入試を受けよう!


行ったか……


【ドライト様、何も問題は無いはずです、キャロリン様はやってくれるでしょう】


ああ、だが油断できないからな、何処かでシリカ姉達を撒くか分身体と入れ替わるぞ


【かしこまりました、しかし分身体だと気がつかれるのでは?】


何も長時間誤魔化す訳じゃない、短時間なら問題ないだろう、それに母様達はステラとルチルのために学園の幼稚舎にかかりっきりになっているはずだ、今がチャンスなのだ!


【確かに……それでは準備を始めましょう】




賢者の学園の入試に来たキャロリン達は受付を見つけたが、あまりの受験生の多さに驚いていると突然背後から声をかけられた。

そしてキャロリン達の目の前に現れたのは……


「ちょ、ちょっと!クリスティーナ・アン・シャープって言ったら……!」


「賢者の学園の創設者で……」


「大賢者の称号を持ってて……」


「生きる伝説と言われる存在ですわね……」


「それは良いとして、なんで私達は睨まれてるの!?」


生きる伝説、クリスティーナ・アン・シャープが突然に現れた事と自分達が睨まれている事き戸惑ってしまっていた!


「……あなたがキャロリン・ レムリア ・ジェード、ジェード王国の第2王女ですね?

そちらの方がアレクスの都市長の娘のアレナル・マクルイエ、その親友でトリア大司教やシスターセアースに鍛えられた秘蔵っ子のセイネ。

そしてウアスの魔導姫のリティア・ルドラ・ウアス、それにフシャス帝国の第……皇女レイナ・イム・フシャス、ああ、今はただのレイナでしたか?」


大賢者で学園長のクリスティーナ・アン・シャープは1人1人を睨みつける様に見ながら、確認する様に言ってくる。


「は、はい!生きる伝説と言われるクリスティーナ・アン・シャープ様ですか?お会いできて光栄です!」


代表する様にキャロリンが言うが、学園長はキャロリンを冷めた様に目を細めて見る。


そして――


「その様なお世辞は、要りません。

今回あなた達の元に来たのは、あなた達には別室でテストを受けてもらう為です」


キャロリンを見つめながらそう言うと、身をひるがえして歩き始めた。

キャロリン達は呆然として学園長の背中を見つめていると、


「テストを受けないのですか?私はそれでも構いませんが、よろしいのですか?」


っと、立ち止まり背中越しにキャロリン達に言い放ち、再度歩き始めるのだった。


そしてキャロリン達は慌ててその背中を追うのだった。




「ね、ねえ?」


「なによセイネ?」


「なんか私達嫌われてない?」


「セイネさんもそう思いますか?」


「気のせいかも知れませんが、キャロちゃんが特に睨まれてた様な気がしますわ」


「う!リティアちゃんもそう思った?」


「キャロ、あなた何したのよ?」


「ア、アレナムちゃん、私は何にもしていません!」


「ってか、流石に迫力あったわ……トリア院長よりも怖かった!」


「ちょっと、セイネちゃん、聞こえてしまいますわよ!

確かに怖かったですが……」


キャロリン達が何故に睨まれていたのか分からずに、コソコソと話し合っていると学園長はまた立ち止まり、キャロリン達に話しかけて来た。


「すいません、私は目が悪いのです。

何時もはメガネをかけているのですが、今日に限って見当たらなくって……」


そう謝って来た、どうやら顔を確認するために目を細めて睨むように見ていだけのようだ。

それを聞いたキャロリン達は慌てて謝るが、学園長は


「私、昔から目つきが悪いって言われてたのよね……

ああ、なるべく目を合わせない様にするから安心してね?」


そう言って、目を合わせようとしないので何度も謝り、やっと普通に話してもらえるようになったのだった。


「あの、ところでなんで私達は別室でテストをするのですか?」


「ああ……うちの学園には結構王族などの高貴な身分の方が来るのですが、流石にあなた達の面子は目立ちすぎますから」


「は、はぁ……」


「他の子達がテストに集中できないですし、あなた達も集中できないかもしれないでしょ?

それにレイナさんは、あまり目立ちたくないのでわないですか?」


「そ、それもそうですね」


「でも、学園長様が自ら出迎えてくれて案内してくれるなんて、光栄ですわ!」


等と話しながらキャロリン達は学園長の後について行く、そんな中でセイネだけは疑問の目で学園長を見続けるのだった。




『ねぇ皆』


『なに、セイネちゃん?』


『ちょっと変じゃない?』


『どうしたのよセイネ、何か不自然な所でもあるの?』


『アレナム、私達は目立ちすぎるから特別室でテストを受けるんでしょ?』


『そう言ってたじゃない?』


『セイネさん、何がおかしいんですか?』


『確かにさ、王族や皇族に都市長の娘って、豪華な顔が揃ってるけどさ……なんで私達だけなの?

他にも王族や王族に近い身分の人が居るはずでしょ?』


『……そう言えばそうですわね?』


『それにさ、なんで私もなのよ?私は王族でもなんでもない孤児だよ?皆のおまけみたいなものじゃない?』


『それは……』


『確かに変ですわね?』


『あと、決定的におかしいのは……なんで私の名前まで知ってるのよ?

さっきも言ったけど、私はただの孤児だよ?

それに、なんでレイナの事情まで知ってるの?絶対おかしいって!』


セイネにそう言われてキャロリン達も変だと思い始めたのか、学園長の背中を見つめて警戒し始める。


『あれ?』


『アレナムさんどうしました?』


『よく考えたら、別室でテストを受けさせるのに、わざわざ学園長が来る必要ないんじゃない?』


『それに皆様、いくらなんでもこんなに奥に行く必要はないはずですわ』


そうアレナムとリティアが言うと、キャロリン達はますます警戒する。


すると、学園長は突然立ち止まって振り返えり、キャロリン達を見ながらにこやかに言い放った!




「迷いました」




幸いにも、すぐに事務員らしい人が迎えに来てくれて、テストを受ける部屋に案内してくれる。


「おかしいですね?

特別来賓室はもっと奥だったはずなのに」


「学園長、特別来賓室は昔から校舎に入って直ぐです」


「あ、あの、学園長様は方向音痴なんですか?」


「いいえ、そんなこ「そうです、しかも筋金入りです」そんな!?」


セイネの質問に学園長は否定しようとしたが、事務員が肯定してしまう。


「何にしろテストの受付は済んでおりますので、来賓室でテストを受けてもらったら、お帰りになってもらって大丈夫です。」


そう事務員が言ってきたのでキャロリン達は帰りに何処に寄ろうかなど話しているが、セイネはますます不信感をつのらせたのだった。


「ここが特別来賓室です、ここでお待ちください。

……学園長、行きますよ?」


「私はここでテストの監督を……ちょ?あれぇ~!」


事務員は学園長を引きずって連れていく、それを見たセイネが皆を呼んで言う。


「やっぱり変だよ!

私達だけで入試をするのもだけど、受付なんて私達はしてないじゃん!」


「そうですわね?

何か思惑があってこの様な行動しているとしか思えませんわ?」


「ドライト様に連絡して来てもらう?」


「シリカ様にも連絡します」


「私もリア様に!」


そう言ってキャロリン達はそれぞれの龍達に連絡をしようとするが……


「シリカ様!」


「レ…イナ……?

な……これ、妨害され……」


「サルファ様、聞こえますか?」


「シリカ姉……こ……全然……」


「リア様?リア様!?」


「アレナ……こえて……クッソー……」


「アンジェ様、今何処に居るんですか!?」


「異常事態……すぐそっちに……ドラちゃ……連……」


シリカ達の声は少し聞こえるが、キャロリン達の声はシリカ達には届いていないようだった。


最後にキャロリンがドライトに連絡をするが


「ドライト様?聞こえますか?」


「どうしましたか?ちゃんと聞こえますよ?」


「大変なんです、シリカ様達と連絡が取れなくなってしまったんです!」


「ああ、スマドのバージョンアップしたんですよ。

一時的に通信が混乱したんじゃないですかね?」


「そうなのですか?

何にしろ、1度こちらに来ていただけないでしょうか?」


「はぁ……ちょっと用事があるんでそっちが片付いたらそちらに向かいますよ。

あ、テスト頑張ってくださいね!」


「あ、あの、ドライト様?ドライト様!?

切れちゃった……」


シリカ達は異常事態だと気がついたようだが、ドライトは用があるから後で行くと言われてしまう、そしてセイネ達は気がつく。


「ねぇ……なんでまだアンジェ様達は来ないの?」


「真理の探究亭で、お茶をしながらテストが終わるのを待ってるって言ってましたわね?」


「さっき連絡してから5分は経ってますね」


「リア様達にとって真理の探究亭からここまでなら10秒とかからないはずですよね?」


「……何かに妨害されて来れない?」


キャロリンの言葉に全員がハッとして自分達の装備を亜空間から取り出して、素早く身に着ける。

同時に部屋のドアがノックされて「どうぞ」っとレイナが言うと、先程の事務員と学園長が入って来た。




「お待たせ……ど、どうなさいましたか?」


この世界では珍しい黒髪黒目の事務員は驚くが、学園長は何かに気がついたように頷くと前に出てキャロリン達に言ってきた。


「先に実技試験がしたかったんですか?

筆記の準備しちゃったんで、すいませんが筆記試験からお願いします」


学園長がそう言ったので、事務員も「ああ……」っと言うとキャロリン達の前に素早く6枚の紙を置く。


「最初に名前や所属に種族、あと得意な戦闘方法や学科、知識ですね、それを書いていってください、分からない事はドンドン質問してくださいね?

ああ、その真ん中に置いた紙には書き方の見本です、それと皆さんの前に置かれている紙の上の部分に書かれている数字は試験番号になります、後で写しを渡すので大事に持っててくださいね?」


「は、はい……」


アレナムが警戒しながら返事をして書き込んでいく、他の皆もそれに続き書いていき書き終わると事務員に渡していく、全員分を受け取ると事務員はドアを開けて外に控えていた別の事務員に渡して別の紙の束を受け取り、キャロリン達の前にそれぞれ置いていった。


「まだ伏せたままにしておいてくださいね?

パンフレットを見ていると思いますが、今年の賢者の学園のテストは筆記が6、実技が4です。

ああ、あと監視員は私とこれがやります」


事務員の言う事を横でウンウン頷きながら聞いていた学園長は、これ呼ばわりされて目を見開いて事務員を見ている。

キャロリン達も驚き見ていると、事務員が皆を見て何かに気がついたように身形を直してキャロリン達に自己紹介をした。


「失礼しました、私の名前はマサミと言います、当学園の副学園長を勤めさせていただいております」


学園のNo.1とNo.2がそろって監視員をすると聞いて、キャロリン達はますます警戒するのだった。




そして同時にズッコケかけていた、いや、セイネはソファーからズルズルとずり落ちていっているし、レイナは[ゴン!]っとテーブルに頭をぶつけてしまっている。

キャロリンとアレナムも呆然としてテストとして出題された問題を見つめている、なんとか声を出したのは

リティアだった。


「あ、あの、これが賢者の学園の入試問題なのですか?」


「ええ、そうですが何か?」


「難しいかった?私が教えてあげましょうか?」


副学園長のマサミは困惑したようにそれが問題だと答えたが、学園長のクリスティーナはオロオロしながら答えを教えると言っている。

そして「学園長、それは流石にダメですよ」とマサミが止めているが、その後に「答えが解るように上手く誘導してあげましょう」っと言っている、いやそれもダメだろうとキャロリンが思っていると、復活したセイネが「と、とにかくテストを受けちゃおう」っと言って、テストに向かった。


キャロリンもテストの問題を見直してため息をつく。




言語問題・ユノガンド語で あ と書きなさい。     /100

 

数学問題・1+1-1=      /100


地理問題・港湾都市アレクスから学園都市までの馬車での移動日数を答えなさい。(誤差は100年までとする)       /100


礼儀作法問題・淑女の礼であるカーテシーのやり方を書きなさい。       /100


雑学社会問題・学園都市でも1、2を争う実力を持つAランクパーティー、深緑の鐘が深緑の森から持ち帰ったのは?       /100


宗教問題・ユノガンドの最高神メルクルナ様、そのメルクルナ様の名前を書きなさい。    /100




全部答えを書いたのか、セイネは焦点の合わない目で天井を見つめて、アレナムとリティアは頭を抱えている。

レイナはテーブルに何度も頭打ちつけていて、副学園長のマサミに「どうしましたか?調子が悪いのですか!?なら、私が答えを書いておきますので向こうで休みましょう!」っと、言われて更に頭を打ち付けている。

そんな皆の横で学園長のクリスティーナは、


「落ち着いてかかれば問題なく解けるはずです!

例えば宗教問題は問題の中に答えが隠されています、っと言うかモロに答えが載ってますからね?」


などと言っている。

問題を見つめ、その声を聞きながらキャロリン達は思った。




『絶対おかしいよ!』




っと……

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