小さく執行の鐘《ベル》は鳴る
蒼瑕君が来て、はや一ヶ月が経とうとしていた。
蒼瑕君は凄かった。文武両道で、テストは毎回満点。運動は必ず得点に貢献しており、まさに非の打ち所が無かった。
…………だからだろうか。余計に蒼瑕君の
もう暖かな春の季節は終わりを告げ、
毎日三十五度を余裕で超える暑さであるにも関わらず、だ。蒼瑕君は頑なに上に羽織っている長袖パーカーを脱ごうとはしなかった。まるで自分の身体には醜いモノがあるとでも言うように……。
けれどソレはとても異様だった。だからだろう。何時からか蒼瑕君に対してのイジメが始まった。
或る日蒼瑕君の机の上に大量の落書きがしてあった。蒼瑕君はソレを見て諦めたように軽く溜息を吐いた後、落書きを消し始めた。まるでそうなる事を初めから知っていたかのような落ち着きぶりだった。
それ以来イジメはエスカレートしていき、今では先生に見付からない所での暴力が主流で、身体的暴力だけでは飽き足らず、性的暴力さえも時々行われていた。
蒼瑕君は少しずつ
「そ、蒼瑕……君?」
「…………ン…? 嗚呼
「い、いや……だ、大丈夫かなぁって?(汗)」
「…………大丈夫だよ? 秘藏さんが気にする事、無いからさ……」
「そ、そう……?」
鈴奈が恐る恐る蒼瑕君に声を掛けると、窶れながらも凛としたハスキーヴォイスの返事が返ってきた。
先生が心配して声を掛けても、この通り本人は困った様に笑って「何も無い」と話すので、先生も助けるに助けられない状況だった。
キーンコーンカーンコーン
「…………あぁ放課後になった……じゃあ僕帰るね、また」
「う、うんまた明日……」
ニコッと軽く
「………………蒼瑕君、大丈夫かなぁ……? ……ア、そうだ(
プルルルルルルルッ
鈴奈は帰り道に
「…………出てくれるかなぁ〜……?」
「……………………もしもし、何?」
「ア、スミちゃん! ちょっとお願いが……」
「……………………待って、今、何処? 続きは、りぃの部屋で、聴く」
「ア、ありがと! 部屋で待ってる!」
「……………………じゃあ、また、後で」
澄麗はそう言うとブチッと通話を打ち切った。
「スミちゃん相変わらず要件だけ過ぎるよォ〜……」
鈴奈は携帯を閉じるとすぐ近くにある自宅に入り、着替えを済ませて澄麗が来るのを待った。
一方その頃、澄麗は……。
「…………はァ……相談って、珍しい」
「……ア、澄麗っち帰るんスか? 仕事お疲れッス」
「…………埜口も、お疲れ」
「イエイエッスよ〜✨ 澄麗っちの役に立てて光栄ッス!」
「…………埜口、この後、暇なら、来て。りぃの、相談に、ついて、意見聴きたい」
「この後ッスか〜……予定は〜無いッスね、行けるッスよ〜✨」
澄麗はソレを当然とでも言うように、扉から外に出て歩き出す。
裕翔はそれにあたかも姫を護る騎士のように付き従う。
この時二人は予想していなかった。まさか鈴奈からの相談が『校内イジメ』だという事を……。
「……痛い、痛い……ッ! ごめんなさいごめんなさい……ッ…………!」
「アラ何を謝るのかしら? 馬鹿な子にはお仕置きが必要ですものね?(黒笑)」
「ごめんなさいごめんなさ……」
蒼瑕は帰宅した後、帰っていた母親から虐待を受けていた。
辺りは蒼瑕の流した醜く
「あ〜あ〜……蒼瑕、見てご覧なさい? アンタが流した穢い血で床が汚れてるじゃない。後で綺麗にしておくのよ?」
「……は、い…ごめんなさい…………」
「そうそう、良い子ね…今日はこの辺で赦してあげるわ……」
「ありがと、う…ございます…………」
母は満足したらしく、台所の奥に消えた。晩御飯の準備をする為だろう。
蒼瑕は包帯で血がこれ以上垂れないようにすると、母親が言ったように床に流れた自身の血を綺麗に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます