第4話「上砂川駅」
里見さんと共に上砂川駅へと降り立った。ホームからは久北鉱業が保有するホッパーが見え、ベルトコンベアーの『希望だ力だ躍進だ』というスローガンが目に入る。
駅長の亀山に挨拶しに行く。
「里見に白矢となしてこんな時間に来たのさ?」
亀山駅長は砂川鉄道に入社して約30年、駅員としてずっと頑張ってきて25年目の春に上砂川駅の駅長に抜擢された叩き上げの駅長だ。お客様には誰よりも丁寧で、社内の職員にも気軽に話しかけてくる。いわゆるコミュ力というのだろうか、それがすごく高いのだ。
「ああ、ちょっと用事があってな。久北鉱業に連絡入れられるか?」
「なんもさ、しかしどうしたんだい?また"あれ"かい?」
「そんなところだ」
里見さんは声が低いだけでなく口数も少ないものだから余計に怖い。はじめの頃は怒ってるのかと思ったものだ。
「連絡がついたよ。安全に気をつけて入って来いって、したっけ、これを着けていきなさい」
そう言って亀山は砂川鉄道の社紋が入ったヘルメットを2つ渡してきた。
「ありがたい、気をつけて行ってくるよ」
里見さんと俺は上砂川駅のヤードを横切り久北鉱業の坑木を貯蔵している地区を歩いていた。事務所のような物が見える。あそこに向かっているのか?
事務所の隣、外の道路から見えない位置に"それ"はあった。いや、居た。こんな所にまで線路が伸びてるとは思わなかったが確かにそこに居たのだ。
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