第10話 自分との戦い
親父が残したらしい借金3千万と、母親の入院費、さらには諦めていた高校へも社長のコネで推薦入学が決まって通うことになったから学費も負担してくれて、オレはアイドルになるしかなくなってしまった。
母さんは反対はしなかったが、どこか複雑そうに
「芸能人になる事は反対しないわ。遙に素質がある事はわかっていたもの。でも、どうしても、美少女アイドルじゃなきゃダメなの?男の子のアイドルだって普通にいるでしょ?遙は、女装したいの?女の子になりたいの?」
と、とにかく女の子として活動することが嫌だったようだ。
「女の子になりたいなんて思ったことないよ。それだけは信じて欲しい」
母さんはテレビでそういう女装家とかオネエと呼ばれるような人が出てるとよくチャンネルを替える人だった。
いつか理由を聞いたら、LGBTの人たちを蔑んでいるわけではなく、どうしても昔のことを思い出して苦しくなるらしい。
一種のトラウマというやつだろう。
申し訳ない気持ちもありながら、高校2年までは毎日歌とダンスのレッスンと、女の子としての立ち振る舞いをみっちり叩きこまえれる毎日だった。
元々、歌手にはなりたかったから、歌うことは苦ではないし、運動神経もそんなに悪くはない。
ただ、学校では学ランとスニーカー、放課後はスカートとハイヒールの日々。
切り替えと、学校の奴らにバレないように生活するのが大変だった。
そして、今年の初め頃にデビューをして、現在に至る。
事務所の力と、2年間の努力、それと社長があの時オレをスカウトした目に狂いはなかったようで、オレはハルカとして、一気に国民的アイドルとしての階段を駆け上った。
CDも音源も軒並み大ヒット。来年のドラマの主題歌も決定しているし、cmの契約もあり、あっという間に借金はすべて完済。
もう目的は果たされているけど、応援してくれてるファンはたくさんいて、その人達を騙していることになる葛藤と戦いながら、複雑な心境のまま、日々を過ごしていた。
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