第16話 最後の日
* * *
————2日後、最後の日、オレンジ色の夕陽が沈み始めた頃。
「ちょっ……何するんですか!?みちるさん!辞めてください!!!」
「うるさい!いいから黙ってやられなさい!!」
「待って!待って!ストップ!!そんなに滅茶苦茶にしたら、抜けるでしょうが!!」
私は両手で、ソファーに座ってたハルカの頭をわしゃわしゃにそれはもう、怒り任せに、わしゃわしゃのぐっちゃぐちゃにして、とんでもないボサボサ頭にしてやった。
「こんなに苦労して帰ってきたのに、なんで私が怒られなきゃならないのよ!!ふざけんなっ!!」
「もう、わかったから!オレが悪かったですって!!」
両手首を掴まれて、振り解こうとしても全然振り解けない。
(やっぱりこういうところは男なのね、力では敵わない……)
「どうしたんですか、なんで逆ギレしてるんです?」
一昨日あんなことを言った手前、まさか自分が約束した時間にまったく間に合わないなんて考えもしなかった。
私はただ、ハルカが真泉 遙としていられる最後の日ぐらいは、思いっきり男として扱いたかっただけなのに————
「もう全然時間がなくなちゃったじゃない!!せっかく、最後に私が1日、あんたの彼女になってやろうと思ってたのに!!!あんたの秘密知ってから、全然うまくいかないわ!!いいことまったくない!!!」
思い通りにいかない、3ヶ月間のストレスが一気に爆発して、私は泣き出してしまった。
「あー……もう、落ち着いてください。わかりましたから」
ハルカは立ち上がって、涙でぐちゃぐちゃになった私を抱きしめて、あやすように私の頭を撫でる。
「何するのよ、これ、セククハラじゃない?ユキ姐に連絡するよ?」
「あれ?さっき1日オレの彼女になってくれるって言いませんでした?」
「言った……でもこれは————」
(————なんで私が慰めれれてるんだろう、逆じゃん……)
「オレはね、男として扱われるより、寧ろ……あなたを女の子扱いしたいんですよ。どちらかというと」
「何それ、意味わかんない。私のこと、男だと思ってたの?」
「まさか、こんな可愛い男なんているわけないでしょ」
「え、嫌味?自分の方が美少女アイドルのくせに……」
「……もういい。ちょっと黙って」
窓からさしていた夕陽とともに、私たちはソファーの上に沈んでいった————
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