HARUKA〜美少女アイドルの性別が女とは限らない〜

星来 香文子

第1話 あの女

 街はもうすぐやってくるクリスマスイヴに向けて、いつも以上にざわめき立っていた。


 夜になれば、イルミネーションが私には眩しくて、眩しくて、腹が立つくらいだ。

 何度か、バカみたいにイチャつきながら歩いてる男女とすれ違い、殴りたい衝動をなんとか堪えながら、大きな交差点の前で立ち止まった。


 ふと、見上げたビルの大型画面では、生放送の音楽番組が流れていて、今年一年を彩ったアーティスト達が今夜の出演者として次々と紹介されている。


 そして、その中に、私はいなかった。



 今年も出るはずだったのに...

 私の居場所を、 ”あの女” は簡単に奪っていった。


『さて、最初の曲は、今年の4月にデビュー。先月発売されたファーストアルバムが4週連続ランキング1位と、大変人気のこの方!』


 一瞬ステージが映り、すぐに司会の女子アナへカメラが切り替わりる。


『ハルカさんで、デビュー曲 《HARUKA》 。そして、自身が出演されていますドラマの主題歌 《グローリーデイズ》 のスペシャルメドレーです!どうぞ!』


 壮大なイントロと共に、画面いっぱいに、あの女の笑顔が映った。



「ハルカでてるじゃん!かわいい!!」

「髪短くなってる!ボブもかわいい!!」


「ハルカちゃんはかわいいなぁ!最近こんなに透明感のあるアイドルらしいはいないよなー」

「歌も上手だしな!俺の息子もファンなんだよー」


 私の隣に立っていた女子高生は憧れの眼差しを向け、その近くにいるおじさん達は昔のアイドルを彷彿とさせると、あの女を褒めちぎっているのが、余計に腹が立つ。


 また殴りたい衝動をなんとか堪えて、ようやく青に変わった信号を睨みつけ、ブーツのヒールの音を響かせながら目的地へ向かった。



 目指すのは、今この生放送が行われているテレビ局。



 私の居場所を奪ったあの女をどうにか陥れて、潰してやる!!





 そう、思ってた。



 あの秘密を知るまでは...


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