其の四 滲んだ月 ― 平家物語に主題を借りて ― 壱

 ――1185年3月、壇ノ浦で栄華を誇った平家一門が滅亡した。


 だが、平家なのに生き残った男がいる。平頼盛(たいらのよりもり、清盛の異母弟である。彼は平家一門にありながら、都落ちにも同行せず、親族の者たちが合戦でことごとく首を取られても傍観していた。

 頼盛の母池禅尼いけのぜんには、清盛の継母で源頼朝みなもとのよりともが関ヶ原で捕えられたとき、清盛に命乞いをして助けた人物である。

 平家滅亡後も、頼朝は池禅尼の恩に報いるために頼盛とその家族は所領も没収せず、官位もそのままに手厚く保護していた。元々、頼盛と清盛は不仲だったといわれている。


 しかし、一族見捨てて、自分だけは生き残り、源氏の庇護を受けた平頼盛という男に、歴史が付けた呼び名はである。




   ※ 滲んだ月は、『 平家物語 』を主題にして書きました。

     歴史上の人物の説明などは別頁にて参照があります。

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