第28話 充実


 充実していると言っていいと思う。


 4月下旬頃に公開されたハルカの新曲はあらゆるランキングで1位を獲得して、ほとんど同時期に発売された私の新曲もトップ10内に入っていた。


 音楽番組の出演もたくさんして、バラエティ番組にも呼ばれるようになった。


 ハルカも私もお互い忙しいけど、プライベートも充実している。


 ハルカと私の関係は、もちろん誰にも知られていない秘密だから、道々とデートは出来ないけど、ハルカの顔を見ることができて、毎日が幸せだった。




 そして、夏が近づき始めた頃、私に初めてのレギュラー番組が決まった。



 深夜枠のバラエティ番組で、MCはここ数年テレビで見ない日はないくらい有名な美人女装家兼歌手であるマミコさんとお笑い芸人の有村さん。


 そこに何故か、アシスタントとして私がレギュラーとして、選ばれていた。



(これ多分、私じゃなくて、ハルカに来た仕事だよな……)


 と、思いつつも、このチャンスをモノにしようと、私は2人の出ている他の番組を見て、色々勉強してみようと、ここ数日、宿舎でもバラエティばかり見ていた。




「あ、この人……確か、マミコさん?だっけ?」


 宿舎に帰ってきたハルカも一緒になって、テレビを観ていると、ハルカはマミコさんの姿を不思議そうにと見つめている。



「マミコさんがどうかしたの?」


「いや、このマミコさんと一度だけ局の廊下ですれ違ったんだけど、初めて会った気がしなくて……」



「いつもテレビで観てるからじゃないの?」



「そうかな? この仕事始めてからあまりテレビ見てる余裕ないし、実家にいた時も、母さんがこの人苦手みたいでよくチャンネル変えられてたから、そこまで観てないと思うんだけど……」




 私はマミコさんの情報をスマホで、調べながらテレビを見ていた。




 そして、ある一枚の画像を見つけた。


“女装家マミコ(42)の素顔”


 という記事の中の一枚。


 スッピンでも十分綺麗な顔をしている。




(あれ?)




「ハルカ、これ見て。目が似てない?」



 私のスマホの画面を覗き込むハルカ。



「似てる?誰に?」



「メイク前のハルカに」



「え、オレ?」



 なんとなく、そんな気がした。


 画像で見ただけだから、たまたまだろうと、その時はそれでこの話は終わった。







 だけど、後日、実際に初めて顔合わせした日、たまたまメイク前のマミコさんを見てしまって……

 実物を見ても、やっぱり似ている気がした。



(きっと、目が似てるから、どこかで会ったような気がしたんだろうな————)




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