第2話 危機的状況


(これは、一体どういうことなの?)



 下調べもしていたし、知り合いのADに頼んで、生放送のタイムテーブルも、出演者が楽屋に戻ってくる時間も全て完璧に考えて、忍び込んだのに...



「ハルカちゃん!今日も完璧だったよー!」

「そんなぁ、まだまだですよ。私なんて...」



(なんでこんなに早く楽屋に戻ってくるの!?)


「またまた!謙遜しないでよー!!」


 番組プロデューサーと会話しながら、予想よりはるかに早くあの女は、数名のスタッフと楽屋に戻ってきてしまった。


 私は慌てて、近くにあったロッカーの中に隠れたけど、状況的にかなりまずい。


 生放送中の誰もいないハルカの楽屋に勝手に入って、何か週刊誌にでも売れるネタはないか粗探ししようとしていた報いなのか...


(す、スカートが挟まってる!!)



 ロッカーの扉から数センチだけど、スカートの裾が出てしまってる。

 しかも、なんだか腰のあたりも、ロッカーの中にある何かが引っかかっているような感覚がある。


(このままロッカーを開けられたら、絶対すぐ捕まるし、スカートが破れそうな気がする)


 試しに、息を殺したまま、少し動いてみると、ビリっと音がした。


(ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!)



 隙間からハルカとプロデューサーの様子を覗き見て、早く両方出て行って欲しい、と強く願った。



「じゃぁ、ハルカちゃん、来週もよろしくね!」

「はい!こちらこそ、よろしくお願いします!頑張ります!」


 電話が入り、楽屋から出ていったプロデューサー達をハルカは笑顔で見送る。

 途中、ハルカのマネージャーも入ってきたけど、社長に呼ばれたとかでいなくなったから、これで実質楽屋にはハルカしかいない状況になった。



(早く帰って!トイレでもいいから、行って!)



「よし、着替えて帰るか...」


 私の思いとは裏腹に、ハルカがこちら側に近づいてくる。

 しかも、着替えを出す前に、衣装をもう脱ぎはじめながら。


(え、嘘でしょ!?)



 私の入っているロッカーに向かって歩きながら、白いブラウスを脱ぎ捨て、キャミソールを脱ぎ捨て、思いっきりパットの詰められたブラジャーを外したところで、ロッカーの扉を開けられた。





 ——ガチャッ






「........。」

「........。」





 一瞬の沈黙。






 そして、私たちはほぼ同時に叫んだ。






「「うわあああああああああああ!!!」」












 ハルカの胸は、真っ平らでした。








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