第2話「蒼鉄から来た車両」

午前9時、砂川車輌の始業のベルが鳴る。課長の田辺の前に白矢を含め職員が集う。


「おはようございます、今日はねー、えーと、あ、そうそう、社長が北海道蒼軌鉄道様から譲り受けた車両をね、うちの会社で走らせたいそうだから、整備の方よろしく頼むって」


田辺課長は技術の面ではとても尊敬できるのだが、話し方が聞きづらいというか滑舌が悪いというか、何故そこで区切るみたいな喋り方をするもんだから、聞きづらくて仕方がない。


「北海道蒼軌鉄道というと豊北の蒼鉄ですか?」


押しの聞いた声で僕より20歳くらい上のベテラン、里見さんが聞いた。


「そういう、ことですね、はい。蒼鉄ではキハ22 702として走っていてね、かつてうちの会社で走っていた車両、なんですよ」


課長が答える。


「したら白矢と俺で整備すればいいんですね」


え、何故?

里見さんが僕の名前を出す。


「んーそうだね、2人にやってもらおうかね」


「え、僕もですか?」


里見さんがどさくさに紛れて俺の名前を出したことにより、キハ22の整備は僕と里見さんに委ねられることになった。朝礼は終わり、職員は各担当場所に散っていった。


「ほら白矢、ぼさっと突っ立ってないでついて来い」


僕は里見さんに従い、工場の一番手前の区画へと連れて行かれる。そこには先ほどのキハ22 702が居た。


「わかるか?白矢」


「何がですか」


「わからねえのかよ、ちょっと着いてこい」


里見さんはそれだけ言うと課長のいる本社へと歩いていく。僕はその背中を追いながら里見さんの行ったことを反復するのだった・・・・

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