第24話 スキャンダル



「みちる!!大変だぞ!」



 アキラに事務所(宿舎)近くまで送ってもらって、社内に入ろうとしたところで、矢作さんから声をかけられた。



 咄嗟についた"友達"という嘘は、アキラに通用してか不安になっていたから、突然名前を呼ばれて、びっくりし過ぎてスマホを床に落としてしまう。



「ああ、もう!画面にヒビ入っちゃってる!いきなり何ですか?」




 矢作さんはかなり焦っているようで、ぐいぐいと私の腕を引っ張りながら、社長室へ連れて行かれた。




「ちょっと!放してください!何なんですか!?一体何が————」



「お前、いつからなんだ……?一体いつから、付き合ってたんだ?」


「えっ!?付き合って……た?」


(まさかもう、ハルカとの事がバレた……!?)



「ちゃんと言わなきゃダメだろう! 相手が高良 輝なら!!!」



「…………え?」



(あ、アキラ!?)



 意味がわからない……

 私、アキラと付き合ってたの?



 ————いやいや、そんなわけないでしょ!?






 * * *





 何が起きたのか全然わからないまま、またあの社長室に連れて行かれた。


 正直、無理矢理の移籍契約されたあの日以来、ここに来るのが怖かった。



 日比野社長は、あの日と同じで、笑顔だったけど、目が笑っていなかった。




「やぁ、みちる。契約の日以来だね」


「そう……ですね」


「で、君はここに来てもう3ヶ月は経つわけだけど、いったいいつから、高良くんとそういう関係になったのかな?」




 そういう関係も何も、付き合ってないんだけど……



「あの、私、高良さんとお付き合いしてないんですけど……一体、どうなってるんでしょうか?」



「付き合ってない? なら、これは誤報なのかな?」



 社長はテーブルの上にタブレットPCを置いて、私の方を向けた。



 そこには、SNSで拡散されている私とアキラの写真や、付き合ってるというデマに、私への殺人予告まで……




 たった数十分前、アキラの車に乗り込む私の姿が、それはもう絶妙な角度から撮られていて、確かに、この画像だけを見たら、付き合ってると勘違いされるかもしれないけれども………




「いきなり君の名前がトレンドに載ったから、調べてみたらこれが出てきたんだけど————付き合ってないのか?」



「付き合ってないです!!完全に誤報です!!」





 トレンドに載ったのは、2年ぶりくらいだけど、まさかこんなあり得ないスキャンダルで、なんて、思ってもいなかった。




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