学園都市編 ドライトさんのブートキャンプ ウサギちゃん乱舞


うーん、昨日ユノガンド様に言われた通り、オーク達はキャロ達には弱すぎて実戦訓練にならなかったな。


【そうですね、でもブートキャンプは続けるんですよね?】


キャロには強い子に育ってほしいんだ!


【もう、充分強い子になってる気もしますが?】


そうなんだよなぁ、なんであんなに強いんだろ?


【加護が無かった時にかなり努力していたようですが、ドライト様から祝福を授かった後も凄まじい努力をしていたみたいですよ?】


キャロは努力家だからな!


【なんにしろ、教育内容を見直しますね】


ああ、頼んだわ!




朝になり食堂に全員が集合して朝食が始まる、食べ終わり皆が一休みし始めたのを見てドライトはキャロリン達に話しかけた。


「キャロ、聞いてください。

これからは入試対策の訓練や勉強は私が見ます」


「ドライト様がですか?」


「そうです、昨日のオークとの戦闘でキャロ達の実力は分かりました。

そこでこれからは、私が教官となってあなた達を鍛えます!」


俺が高らかにそう宣言すると、シリカ達が言ってきた。


「そう、もちろん私達も参加させてもらうわよ?」


「私だけで充分ですよ?」


「いいえ、絶対に参加させていただきますわ」


「私が信用出来ないのですか?」


「うん、出来ないな」


「な!?失礼な、アンジェ姉さんからも言ってください!」


「セイネは……私が守る……!」


「くぅ……母様!私に任せるべきですよね?」


「そうね?ドライトに任せましょう」


「そうですよね!母様!」


「私達はドライトの監視をしてましょう」


「母様!?」


こうして、俺が指導教官になり、他の皆が俺の監視役になることが決まったのだった!




「と、言う事で、私が先任訓練教官のドライトハートマン最上級曹長である!

どっかで聞いた名前だ?

それは他人のそら似だ!やつの名前はハートマン1等軍曹、私の名前はドライトハートマン最上級曹長である!

覚えておけ!ひよっ子共が!」


「……それ、お前が集めてる映画とか言うのに出てくる名前じゃねえか?」


「あの異界の知識ライブラリにあるやつね」


「リアとアンジェがハマって観てたわね?」


「動くやつはベトコンだ……動かないやつはよく訓練されたベトコンだ……つまり俺もお前も……全員ベトコンだ!」


「そんなセリフだったっけ!?」


「「あさにかぐ、たまごやきのにおいはさいこうだ!」」


「ステラ、ルチル、それは別の映画です、それに彼は中佐殿ですよ!」


「ドライト?あなたは妹達に何を見せてるの?」


セレナがそう言って、ドライトに1歩近づくとドライトは慌ててキャロリン達に向き合った。




「なんにしろこれからは私がお前達を鍛える!

いいか?お前達はなんの価値もない豚共……」


ドライトがキャロリン達に豚共と言うと、シリカ達がドライトを殺気のこもった目でみるが、ドライトは視線を気にせずキャロリン達を順番に見ていき言い換えた。


「お前達はなんの価値もないウサギちゃん達だ、ウサギちゃん達は「ちよっと、ドライトさん?」煩いですね、なんですか?」


横でユノガンド達と聞いていたメルクルナが言葉を遮った、ドライトは大事な所なのに何だと聞き返す。


「いや、ウサギちゃんって何よ?

そこは豚共でしょ?雰囲気が台無しじゃない!」


「鍛えていてスリムなキャロ達に豚だなんて言葉は似合いません!

イメージ的にも可愛いウサギで良いのですよ!」


そうドライトが言うと、メルクルナもそれもそうかと引き下がる。


「ええっと、続きは……ああ、お前達はなんの価値もないウサギちゃん達だ!

ウサギちゃん達は厳しい俺を嫌う!だが憎めば、それだけ学ぶ!

そして、学べば学んだだけ強くなる!

具体的に言うと中級神位まで!」


ドライトが言い放つとシリカ達もそれぞれの祝福者を見つめながら言う。


「「「「そして私達の眷属神に!」」」」


「大丈夫よ、レイナ。

ドライトが力を授けてくれるわ!」


「もちろんドライトさんだけでなく、私達も手伝いますわ!」


「なんなら、上級神になっちゃえ!」


「そして……最上級神に……!」


メルクルナやユノガンドは両手を叩いて「おめでとう、仕事を手伝って!」と言いながら祝福?している。

セレナと4神達が呆れながら止めようとすると、ドライトが止めに入った。


「何を言ってるんですか、そんな事しませんよ」


「ドライト、ちゃんと言ってお上げなさい」


「中級神になってもらって体を慣らしてからじゃないと、ステータスが落ちちゃうじゃないじゃないですか」


こうして、セレナにドライトとシリカ達が怒られて、普通に試験対策をする事になったのだった。




「まぁ、学力の方は問題ないんですよね、セイネがこの中では一番学力が低いですけどトリア大司教さんやセアースさんにシッカリ学んでますから、賢者の学園内でも上位に入る学力がありますし」


「では、勉強は自習で良いんですか?」


「ですね、あとは私が某ルートから手に入れた過去問をやってもらいます」


「某ルートって何処から……」


「神界メルクの管理システムから過去のデータを見て統計を取った物なので、かなりの高確率で過去問から問題が出るはずです」


「流石はドライト様です!」


「セイネちゃん、私達だけズルしてるような物ですから褒める所じゃないと……」


「キャロ、使える物は何でも使って合格しなきゃ、皆で通えないよ」


「ドライト様、どんな手を使ってでも私達を合格させてください。

なんなら、多少の脅迫行為も許可します」


「キャロちゃん、人格変わりすぎよ」


「じゃあ、アレナムちゃんは誰かが落ちても良いんですか?」


「私達なら大丈夫だって」


「アレナムさん、油断大敵ですよ?

どっかの世界では、勝っても慢心するなと言う教えも有るそうですからね?」


「と言うか、私は実技試験の方が問題かと?」


「実技試験って何があるんだっけ?」


そこで皆が考え込んでしまった、試験勉強ばかりしていたが賢者の学園の入試には実技試験があるのだ。


「ええっと、それなら大使館の練兵場に行かないとですね」


「ドライト様、真理の探究亭の中庭ではダメなのですか?」


「普段の訓練だと中庭をお借りしているのですが……」


「うーん、セイネとアレナムは問題ないんですがキャロにリティア、レイナもですかね?この3人は問題ありなんですよ」


ドライトがそう言うと、言われた3人は顔を青ざめたのだった。




「なんだ、私達の攻撃力が高すぎるのがまずいのですか」


「3人が落ちちゃうんじゃないかって、心配しちゃったよ~」


ドライト達は練兵場に向かいながら話し合っていた。


「ええっと、これと同じ物だと思うんですが、これを使って攻撃の正確さを調べるのですよ」


ドライトがそう言って取り出したのは小さな的だった、そしてドライトが言うには小さな的に攻撃をして中心に近ければ近いほど得点が高くなるとの事だった。


「ただ、これを破壊したり範囲魔法で全体にダメージを与えたら減点になるんですよ」


するとレイナが聞いてくる。


「ドライト様、点数が低くなると言うなら分かるんですが、何故減点までされるのですか?」


「このテストは乱戦になって時の能力を調べるというものなんです、この間のオークとの戦いの時にセイネが撹乱のためにオークの集団の中に入り込みましたよね?」


「はい」


「あの時、リティアが放った範囲系の魔法で混乱したオーク達がバタバタと倒していましたが……あそこに味方が居たらどうなると思いますか?」


「え……?」


「あそこに居たのがセイネだからリティアの攻撃のタイミングや範囲を理解して回避していましたが、別の人達、初めて会った人だったらセイネの様に呼吸を合わせられましたか?」


「な、なるほど!」


ドライトに言われてキャロ達は理解した、冒険者でも兵隊でも隣り合って一緒に戦うのがお互いの事を理解しあった仲間とは限らない事に。


「リティアとキャロは、魔力の絞り方やファイヤーアローみたいな単発魔法の複数展開とその制御を習えば良いのですが、問題はレイナなんですよ」


「わ、私ですか?」


するとシリカがドライトとレイナの間に割って入って来た。


「ちょっとドライト、私のレイナは優秀な剣士なのよ?その的の中心を狙えば良いのでしょう?

突きで簡単に中心を貫けるわよ!」


そう言われて、ドライトはキャロの頭の上から全員を見回して聞いてきた。


「あの、まさかとは思いますが賢者の学園の入試内容が書かれたパンフレットを、皆見てないんですか?」


そう言われてシリカ達だけでなく、キャロリン達まで顔を背けたのだった。




「え、遠距離攻撃じゃないとダメ!?」


「ちゃんとパンフレットを見てくださいよ……詳しい内容までは載せていませんが、今年の試験の種類や大体の内容が載ってると言ったじゃないですか」


そう言ってドライトが取り出したのは、真理の探究亭に宿泊する事が決まった夜にシリカ達とキャロリン達に配った物と同じパンフレットだった。


「良いですか?

この攻撃の正確さを調べてるテストは、乱戦時などの範囲攻撃のしにくい時に、的確に敵に対してのみダメージを与えられるかを調べるものなのです。

つまり近距離に行って剣で斬りつけるのではなく、遠距離から味方の支援をする事が出来るかのテストなんですよ」


そう言われてレイナとシリカは真っ青になる、レイナは剣士としては優秀で剣聖の称号を持つティナも将来は私以上の剣士になれる可能性を秘めていると、太鼓判を押しているが、剣以外だと魔法や弓などは並以下なのだった。


「ドライト様、解決方法はあるんですよね?」


「このドライトハートマン最上級曹長に任せるのですよ!」


そんな話をしながら練兵場に着くと、ティナとセアースがアンディ王太子とマンフレッド魔導士長を相手に模擬戦をしている場面にでくわした。


「皆さん見てみなさい、上手くそれぞれのパートナーと連携をとっていますし、セアースさんやティナさんも遠距離攻撃をしているでしょう?

一流の冒険者や精鋭と言われる兵士達は近距離も遠距離もある程度はこなせるのですよ、だからこそ一流や精鋭と言われるのです」


「ドライト様、冒険者で壁役と言われる人達は遠距離攻撃が苦手って、冒険者に聞いた事があるんですが?」


「セイネ、それはあくまでも苦手と言うだけです。

そうですねあちらにこの前オーガやトロルの効率的な倒し方を教えてくれた人達が居ますから、あの方達の壁役の方に見本を見せてもらいましょう!」


ドライト達がやって来て、冒険者達に向かって行くのを見たアンディ王太子達も何事かとゾロゾロとついて行き、オーガとトロルの退治の仕方を見せたベテラン冒険者のパーティーでAランクのパーティー、深緑の鐘に声をかけたのだった。




「遠距離攻撃を見せてくれ?

ああ、賢者の学園の入試対策か……でも、お嬢ちゃん達なら問題ないんじゃないか?」


ドライトに頼まれたがそう言ってきたのは深緑の鐘のリーダーであるバドだった。


「バド!高貴な方々なんだから喋り方に気をつけなさい!

失礼しました、ではアードに……」


「サリアさん?でしたね、とりあえず皆さんのランクと名前を教えてください、あと私達が見せて欲しいのはバドさんの遠距離攻撃なのですよ」


「お、俺ですか!?痛て!サリア、分かったから!

お、私がこのPT、深緑の鐘のリーダーのバドでBランクです、壁役で大盾と戦斧を使います」


「私の名はサリアと言います、斥候役でBランクです」


「ジスです、狼人族で剣士をしています、Aランクです」


「Aランクの魔法使いでアードです、回復魔法も多少なら使えます」


「Cランクの神官戦士のユシルです、前衛もします」


そう言って、名乗るとキャロリンが不思議そうに聞いてきた。


「Aランクのジスさんやアードさんがリーダーではなく、バドさんがリーダーなのですか?」


そう言われて深緑の鐘の面々は顔をしかめたが、キャロリンはドライトの方を向いて聞いていた。


「ああ、それは冒険者に登録する時にでも説明しようかと思ったんですが……単純に登録カードのシステムのせいですよ、クエストの成功数と倒した魔物の数のポイントで決まるので、どうしても攻撃役にポイントが多く入っちゃいますからね」


「なるほど……この方達の中で一番強いはずのバドさんがBランクなのはおかしいと思ったんですが、そう言う事なんですね」


深緑の鐘の面々は今度は驚いた、キャロリンが自分達の中で一番の手練れを見ただけで見抜いたからだ、そして周りにいる少女達も


「あの盾役の方は本当に厄介ですわね、範囲魔法もあまり効果なさそうですわ」


「私達なら、私とアレナムさんでバドさんを崩してからじゃないと倒せませんね」


「レイナ、アタッカーのあなたと壁役の私がバドさんに集中したら他の方々にリティアかセイネがやられちゃうわよ」


「うーん、向こうの斥候役の人強いわ、私1人じゃ、もって10分かな?」


「私達で連携しないとですけど……連携も深緑の鐘の方々の方が上手そうですよね」


などと話しているのでますます驚くのだった。




「うーむ、この間のオークとの戦闘でも思ったが、本当に優秀なお嬢ちゃん達だな……

それで、私の遠距離攻撃ですか?」


「ええ、今年も攻撃の正確さを調べるテストがあるのですよ」


「ああ、あのテストですか、それでは一応お見せしますよ」


そうバドが言うと、腰に括り付けてある袋、魔法袋から大型のクロスボウを取り出すとあっという間に装填して放った。

そして放たれた矢は、そのまま演習場の的に突き刺さったのだった。


「こんなもんですね、俺はほぼ壁役なので下手なんですが」


そうバドは言うが、キャロリン達は驚いている、今居る場所から的までは150mはあるのだから。


「良いクロスボウですね、色々と付与もされてるいるのですね」


「ええ、撃つ時や装填する時は私も自身を強化しています、クロスボウには強化と硬化が、矢には命中などがかけられているんです」


「冒険者用の装備ですね、軍では金がかかり過ぎて用意できませんね」


「そうですね、ただお嬢ちゃん達の参考にはなっても、試験の対策にはなりませんね」


「付与等は禁止でしたね……自身の力だけでと言う前提がありますからね」


「ええ、付与等してなかったら俺の腕じゃ10発撃って1発当るかどうかですね」


「いやいや、ありがとうございました!

あ、あなた方はこのまま少し残っててください、後で報酬がありますので」


ドライトがそう言うと、バドが「この程度で報酬など……」と言うが、「サリアが今後の為に受け取りなさい!」と言って怒っているが、ドライトが続けて言う。


「いや、他にもキャロ達と模擬戦してもらったり色々と見てもらいたいのですよ、それも含めてですので遠慮なく受け取ってください」


っとニコリと笑いながら言い、アンディ王太子の側に行き何かを耳打ちしてからキャロ達の元に行くのだった。




「どうでしたか?あの方達クラスになるとあのレベルの事が出来るのですよ?」


「……私の修行不足でした……落ちたら私に罰を与えてください」


「レイナ!?ドライト、何か解決策が有るって言ってたでしょ!早く教えなさい!」


そうシリカが言いながらドライトの首を絞める。


「首を絞められながらだと教えられませんよ!にゃにゃん!」


[ドガァン!]


ドライトはどうやってかシリカの手から抜け出すと、爪から斬撃を、いや突きを放った。

放たれた突きは、バドの放った矢が刺さった隣の的に突き刺さると、的が粉砕されたのだった!


「ちょっと威力が強すぎたにゃ、にゃにゃにゃ!」


そう言いながらドライトがさらに3回突きを放つと、今度は爆発する事なく的の中心を射貫く。


バド達や衛兵達も驚いているがアンディ王太子達にシリカやキャロリン達は不思議そうに見ているだけだった。


「ドライト、私は解決策って言ったのよ?

レイナは魔法が少し苦手なんですから、レイナでも試験までに出来る方法を教えなさい!

嫌だと言ったら……本気で首を絞めるわ」


「シリカ姉、怖いですよ!っと言うか、これだけ放っても気がつかないんですか?」


ドライトがそう言うと、メルクルナがジッと見ながら言う。


「こ、このデブ龍、魔法使ってない……どうやってあの爪斬撃を防ぐか考えてたけど、魔法じゃないならどうやって防げばいいのよ!

デブ龍、言え!ユノガンド様と私達に全部喋りやがれ!」


メルクルナがそう言いながら神剣を取り出してドライトに切りかかり、逆に爪斬撃で神剣をバラバラにされて逃げ回っている。


「ううむ……本当に使っとらんのぅ」


そう言って、ユノガンドやエルナルナ達は目を凝らして見ていたが、メルクルナがユノガンドの元に逃げてくると同時に飛んできた斬撃が地面に当ると……


[チュドーン!]


爆発して盛大に吹き飛ばされたのだった。


「今のが気功法での攻撃ですよ、魔法とは違い体内の気、循環している生命力に魔力や魔素を合わせて攻撃しているのです」


「見本でわらわ達を吹き飛ばすではない~」


「この人でなし~」


「なんで私達まで~」


ユノガンドとメルクルナ達が何か言って、吹き飛んでいるがドライトは完全に無視をして続ける。


「この気功法と魔法の違いは、魔法が魔力を体外の、空気中の魔力や魔素と合わせるのに対して、気功法は自身の持つ生命力と体内の魔力や魔素を合わせて使うのです。

ちなみに使い方次第では剣に這わせたりできますので、便利ですよ!さぁ、レッツトライ!」


「いや、もっと詳しく教えてもらわないと無理だって!」


そうシリカが叫んだので、ドライトが仕方なさそうにレイナの手を取るのだった。




「ドライト様?……ん!なにこれ!?」


「それが私の生命力ですよ、流れているのが分かりますか?」


「は、はい!凄い……!これが生命の流れ……」


「じゃあ、私の流れと沿う様に流れている自分の生命力を探してください?」


そうドライトが言うと、レイナは静かに目をつぶり何かを探している様になる、そして周りも静まり返っているなか、5分ほど経つとドライトが静かに手を放した。


「……見つけたようですね、レイナ、それをコントロールしようとしてはいけませんよ?

自分の生命の流れなのですから、コントロール出来て当たり前なのです。

逆に魔力や魔素をどう上手く混ぜるかに意識を集中させるのですよ?」


ドライトがそう言いながら振り返ると、キャロリンを先頭に全員が並んでいた。

そして、キャロリンがジッとドライトを見つめると……


「わ、分かりましたよ、全員に教えますよ!」


結局この日の訓練は気功法の習得に時間を取られてしまい、夕方になったのだった。


ちなみに、深緑の鐘の面々にも教えたのだが真っ先に覚えたのはバドだった。

キャロリン達が何故か聞くと、前衛職で優秀な人達は大体無意識で使っているので覚えやすいとの事だった。




「じゃあ、最後にキャロ達と深緑の鐘とで模擬戦して終わりますかね」


「えええ!む、無理です、勝てませんよ!」


「いや、キャロ、勝てなんか言ってませんよ?

そうですね、日が暮れ始めるまで後30分程ですかね?それまで耐えれば良いとしましょう」


そう言うと、話はまとまっているのか深緑の鐘の面々は準備万端だった。




そして――――「始めぇ!」




アンディ王太子の号令で模擬戦が始まったのだった。


今回もリティアとキャロリンが先制攻撃として魔法を放つが、アードの魔法により2人の魔法は相殺されてしまう。


レイナとセイネが前進せずに、リティアとキャロリンの周りで防備を固めていると、バドとジスが前進してくる。

2人を迎撃しようと、リティアとキャロリンが魔法を唱え始めるがそこに矢が飛んできて、慌てて回避したためにキャロリンの魔法はキャンセルしてしまう。


見ると、サリアが前進しつつ矢を放っていた、その矢は正確にリティアとキャロリンを狙っている。

それを見たキャロリンはリティアの前に出ると槍を取り出して矢を弾く、そしてリティアの魔法が完成すると同時にアードの魔法攻撃が放たれてリティアも仕方なく完成した魔法で相殺する。


セイネとレイナがサリアに向かおうとするが、そこにバドとジスが立ち塞がり妨害される。

セイネとレイナが素早く連携してジスに攻撃を仕掛けるが、バドに楽々と受け止められてしまい、逆にそのスキを突かれてジスに攻撃されてしまう。


そこにキャロリン達に強化魔法がかけられる、そして魔法をかけたアレナムが前衛に加わろうと、前進を開始すると深緑の鐘にも強化魔法がかけられる。

見てみるとユシルが前進し始めている、どうやら彼女が全体に強化魔法をかけたようだった。




「拮抗してるな、ドライト」


「見た目だけですよ、アンディ王太子様」


「うーん、もって後5分かしら?」


「ティナ様、セイネ達は良くやってますわ、深緑の鐘と言えばAランクのパーティーとして有名なのですから」


「セアースさん、それでも私達が鍛えているのですからもう少しもって欲しいわ、せめて10分は」


「そうですね、ティナ様……それにドライト様は日が暮れ始めるまで耐えれば良いと言っていたのに前進しましたから、そこも減点ですね」


「ちょっと、試してみますか……全員気功法を使うのです!」




ドライトがそう叫ぶとキャロリン達の動きが良くなった、対して深緑の鐘はバドとジス、この2人だけが動きが良くなる。


そして突然にリティアが詠唱しながらアードに突撃をした。


「マジックアロー100連発ですわ!」


アードは慌てて、結界を展開するがマジックアローの中に紛れ込んでいたファイヤーボールが地面で爆発した事で視界を奪われてしまう、そして―――


[ガツン]


「おおお?」


リティアがアードに接近戦をしかけた、リティアは杖を振り回して攻撃する、杖術をサルファから習っているのでリティアは接近戦も出来るのだが、キャロリン達は奥の手として隠していたのだ。


「ほ、本当に優秀なお嬢ちゃん達だ!」


「この子らはもう気功法をマスターしたのかよ!」


「いや、完全ではないようだぞ?」


バドがそう言うと、リティアの体の動きが悪くなる、他の面々も悪くなるがそれはバド達もだった。


「くぅ、気功法のコントロールが出来なくなった!」


「アレナムさん、それは向うも一緒よ!」


「ってか、リティア、早くそっちの魔導士を倒して……ウソ!あの人も杖術が上手いんだけど!?」


「これは無理ですわ!」


「撤退!」


キャロリンがそう言うと同時に何かを投げつける、バドが盾で受け止めると爆発して盛大に煙をまき散らすのだった。


「あ、あれは……」


「私があげた、煙玉です!良いタイミングで投げましたよ!

でも、あの方達には効果ないようですが」


ドライトがそう言うと、煙の中からバドが現れる、盾で全身を守る様に出て来たバドにキャロリン達は慌てて攻撃するが、全て弾き返されてしまった。


そして煙の中から次々と現れた深緑の鐘の面々により、キャロリン達は打倒されてしまったのだった。




「や、やっぱり強いです」


「これでも現役のAランクだからな、だけどお嬢ちゃん達はまだ12歳位だろ?

こりゃ、本当に優秀だな、なぁサリア」


「ええ、将来が楽しみだわ!」


「サリアさんのナイフの使い方は凄い参考になりました!」


「それを言うならジスさんの剣術も凄かったわ!

ティナ様にもとどくんじゃないの?」


「いや、嬢ちゃん達もかなりのものだぞ?」


などとキャロリン達と深緑の鐘の面々が互いに健闘を称えあっていると、アンディ王太子とドライト達がやって来た。


「深緑の鐘の面々には褒美が与えられる、望みの物が有ればここで言うが良い」


そうアンディ王太子が言うと、バド達は慌てて膝をつき頭を垂れる。

アンディ王太子が今までの様な友好的な態度ではなく、王族モードで言ってきたからだ。


「そ、それはどの様な望みでもよろしいのですか?」


「うむ、ジェード王国として出来る範囲でだがな、あとはあまり望まれても困るがな?」


そう言われて、バド達は困ってしまった。


Aランクパーティーなので今までも今回の様な事は有ったのだが、流石に大国の王太子から直接そう言われた事は初めてだったのだ、そこでアンディ王太子が助け舟を出して「後日でも良いぞ」っと言うとバドが代表して後日にと答えようとするが、それをドライトがさえぎって言う。


「本当に無いのですか?

例えばジェード王国に就職するとかも良いのですよ?近衛騎士にもなれますが?」


ドライトが目を細めながら、そう言ってくる。

バド達は驚き、お互いに顔を見合わせるが


「チャ、チャンスだ!」


「でも、バド、私達だけならともかくジスはここに家族が居るし、ジェード王国と言ったらかなりの距離が有るのよ?」


「バド、サリア、大国のジェード王国の騎士、しかも近衛騎士になれれば生活も安定するぞ?」


「でも、ジェード王国は強力な魔物が居ると聞いているわ、家庭を持つには……」


「ううむ……どうずれば……」


そこで止めとばかりドライトが言う。


「そう言えばですね、大使館員に空きが有るんですよ!

具体的に言うと守備隊長と留学生の教師などですね、この大使館内に家族用の宿舎も建てるので住み込みになりますが……どうしますか?」


「「「お願いします!」」」


こうして、深緑の鐘の面々はジェード王国に仕える事になった。


ちなみにアンディ王太子やマンフレッド魔導士長にドライトは良い人材をゲットできたとホクホクだったのは言うまでも無かった。




『これで大使館の人事も大分進むな、うはははは!トニーさんドンドン建設しちゃて!』


『はい、ドライト様!』


『それよりもドライトさん、気功法を私達にも教えなさいよ!』


『うむ、あれが有ればわらわ達も猫拳法に対抗できるからの!』


『私に対抗する為に私に聞くのはどうかと思いますよ?』


『勝てばいいのじゃ!』


こうして、ドライト達はのブートキャンプは進んで行くのだった。

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