事に!


【あなたが売店なんか寄ってるからでしょう!】


フライドチキンは死んでも放さんぞぉ!




キャロリン達は教師達と対人していた、冒険者の合図で始まってはいるのだが、ギャラリーの期待とは違い、お互いに立ち止まり動こうとしないのだ。


「なんだよ、優秀だって言ってたけど、あの嬢ちゃん達ビビっちまったのか?」


「ハハ、所詮はガキだし、貴族のお嬢様だからな!」


「バカ野郎、だからお前らは個人のランクがCでも、パーティーのランクがD止まりなんだよ!」


「な、なんだよ、どう意味だよアニキ?」


バカにしていた冒険者達を一括したのは、キャロリン達との集団戦の試験をしたくないと言ったパーティーのリーダーだった。


「いいか?対人だろうが魔物が相手だろうが初めて戦う相手、しかもどういった攻撃をしてくるか分からん奴に突っ込むのは死にたがりのアホがする事だ、まずはああやって距離を取って遠距離攻撃をしたりして様子見をするんだよ!

賢者の学園の試験でなんで遠距離攻撃が重要視されて、毎年必ず試験されるのか考えたこともねぇのか?マヌケ共が!」


バカにしていた冒険者達や他の入学希望者達は、冒険者達にアニキと言われている冒険者の話に聞き入っている。


「つ、つまり、アニキ、あの嬢ちゃん達は教師の力量や攻撃方法を見極める為に攻撃しないって事ですかい?」


「ああ、そう言う事だ。

しかし、あの嬢ちゃん達は深緑の鐘とも互角に近い戦いをしていたが、ますます腕を上げたな!

む?お前等、よく見てろよ?動くぞ!」




その冒険者が言うと同時にリティアが魔法を放つ、そしてキャロリンがワンテンポ外して続けて放つ、セイネは矢を連射してレイナは前に出て壁役になる、アレナムは様々な強化魔法を皆にかけ始めた。


それに対して教師陣も動く、ヒロとバイアーの肉体派が駆けだして、クミ、アイラがリティアの魔法を無効化する、そしてストスがキャロリン達に魔法を放とうとするが……ワンテンポ遅く放ったキャロリンの魔法がヒロ達に向かっているのを見て慌てて自身の魔法で打ち消す。




「うーむ、嬢ちゃん達は考えたな、上手い手だ」


「ア、アニキ、たんに魔法の打ち合いをしただけじゃないですか?」


「いいか、見てろよ?ヒロが孤立して囲まれるぞ?」


「え?」




レイナに向かって突進して行くヒロとバイアーだったが、そこに次々と矢が飛んでくる。

それをヒロは走りながら剣で叩き落とし、バイアーは速度を落として盾とバトルアックスで防ぐ。

そしてレイナの元にたどり着くかと思われた瞬間、レイナが後方に下がり始めた。


慌てて速度を上げて追いかけるヒロは気がついてない、自分に矢が飛んできていない事に、そしてバイアーがヒロに待つよう声をかけようとすると、矢と共に気弾が2つ飛んできた、慌てて盾で防ぐバイアーが見たものは、全力でヒロに向かって駆けているキャロリンとアレナムだった。


「そら、追いついたぞ?」


「……ハァ!」


[ガキン!]


レイナは振り向きざまに剣を振るがヒロに楽々と受け止められてしまう。


「逃げるのは止めか?ならこっちからもおぉぉぉ!?」


「セイ!ハァ!」


「とりゃああぁぁ!」


「ッシ!」


[ガンギン!ゴン!ドガ!]


「あ、あぶ、グェ!ギャアア!」


キャロリンが放った槍の2連突きをなんとか弾いたヒロだったが、続いてアレナムのメイスの攻撃を受け止めようとして、そのまま腹の辺りに一撃食らう、そして先ほどとは比べ物にならない勢いで放たれたレイナの斬撃をモロに食らう。


「おおお、いてぇな!じょ、嬢ちゃん達よくも[チュドーン!]ギャアァァァ!」


体勢を立て直そうとしたヒロだったが、止めに放たれたキャロリンの魔法で吹っ飛ばされ、落ちた先でピクピクしてから動かなくなる。




「な?

最初に後衛が魔法を撃ち合ったがその後直ぐにキャロリン嬢ちゃん、槍使いだな、あの嬢ちゃんとメイスを持った嬢ちゃんが走り出しただろ?

それと同時に弓の嬢ちゃんが連射してバイアーの足止めをする、で、バカなヒロは気づかないで剣士の嬢ちゃんを深追いして囲まれてボコられて終わりってこった」


「な、なるほど……」


冒険者達や入学希望者達は、経験豊かな冒険者の解説を聞きながら、キャロリン達と教師達の戦いを見つめていた。




バイアーはヒロがやられたのを見て慌てて下がろうとするが、動こうとするとセイネの矢が次々と飛んできて、中々後退できないでいる。


そこにキャロリンとレイナにアレナムが突っ込んできた。

まず、キャロリンが魔法を放つとバイアーの足元の土が1mほど隆起する、そして体制を崩したバイアーの元にレイナが走り込むと斬撃を放った、なんとか防ぎカウンターを放とうとしたが、そこにアレナムがメイスで殴りかかる。


それをバトルアックスで受け止めたが、キャロリンの槍で足をすくわれて転倒してしまい、囲まれてボコボコにされてしまった。




「こりゃ、嬢ちゃん達の勝ちだな」


「ヒ、ヒロ達だって優秀な冒険者だったのに……」


「いいわよ!レイナ、止めをさしなさい!」


「リティアさん!魔法を唱えながら前進よ!

キャロさんと同時にしかれば相手側の防御を突破できますわ!」


「やれ、アレナム!残りは後衛だけだ、接近戦に持ち込めば勝てる!」


「セイネ……ナイフに持ち変えて……えぐる!」


「な、なんだおめえら?」


「シリカの姉御!何時の間に!?」


何時の間にかシリカ達が来ていて、レイナ達を応援していた、その声が聞こえたのか、レイナ達の動きが良くなる。


そして、キャロリン達に囲まれてしまったクミ、アイラ、ストスは武器を捨てて両手を上げて降伏したのだった。




「シリカ様!」


「レイナ、よくやりました、ますます強くなったわね」


「サルファ様、見ていてくれましたか!?」


「リティア、素晴らしい魔力の練り方でしたわ」


「リア様!私の攻撃はどうでしたか?」


「メイスの一撃、良かったぜ!」


「アンジェ様!次はやってみせます!」


「……一撃……必殺!」


シリカ達とレイナ達がそれぞれのパートナーと和気あいあいと話しているなか、キャロリンだけがポツンと立っていた。


そして周りを見回して、ドライトの姿を探すが影も形も無い。

その寂しそうな姿に気がついたシリカが、声をかける。


「キャロちゃんどうしたの?」


「シリカ様……ドライト様はいらっしゃらないのですか?」


「それが全然連絡がつかないのよ、アンジェ見せてあげて」


シリカがそう言うと、セイネの頭を撫でてたアンジュラがスマドを取り出して、映像を映しだす。

そこに映っていたのは――


『ドライトです、現在所用ででる事が出来ません。

お詫びとして私の歌をお聞きください』


音声に続きドライトの映像が映し出され、流れた動画は海苔眉毛にフンドシ一丁で北の漁場を熱唱するドライトだった。


「全部で100パータンある……スーパーレアは……裸踊りらしい……まだ……出ない」


「スマドで連絡とろうとしたら、さっきの音声が流れた後に今みたいな映像が流れるのよ……」


「アンジェは何処からか情報を得たみたいでして、100パータン有るらしっくてね?」


「このバカ、ずっとスマドで連絡入れてコンプリートしようとしてやがんだよ」


レイナ達は呆然として、その映像を眺めているがキャロリンが不思議そうに言う。


「さっき連絡した時は繋がったんですが……もう1度連絡をしてみます」


そうキャロリンが言うと、スマドを取り出してドライトを呼びだしてみるが……


『ドライトです、現在所用ででる事が出来ません。

お詫びとして私の踊りをご覧ください』


と言う音声が流れた、次の瞬間!


「来た!……スーパーレア!……録画……録画!」


慌ててアンジュラが録画を開始する、そして映像が映し出されると、お盆を片手に1つづ持ったドライトが出て来て、股間を隠しながら小粋な三味線と笛の音に合わせて踊る映像だった。




「よし!とりあえずドラ公を見つけて殴ろう!」


「リア、お待ちなさいな、何者かが通信を妨害していたのが気になります。

先にそちらを調べましょう」


「ってかさ、そんな事できるの1人しかないんだけどね」


「ドラちゃん……なにか隠して……コソコソなにかしてる」


どうも通信妨害をしていたのはドライトらしいが、セイネが言う。


「アンジェ様、ドライト様がスマドのバージョンアップしたから、一時的に通信が混乱したって言ってましたよ?」


「それ……たぶん、ウソ……」


「そうね、今まで色んな機能を追加したり、大幅なバージョンアップした時も何の問題も無かったのに、急にそんな事が起きるなんて変よ」


「なんにしろ、ドラ公の奴探そうぜ!」


「そうですわね……」


シリカ達が学園内を探索すると言う事で、キャロリン達もついて行く事にしたが、そこに復活した教師のヒロが割り込んで来た。


「誰か探すらしいが、学園内を勝手に歩き回れると困る、入試中だし、本来は部外者は立ち入り禁止なんだ」


「え、えっと、ドライト様を探したいんですが……」


「ええっと、キャロリンだったか?そのドライトって言うのはどんなやつなんだ?

それに学園内に確実に居るのか?」


ヒロにそう言われて、シリカ達も困ってしまった。

学園内に居ると考えたのはシリカの勘なのだ、勘だけで本来部外者の立ち入りを禁止している学園内に入れろとは言いにくい、自分達だけなら良いがキャロリン達は学園に通うのだ、あまり変な事をしてキャロリン達の風当たりを強くしたくなかったからだった。


「うーん、困ったわね……姿は銀色、いえ多分偽装してるから灰色の子竜ね、大きさは1m位で……あ、アンジェさっきの映像見せてあげて」


シリカがそう言うと、アンジュラがまた映像を流す、今度は多数のドライト軍団が担いだ神輿の上で海苔眉毛に半被を着てまつりを熱唱するドライトだった。


「ノーマル……でも、これは中々出ないから……レアなやつ」


「アンジェ様、幾つ集めたんですか?」


「90……キャロちゃんがスーパーレア出してくれたけど……これみたいに……ノーマルとかでも中々でないのが……ある」


そう言われて、ショボンとしていると、キャロリンが言い出した。


「とりあえず、皆でドライト様に連絡してコンプリートしましょう」


セイネが真っ先にスマドを取り出して、他の皆もしょうがなさそうに取り出していく、それをアンジュラが嬉しそうに眺めながらドライトに連絡しているのをシリカ達は呆れて見ていた、そこに


「この子竜、見た気がするわ」


「え!?」


まさかの発言をした人物――クミを皆が見るのだった。

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