ハワードとガッセリ

さあ、歩こう。アルコールの道を。このシステムができて、もう300年になる。子供たちも皆酔っている。シラフの人こそが珍しい時代。酒を飲めない人たちは、手術で肝臓を移植する。ビールを飲むハワード・ゲーセは、良い気分で男たちを足元に踏みつけている。「ワッハッハ。あの白人たちはどこにいるね?」友人のガッセリは、トロンとした目で、奇妙なうめき声をあげて、捕縛人たちの尻に乗って答える。「おい!!虚しいな!酒も飲めない白人たちがいるだなんて!さあさあ!始めようぜ!踊りまくれよ!パセリたち」野菜の名前では当然ない。とても小さな人形たちが、所狭しと出てきて、大きな輪を作り始める。その演劇にも似た動作にホールの人間たちは干からびていく。水を求めてやってきたところを一網打尽にする計画なのだろう。ハワードとガッセリは、そういうやつらだ。かなりの純粋培養されたお坊ちゃんってことさ。すでに白人たちは鞭で叩かれるままであり、ハワードとガッセリの肌は黒い。この憎しみにも似た感情で鞭を撃ち続けるのもまた、白人の捕縛人という衝撃が、いかに白い恋人たちが堕ちてしまったのか、はっきりと見せつけている。もはや、白人の女はいない。労働力にならないとして、作ることを禁じられたのだ。もはや、白人は試験管と模擬子宮から作られるしか、生まれる手段がない。書物を棚から出させたハワードは、ページをめくって大声で朗読し始めた。するとガッセリがニタニタといやらしく笑う。鼻の大きなハワードをたたえる歌の歌詞を書き始めた。レーザーペンとアルテマインクを使い、順調に伸ばしていった。プツリと切れる断線が、脳のどこかの回路にあったか?それともハワードの朗読が、ついには金切り声になってしまったからか?ガッセリとハワードの関係は不安定なものに変質していった。まるで卵を国道の真ん中に置いているようなものだ。黒い2人の主人は見つめ合い、ふたたび笑いあう。20分の後、巨大なタワーに到着した2人は体の組成を一度分解し直す。「これで、白人になれるな」「おお。こんなこと思いついたのは俺たちだけだろうな」「あえて、白人になる虚しさよ」「わかるぞ。兄弟」白い肌を手に入れた2人は外に出る。すぐに囲まれる。「どこの捕縛人だ?白い汚れは、放っておけないよ」口々にわめき合う。1人の赤色の肌をした大きい人が、刀を取り出す。「切りたいな。こいつら、白人の持っているおびえがないんだ。なあ、誰か俺にいいといってくれ」ハワードは最初びっくりしていたが、少しずつ状況がのみこめてくると、いよいよ増長して挑発し始めた。これには、周りの有色人たちも、おののくばかりだ。こんな白人など、かつて、いた試しがないのだ。「しかも、こいつら酔ってるぞ。俺たちと同じだ。不思議だな。こいつら酒を飲めないはずだぞ。おかしいな」1人が声をあげて、囲んでいた人間たちは、何かおかしいと気づき出した。有色人種にとって殴るなどの汚れた行為はできないので、白人たちがやるのだ。2人はお付きの白人たちに殴る蹴るの暴行を受けて、道端に放り出された。立ち上がって、傷ついた目をこすりハワード。「白人ってのはなかなか刺激的だな「まさに」ガッセリが応じる。ガッセリの目は充血している。2人はこれからは白人として生きていこうと誓った。しかし?とふと彼らは思った。白人が白人を従わせることはできない。白人がいなくて、どうやって生活するのか2人は知らなかった。家に帰ってみると、白人の奴隷長に引っ立てられ、数々の仕事を言いつけられた。「いい感じだな。これが労働か!」ガッセリとハワードは、快適な白人の生活に馴染みつつあった。

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