第41話 好機到来





 コートに黒いパーカー。

 全身黒で見慣れてるオフの格好だったけど、ボサボサ頭じゃなくて、ちゃんと整えられていて、ハルカだと誰が見てもわかる姿だった。



「みちるさん、何してるんですか、こんなところで」


「は、ハルカ……?何でここに?」



 ハルカの登場に、周囲は余計にざわめいて、パニック状態。


 

 スマホで録画する人。

 ハルカの大ファンなのか、興奮して叫んでる女の子。

 騒ぎを聞きつけて更に増える観衆……



 

「聞いたのはオレなんですけどね……行きましょうか」



「行きましょうって、この状況でどうやって?」



「うーん、そうですね————」


 ハルカはぐるっと周りを見回すと、アイドルスマイルを振りまいて、人差し指を口元に当てて、静かにするよう促す。




 ざわめきが止んだ。




「道を開けてください。これからデートなので」



 取り囲んでいたファン達が、さっと道を開けてくれた。


 

「ありがとうございます。さぁ、行きましょう」


「う、うん」


 ハルカは私の手を引き、みんな見てる中、堂々と歩いていく。


 

「ああ、そうだ。みなさん、メリークリスマス!」




 そう言って、手を振ると、歓声が上があがった。





「メリークリスマス!!」


「メリークリスマス!!」


「お幸せに!」




 近くに停めてあった社用車に向かうまでの間、ファンの人達から手を振りながら声援を受けてる。



 何故か


「頑張れよ!」


 と、言う人もいた。


 何を頑張るのかよくわからなかったけど、なんだかすごく恥ずかしくて、顔を真っ赤にしながら、ハルカにエスコートされながら、後部座席に乗った。




「全く、ダメじゃない、みちるちゃん。アイドルはやめても、立派な女優さんなんだから、こんな街中一人で出歩いちゃダメよ」



「すみません……まさか私、こんなに気づかれると思わなくて……」


 ユキ姐さんは、もっと自覚してもらわないと困ると怒っていて、運転が荒くなっている。



「それで、ハルカ……なんで、ここに?生放送は?」


「嘘です」



「えっ?」



「アレは生放送じゃないんですよ。全部収録で、生放送中にみちるさんに会いに行って、驚かせようと思ってたんですけど……」



 ハルカは何か少し考えてから、私の手を握って笑った。




「おめでとうございます。」





「へ?何が?」



 突然の激励で、意味がわからない。





「みちるさん、ハリウッド映画に出演決定です。」




「えっ!?私が!?」






 それは確かに、サプライズだった————






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