第23話 2人の秘密


 ハルカがふざけてわざとNGを出したおかげで、テイク3までかかって、撮影が終了。



「以上で、本日の撮影終了となります、お疲れ様でしたー!」



 撮影スタッフの撤収がはじまって、やっと緊張から解き放たれた。




「お疲れ様、みちるさん」


 ハルカはニコニコ笑っていたけど、私は怒っていた。



「もう、わざとNGとかやめてよ…っ!バレたらどうするの……!?」




 周りに聞こえないように出来るだけ小声で会話していたけど、この秘密の関係がバレたら、大変な事になる。


 私は絶対にヘマしないようにって、注意してるのに————



「大丈夫だよ。そんなに気にしなくても、誰も気付いてないよ……それより、この後なんだけど」




 ハルカはすぐに別の仕事に行かなければならないらしく、ユキ姐さんと一緒に出てしまうらしい。



 朝現場入りした時は、ハルカの移動車に乗せてもらって一緒に来たから、帰りは1人で電車で帰る事になった。






「気をつけて帰って下さいね!」






 ハルカと、迎えにきたユキ姐さんに手を振って、私も撮影場から出ようとした時、後ろから肩を叩かれた。



「一人で帰るなら、送ってやろうか?」


「えっ!?」


「聞きたいことがあるから、ついでだ————」




 もう帰ったと思っていた、アキラだった。






 * * *





「聞きたいことって?」



 あの場で断ることも出来ず、半ば無理やり車に乗せられた。


 マネージャーさんが運転するのかと思ったら、まさかの本人が運転して、私は後部座席。



 本人曰く、俺の助手席は彼女しか座らせないんだとか……正直、どこに座ろうがどうでも良かった。




 アキラはミラー越しに私の方をチラッと見ると、走らせていた車を路肩に一時停止させる。



「ハルちゃんが……事情は知らないけど、女の子のフリしてアイドルやってるって事は、昨日理解した。性別は勘違いしてたけど、一応、俺の初恋の相手だから、まぁ、ショックだけど、事実を受け入れる事にしたんだ。だけど……そうなると、君に聞かなきゃならない事がある————」





 なんだか、とても、嫌な予感がしてきた。







「————君とハルちゃんは、どういう関係だ?」





 1番答えにくい質問だ。



「どういう関係も、なにも……同じ事務所で……」



(どうしよう……何て言えばいい?絶対にバレちゃいけないのに……)



 上手い言葉が思いつかない。


 私たちの関係は、絶対に秘密。

 2人だけの秘密だから————



「友達よ。私もハルカも、芸能界に友達いないから」





 嘘をつくしかなかった。





(————昨日から、正式に付き合ってるなんて、口が裂けても言えないわ)


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