第19話 百合か薔薇か


 たまたま空いていた楽屋にオレ達は連れて行かれ、ユキ姐はキョロキョロと辺りを見回し、矢作さんは外で見張りをさせられてる。



 大きなテーブルを挟んで、オレの隣にはみちるさん、向側にアキラくん……ユキ姐さんは、立ったままアキラくんの隣に腕組みしていて、明らかに怒っていた。



「どういう事か、説明してくれるかしら? ウチのハルカとはどういう関係で、何がどうなって、あんな事をしようとしたのかを…」


「どういう関係も何も、ハルカは俺の初恋の相手で、将来を近いあった仲で……」


「ちょっと、待ってください! オレが説明します」


 アキラくんはやはり勘違いしているようだったから、オレは話を遮った。


「確かに、アキラくんは、子供の頃一緒に遊んでました。近所に住んでたんで。それは覚えてます。でも、初恋とか、将来を約束したとか、まったく意味がわからないです」



「何言ってるんだ、ハルちゃん!約束したじゃないか、オレが親の事情であの街を離れるときに!大人になったら会いに来てくれるって!!俺と結婚してくれるって!テレビでハルちゃんをみて、俺に会うためにアイドルになったんだと確信したんだよ?」



「あんたが何言ってるんだ!!そんな約束するわけないだろう!!オレは男に興味ねーんだよ!!」



 あまりに話が噛み合わなすぎて、ついタメ口になってしまった。



(こいつマジ、ふざけんなよ!!)



「は!?男に興味がない!?え、じゃぁ、女の子が……!?そ、そうなのか!?百合なのか!?」



「は?百合ってなに?」



 ますます会話が噛み合わない。

 何言ってるんだかさっぱりわからない。



 ————ダンっ



 黙って話を聞いていたみちるさんが、テーブルに両手をついて立ち上がった。



「あんた、まだ分からないの?バカなの?」



「バカとはなんだ!失礼だな!さっきから!君には関係ないだろう!?」



「あんたの方が、薔薇なのよ!!!」



「バラ…? えええええ!?」



 アキラくんはみちるさんの発言に驚きすぎて、椅子から転げ落ちた。




(え、ねぇ、薔薇とか百合とか、なんの話?)





「そんな……俺はずっと、ハルちゃんが女の子だと………え、でも、どう見ても女の子じゃ……嘘だ」



 よくわからないけど、オレが男だって事は理解したらしい。



「その辺の事情は後で話すけど、その前に、一つオレからも聞きたいことがある……」



「な、何?」



「そのホクロで間違いなく本人だったのはわかるよ。でも、いくら大人になったといえ、変わりすぎじゃないか?」



「えっ!?」



「オレの知ってるアキラくんは、一重だったよ。」




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