砂川鉄道物語

久北嘉一朗

第1話「はじまり」

 ガラガラガラガラ……

 始発前の砂川駅、上砂川線の始発列車のアイドリング音が併設の職員宿舎にも響く。

 雪解け近い4月の北海道はまだ寒い。目覚めたばかりの白矢は1人でコーヒーを淹れていた。

 砂川鉄道の整備部門を担当する車輌整備課、通称『砂川車輌』に勤務する白矢は週1回まわってくる当直勤務だった。といっても整備職に朝の仕事は殆ど無い。仕業前の点検は担当の運転士が各自で行うし、工場は通常は9時まで開けない。

 しかし、今日は違った。コーヒーを飲み干して作業着にコートという冬服を着こんで外へ向かう。3番線の歌志内線ホームに赤い機関車が滑り込んで来た。赤基調に白帯を入れた国鉄のDD51形だ。後ろには白色の気動車が繋がっていた。黄緑帯と紫帯を配した砂川鉄道と同じ塗装をした車両だ。

 機関車から40代後半の男が降りてきた。社長の久北だ。

「おはよう白矢君、お勤めご苦労様」

「おはようございます。仕業日程には砂川車輌送り込みと記載されていますが、この車両をどうするんです?」

「細かいことは後で田辺課長から聞いてくれ、とりあえずこれを整備して走らせられるようにするように」

「わかりました。お任せください」

 社長はこうやってすぐに適当な事を言い出して動き出すが、その反面、確かな交渉力を備えているらしい。

 俺は指示に従い、入換動車を操り砂川車輌へと車両を押し込んだ。

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