ありがとう

第1話

彼女が死んだ。

原因はストーカーによる殺害だったそうだ。

葬儀は、不慮の事故による死ということもあり、慌ただしく済まされた。

もちろん俺も参加したが、坊さんがよく分かんないお経を読んだり、家族の方が今までの思い出や別れの言葉を話していた。

しかし、残念ながら俺は仏教を信仰しているわけでもないし、別れの言葉は頭の中に入ってこず、右から左へと流れていってしまった。

彼女が死んだ。

その事は、あまりにも受け入れがたい出来事だった。


告別式も終わり、帰るため電車へ乗っている途中、なんとなくスマホのカメラロールを開いてみた。

彼女の姿を見て、彼女はもういないという事実から目を逸らすためだったのかもしれない。

カメラロールを遡っていくと、彼女と出かけた時の思い出が蘇ってきた。

遊園地や水族館……。

今思うと、たくさんの思い出を作ってきたんだな、彼女と。

そう思いながらカメラロールを遡っていると、俺が降りる駅のアナウンスがなった。

携帯の電源を消し、俺は電車を降りた。

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