ビルと猫
ビジュアル系の方は、美形である。この仮説を考える。すでに定理レベルにまで高められている現状。異性者たちは、女性的という名のレッテル貼りにやっきである。化粧をしているのが、外見重視であることはおよそ間違いないが、彼はそういう人たちとは毛並みを異なる珍獣のようだ。ただし。ただしである。ビジュアル系であることは、およそ評論家たちの一致するところである。少し見つけたよ。彼の彼女は、そう言ったが、およそ、彼と彼女の事情は、考えてもきりがない。彼の名前は夜明けの猫、彼女の名前は白滝のビル。この異色の組み合わせによって、猫の住むビルが誕生するかに思われた。猫はビルの玄関口から、ソッと忍び入り、いたるところにマーキングをして帰った。それを知ったビルの管理人((理性的な皮肉屋)は、猫避けの巨大機械を持ってきたが、それらは慈母であり、ビルの最上階に住む軍服の管理者は、猫を愛してしまったのだ。監視カメラに潜む猫の姿にただため息をつき、猫が多くのセキュリティを突破して、最上階に上がってくる希望を持つ。だが、豊かな食べ物さえないビルの中階で、サラバンドが流れてくる。あまりにも見事な出来ばえに、猫は美味しい餌のニオイよりも、そちらに気を奪われた。夜明けの意味することは明らかである。黎明である。始まりであると思われがちだが、夜の猫だった彼にとっては、終わりの言葉だった。そう、彼は自信を失い絶望していた。涙が後から後から音楽が盛り上がりをみせるにしたがって、こぼれ落ちる。それをみた慈母に仕えるネズミ人間たちは、七つ道具を出す。どこにも行けないドア、餅焼くこんにゃく、ロボコプター、愛してクレヨン、バーバラの鞭、アリョーシャの靴下、いい子のイコン。ガラクタをネズミ人間たちは、知恵を絞って、使おうとする。どこにも行けないドアを一匹があける。途端にすいこまれて消えてしまう。餅を焼いていた一匹が、餅を美味しく食べて、寝てしまう。こたつの中を見ると、さっきドアにすいこまれた一匹が寝ている。とうとうリーダーは、声を上げる。あげてから、何もしないことにした。何かをすることは、何かを変えることだから、悲しいことなんだなあー、と慈母を想う。慈母は下に降りていき、猫をつまみ、放り出す。そして、慈母も駆け出す。ビルは崩れ、後には綺麗な野原だけが残った。
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