楽しい実験 リターンズ3

フフフ……ユノガンド様も皆もこの素晴らしい装置の虜だな!


【高く売れそうですね】


ああ、金や銀にレアメタルがガッポガッポ手に入るでぇ?


【やりたかったあの実験やあの研究も出来ますね!】


夢が広がるなあ!




「翌日にドライト様は約束通り来られて夫や子供達の診察をしてくれたのです」


「さらにキャロリン様や他の龍様方の祝福を持つ方に配られているという、この神器を授けてくれたのです!」


クリスティーナが両手を胸の前で握り、祈るように目をつぶって言い。

マサミはドライトが配っている7冊の本を取り出して皆に見せる。


ちなみに映像はまだ続いており、今映し出されているのは3時過ぎに迎えに行こうとしたセレナと宿の玄関で鉢合わせて、お仕置きされているシーンだった。


「あわわわ!ここは観なくても良いです!」


ドライトはそう言って慌ててスマドを止めると、ユノガンド達の前にパタパタと飛んでいく。


「どうでしたか?気になるところは有りましたか?」


ドライトがユノガンド達にそう問いかけると。


「気になるところだらけじゃ!」


「え?なんで魔道具だけであんな事が出来るの!?」


「魂の洗浄もそうだけど、完全に失った肉体をどうやってあんな短期間で再生させたのよ!?」


「普通は神々の力で封印なりして、安定した場所でゆっくりと時間をかけて再生させるものよ?」


「魂の定着化もそうよ!

一瞬で定着したけど普通はあり得ないわ!」


「ドライトさん、私が営業するから利益の50%を頂戴!」


ユノガンドと4神はこんなに簡単に出来るなんてあり得ない!と叫んでおり。

メルクルナはあり得ない事を叫んでいる。


「この駄神は何をズウズウしい事を言ってるんですか!

せいぜい利益の5%ですよ!」


「30%でどうよ!?」


「アホですか!10%です!これ以上は絶対に出しませんよ!?」


「なによ!古い付き合いだし私の顔の広さ知ってるでしょ?

そこも評価してよ、25%!」


「……20%です、これ以上は出せませんからね?」


ドライトがそう言うとメルクルナは一瞬、考えるそぶりをみせてから右手を差し出してきた。


そしてドライトも右手を出し……


「「 よよよい、よよよい、よよよいよい!

めで[バキ!ボコ!]てえぇぇい!? 」」


ドライトとメルクルナは指締めで契約の成立を祝っていると、セレナに殴られてしまった。


「か、母様!いきなり殴るなんて酷いですよ!」


「そうですよ!素晴らしい契約が結べたお祝いなのに!」


「だまらっしゃい!

力ある龍と最上級神にして管理神たるあなた達が、世の為になる物で商売をしようとは何事ですか!」


「そうじゃ!わらわも一枚噛ませるのじゃ!」




ユノガンドはエルナルナに呼びだされたレムリアとヌーマにお仕置きされている、その間に4神がドライトに詰め寄っていた。


「ドライトさん、良いですか?

世の中には多数の下級神や亜神に人々が邪神の魂に寄生されて苦しんでいます、それを助けようとは思わないのですか?」


「もちろん助けたいですよ!ですからこの装置を開発したのです!

……ただついでに少し私のお財布も助けるのですよ?」


「お財布を助けるのは大事よね!」


「ちょっとメルクルナ、あなたも来なさいな」


メルクルナはヌーマに連れられて行く。


「ドライトさん、邪神や魔神との戦いはまだまだ続くでしょう……しかしその装置があれば心休まり助かる魂が数多くの居るのです!」


「もちろんですよ!私もドシドシ討伐しまくって魂を集めて、あんな実験やこんな実験を……夢が広がりまくっちゃいますよ!

そしてこの装置でお小遣い稼ぎをして私の心も休めるのです!」


「おお……お小遣い……良い響きじゃ!心休まるのう!」


「ユノガンド、いきなり消えたと思ったらこんな所に!こっちに来なさい!」


流石に原始の神であるユノガンドだ、レムリアから逃げて来て話に参加していた、だがすぐに来たレムリアによって連行されていく。


「良いですか?

シャープ一家の様なケースは珍しくありません、あいつらはそうやって1人残して苦しむ様を見て喜ぶのです。

そんな家族を1つでも多く助けたい……私達の気持ちが分かってもらえますか?」


「分かります……分かりますよ!

子供達を復活させた時のクリスティーナさんを見ていて、私や母様に置き換えたら心が張り裂けそうでした!ですからそんな家族を1つでも多く私は救ってみせますよ!

ただ、お小遣いも欲しいのです、そんな私の気持ちも分かってもらえませんか?」


「分かる!分かるわぁ!

私もお小遣いは少しでも多く欲しいもの……そんな私の気持ちも分かるでしょ?」


「ちょっとメルクルナ!あんた逃げ足の速さがユノガンドに似て来たわよ!こっちに来なさい!」


どうやら最上級神になったメルクルナは、逃げ足の速さだけならユノガンド並みになったようだ。

まぁ、ヌーマを撒く事は出来ずにまた捕まってしまったのだが……


「ドライトさん……良いから装置を配布しろって言ってるのよ!

あとメルクルナ姉さんは私がお小遣いあげるから私とデートしよ?」


「ですから、お買い上げしなさいと言っているのですよ!

あと、メルクルナさんは自力で稼ごうとしているのですからお小遣いじゃないと思いますよ!」


「メルクルナばかりズルいのじゃ!わらわもお小遣いが欲しいのじゃ!」


「私ってばボーナスステージに突入しちゃった?ダブルお小遣いでウハウハよぉ~!」


「「あんたら大人しくしてなさい!」」


どうやらレムリアとヌーマは援軍を呼んだらしく、ガンジスとモリオンも居た。

そして4柱の龍神にユノガンドとメルクルナは連れられて行ってしまったのだった。




「ドライト……あなたは優しい子でしょう?装置を渡してお上げなさいな?」


「母様、何も超高額で売りつけようという訳ではないのです、原価に少し色を付けてもらえれば良いのですよ?

薄利多売と言うやつですよ!それにその利益で、もっと世の中のためになる装置を創ったり実験したりする使命が私には有るのです!」


「うーん?利益で新たな世の中のためになる装置を開発する為なのね?

なら、良いのかしら?」


ドライトの話を聞いたセレナが許可しようとするがシリカが反対しようとするが、


「セレナ様、ドライトは「シリカ姉……結婚資金……」大賛成です!

早速売り出しましょう!」


アンジュラの一声でシリカも賛成に周り、原始の神々や龍神達に売り出すことが決まったのだった。




そして、装置の説明や販売価格を聞くことになった、ちなみに4神は頭を抱えている。


「それでドライト?いくらで売るつもりなの?」


ガンジス達も興味深げに聞いていると、ドライトは洗濯機に598000円、培養ポットに398000円という値段を告げた。


「洗濯機の方が高いのね?」


「そうですね、両方とも普通の価格ですけど培養ポットの方が高いかと思ってました」


「というか円って何?」


セレナとシリカが価格の感想を言っていると、エルナルナが通貨の単位が分からないと苦情を言ってきたのでユノガンドの通貨単位のユーノと同じ1円が1ユーノだとドライトが教える。


「1円が1ユーノ……ん?物価とか考えたらえらい違いじゃない!」


エルナルナが少し考えて参考になら無い!と言っている。

ちなみに1ユーノが1銅貨になるのだが、その下に賤貨もある。


ユノガンドの通貨は


0、01ユーノ=1賤貨


1ユーノ=1銅貨


100ユーノ=1銀貨


1万ユーノ=1金貨


100万ユーノ=1大金貨


1億ユーノ=1白金貨


となっている、5人家族の普通の庶民が1ヶ月暮らすのに必要なのが3000ユーノ、30銀貨だと言われている。


なので円計算ではなくユーノ計算だと金貨4枚~6枚になり、庶民には手が届かない高級品になる。


「いや、売る相手は神々や龍族ですから……なんでこれを一般庶民に売らなきゃならないんですか……」


「それもそうか、でもそう考えるとかなり安いわね!」


「でも、なんで培養ポットの方が安いのかしら?技術的にもポットの方が難しいはずなのに」


エルナルナとメリルルナが話しているとアンジュラがボソッと言った。


「分身体……」


「ん?アンジェさん何か言いました?」


エルナルナには聞こえなかったようだが、メリルルナには聞こえた様で「そうか!」っと叫んでユノガンドやエルナルナに向き合い説明する。


「ユノガンド様、エルナルナ!ドライトさんの分身体を培養したのもあのポットなのよ!分身体の数も考えたら培養ポットの数も凄い有るはずよ?それを売るから安いのよ!」


「なるほどのぅ、数を造れば技術的にも確立されとるはずだし、価格も下がると言う事か!

……中古品かの?」


「失礼な原始の神ですね!技術的に確立されているから工場で自動的に生産できるので安いのですよ!

ユノガンド様の分だけ要らない技術とか鉄パイプ式タイマーを仕込んで高くしてあげましょうか!?」


そう言われて、ユノガンドはペコペコ謝って「定額で頼むのじゃ」と言っている。


「うーん、アンジェさん鋭いですね?誰か他に気になった事は有りませんか?」


すると装置を見つめていたサルファが言い出した。


「その装置だけじゃ、魂の洗浄も肉体の再生も出来ないのでわ?」


「「「へ?」」」


サルファにそう指摘されてエルナルナ達やシリカ達にセレナは思い出す……装置の起動前にドライトが何か魂以外の物を入れていた事に。




セレナも不思議に思いドライトに何を入れたのか聞こうとドライトの方を向くと――ユノガンドとメルクルナにドライトとアンジュラが車座になって何か話していた。


「ドライトさん、これなら確かに儲かるわ!ユノガンド様も営業するって事で30%でどう?」


「確かにのぅ、良いシステムじゃな!メルクルナ、半々で分け合おうぞ?」


「そうでしょうそうでしょう!

ユノガンド様も含めるならさらに販路の拡大が期待できますね、良いでしょう30%出しますよ!」


「ドラちゃん……ちゃんと貯金して……結婚費用に当てて……?」


どう考えてもアホな事しかしない面子なのでセレナは不安を感じ、そしてアンジュラが何かの冊子を熱心に見ている気がつき後ろからコッソリと覗き込むと、魂の洗濯機と培養ポットの付属品の説明と書かれている冊子だった。


「あ……」


それをアンジュラから取り上げるとセレナは冊子を読み始める。


「ええっと?

今回ご紹介するのは魂の洗濯機と生命体培養ポットです?」




この魂の洗濯機は他の者に寄生された魂の洗浄ができ、生命体培養ポットは滅んでしまった肉体を再生させる事が出来ます。


皆様もご存知だとは思いますが、邪神や魔神は自分の魂を他の魂に寄生させることができます、そしてその方法は様々です。


魂の一分を寄生させて本体が滅んだ後に寄生している宿主の魂と同化して完全に乗っ取るや、自分の魂を寄生先にまるごと移して食い尽くしてしまう等の方法です。


ただ、邪神も魔神も一瞬で乗っ取ったり食い尽くしてしまう事が出来る訳ではありません、時間をかけてゆっくりと侵食するのです。


そんな邪神や魔神の寄生に、原始の神々や世界の管理を任されている最上級神の方々、龍神に力のある龍達の方達の中にも自分の眷属神や加護を与えた者に被害が出ている方も多数いらっしゃるかと思います。


そしてそんな邪神や魔神の寄生、魂の汚れに頭を悩ませ困っている方々も多いいかと思います。


助けたいが世界の管理で時間が……


力のある眷属神と共に魂の洗浄と肉体の再生をしていたら、そのスキに世界を1つ滅ぼされてしまった……


等々の理由でなかなか助ける事ができない……どうすれば!?




そんなあなた方に朗報です!




我がドライト電器工業では長年の技術の蓄積と新技術の開発により、魔道具による魂の洗浄と肉体の再生が可能になりました!


この魔道具を使うことにより仕事中でも、食事中でも、睡眠時でさえあなたの大切な眷属神や加護者達の魂の洗浄と肉体の再生をすることができます!


煩わしかった魂の洗浄や肉体の再生を魔道具で――あなたの生活がより快適で豊になるように……ドライト電器工業株式会社。


※詳しいスペックや操作方法は各魔道具の紹介ページをご覧ください。


「素晴らしい商品です!」


「「 ……パンフレット?」」


セレナの横から現代日本からの転移組であるマサミ、ヒロ、クミの3人が覗きこんで見ていると、ヒロが何かに気がつきポツリと言った。




「あれ?これって……」


「どうしたの、ヒロ?」


「いや、これってプリンターと、おんなじシステムなんじゃないかな?って思ってさ」


「ヒロ、黙れ」


「はい!」


何かに気がついたヒロだったがマサミの一声で押し黙る、だがセレナは聞き漏らしておらず聞いてきた。


「ヒロさん?どう言うことか教えて?」


マサミに睨まれているので黙っていたヒロだったが、セレナがニコニコと笑いながら殺気を放つと土下座して話し出した。


「えっと、俺が元居た世界にコピー機、プリンターってのがあるんですけど……」


「知ってるわ、ドライトが作って見せてくれたわ」


「え!?えっと、その機械本体も安いんですけどインク、絵の具ですね、絵の具が高いんですよ。

企業の考えで消耗品で利益を出すってやつらしいんですが……」


「消耗品で利益を出す……」


その話を聞いたセレナや4神がドライト達の方を見るとーー




ドライト達は煙のように消えていたのだった!

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