第34話 広がる噂


 マミコさんに私たちの関係がバレてから、数日後、週刊誌に書かれたのは、ハルカが同性愛者であるという記事だった。


 応援してくれると言っていたマミコさんから情報が漏れたとは考え難いけど、二人で宿舎で暮らしていることや、仕事終わりのプライベートでのちょっとしたやりとりを切り取った写真が出回り、噂は一気に拡散されていく。




 以前のアキラとの記事のように、プロモーションの一環として利用することができればよかったのだけど、今回はそれも難しい。



 何より、一番の問題は————



「みちる、この記事はどこまでが事実なんだ?」





 日比野社長に私とハルカの関係がバレてしまった事だった。




「もう改心したものだと思っていたのに、違うのか? 君はまだ、ハルカを陥れようとしているのか?」



 社長室に呼ばれて、ハルカとの関係を問い詰められ、私は申し訳なさすぎて何も言えなかった。




「一発屋で終わろうとしていたところを、今やっと人気を取り戻して返り咲いているというのに、どういうつもりなんだ?」



 確かに、すべての始まりは、私がハルカの人気に嫉妬して、弱みを握ろうとして犯した不法侵入だった。



 そして、そのせいで逆に脅されて、この事務所へ移籍した後、ハルカと過ごして、私はハルカが大好きになった。


 ハルカの才能も努力も、抱えている悩みも、全部知ってる。



 ハルカから歌う場所を奪うことは絶対にしたくないと、本当に思っている。



「君はハルカの秘密を知ってる。絶対に君からその秘密をバラすようなことがないよう、これまで監視の意味もあって一緒に宿舎に住まわせていたのに、まさかこんな形で、裏切られるとは思っていなかったよ」



 日比野社長の描くハルカのコンセプトは、国民的美少女アイドルだ。


 恋愛なんてご法度だし、さらには同性愛者という事になってしまえば、偏見を持つ人たちからの誹謗中傷が増えるだろう。





「このままだと、ハルカの今後の活動に支障がでる。ハルカが男であることも、バレてしまうかもしれない」





 大好きな人から、大好きなものを奪うことはしたくなかった。





「君がすべきことが何か、わかるだろう?」




 私は、その日のうちに誰にも何も言わずに、荷物をまとめて、宿舎を出た————


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る